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チタン素材の特徴早わかり~エバンスで選んだチタン腕時計5本」2022年3月13日

2023-03-13 11:30

今回のエバンスブログは、銀座エバンス店頭の時計など「チタン素材の腕時計」を5本ほどご紹介。また、前半では「チタンの特徴 早わかり」と題してその特徴をひとまとめしています。チタン素材が腕時計に使われ始めるのは1970年代のこと、比較的最近だったりするのです。

 

ロレックスにチタンモデルが!

ロレックス新作「ディープシー チャレンジ Ref.126067」ディープシー チャレンジに使用されているRLXチタン

(ロレックス2022年新作「ディープシー チャレンジ」Ref.126067 出典:ロレックス公式WEBサイト   ロレックスのチタンは「RLXチタン」と名付けられられている 出典:ロレックス公式WEBサイト

2022年11月に突如発表されたROLEX(ロレックス)の新作「ディープシー チャレンジ (Ref.126067)」。大型50mmケースで11,000m防水という驚異的なスペックに加え、「ロレックス初のチタンモデル※」としても話題となりました。(※今までも、ディープシーの裏蓋パーツにチタンは使用されていたが、ケース&ブレスレットの全体に使われるのはブランド初となる)

チタンは、眼鏡のフレーム、飛行機の機体パーツ、手術の器具など、私たちの暮らしとも関わりの深い素材ですが、どんな特徴のある金属なのでしょうか?

 

チタンの特徴 早わかり

チタンとチタニウム、2種類の呼び名を聞くと思います。特に違いはないらしく、ドイツ語はTitan、英語はTitanuim、日本ではチタンと呼ばれることが多いということのようです。その特徴としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 軽い(ステンレスの約6割)
  • 強い
  • 錆びにくい(海水にも強い)
  • アレルギーが起きにくい
  • 色はグレーっぽい

チタンは、軽く、強い金属なのですが、硬くはないのでキズはつきます。また、粘りがあるため加工や磨きが難しく、専用設備が必要で、価格も割高になりがちという側面もあります。

 
 世界初のチタン製腕時計 CITIZEN(シチズン) X-8 クロノメーター (1970年)世界初となるチタンを使用したダイバーズウォッチSEIKO(セイコー) プロフェッショナルダイバー600m(1975年)

(■世界初のチタン製腕時計 「CITIZEN(シチズン) X-8 クロノメーター(1970年)」 出典:シチズン公式WEBサイト   ■チタンを使用した世界初のダイバーズウォッチ 「SEIKO(セイコー) プロフェッショナルダイバー600m(1975年)」 出典:セイコー公式WEBサイト

腕時計にチタンが使用されるのは、1970年代初頭から。純度が高く”純チタン”に属す「グレード2」と、アルミニウムやバナジウムなどと組み合わせた”チタン合金”である「グレード5」の2種類が主に使われます。

「グレード5」チタン合金の場合、「グレード2」の純チタンと比べ、グレーの色あいが薄めで、つやあり(鏡面)の仕上げが可能となります。ちなみに、「18K」(純度75%の金)、「PT750」(純度75%のプラチナ)のような、ケースへの刻印はなかったりします。

チタンは、軽い、強い、サビにくいといった優れた素材なのですが、素材自体がグレイッシュで、つややかな面が作りにくいなど、高級感のある光沢を「見て愉しむ」には、不利な金属なのかもしれません。

また、チタン素材は、表面加工が施されている場合など、モデルによってはメーカーでも磨けない場合があるそう。購入前に確認しておくとよさそうです。参考 過去ブログ:「時計素材の基本(チタン・チタニウム編)」

 

今回の腕時計5本

レトロモダンな本格ダイバー ~TUDOR(チューダー)

TUDOR(チューダー) ぺラゴス(Ref.25600TB)TUDOR(チューダー) ぺラゴス(Ref.25600TB)

(TUDOR(チューダー) 「ぺラゴス」Ref.25600TB。42mmケースで、ヘリウムエスケープバルブを備えた500m防水ダイバーズウォッチ。黒文字盤(Ref.25600TN)や左リューズ仕様(Ref.25610TNL)なども存在)

こちらはロレックスの弟ブランド「TUDOR(チューダー)」の「ぺラゴス(Ref.25600TB)」。42mmケースにヘリウムエスケープバルブを備えた500m防水のハイスペックな本格派ダイバーズモデルとなります。2012年に発表、2015年に70時間パワーリザーブの自社ムーブメントに変更されています。

ぺラゴスは、全モデルががチタンケース(グレード2)でセラミックベゼル。イカ針などレトロな外観にモダンな素材使いというのが特徴的です。チタンのグレイッシュな素材感に、マットなセラミックベゼルで「男のツール感」が漂います。 (※裏蓋など一部のパーツはステンンレス製)

 
チューダー ぺラゴス39 Ref.25407Nチューダー ブラックベイ フィフティエイト Ref.79030N

(■2022年新作「ぺラゴス39」チタンケース&チタンブレス(Ref.25407N) 出典:チューダー公式サイト   ■小さめ39mmサイズで人気の「ブラックベイ フィフティエイト」ステンレス素材 Ref.79030N。このモデルにはシルバー、ゴールド、ブロンズ素材もあるが、チタン素材は存在しない)

2022年に、少し小さく薄くなった「ぺラゴス39(Ref.25407N)」が登場。こちらもチタン素材(グレード2)ですが、ヘリウムエスケープバルブを省略した200m防水モデルとなります。ベゼルの仕上げも変わり、少し都会的になった感じです。 同じサイズでヴィンテージ感のある人気ダイバーズウォッチ「ブラックベイ フィフティエイト(Ref.79030Nなど)」があり、悩ましい選択になりそうな新作のぺラゴス39。実物を見るのが楽しみです。

[エバンス オンラインショップ] チタンケースのTUDOR(チューダー)一覧

 

シンプルで渋い ~PANERAI(パネライ)

PANERAI(パネライ) ルミノール ベース PAM00176PANERAI(パネライ) ルミノール ベース PAM00176

(PANERAI(パネライ) 「ルミノール ベース PAM00176」生産終了品。 現行モデルでは、8日間パワーリザーブの「PAM00562」が44mmチタンケースでPAM00176と類似の仕様)

2本目はPANERAI(パネライ)から。1930年代から1960年代頃のイタリアなどの軍用時計にルーツを持つブランド。大きく分厚いダイバーズウォッチが多く、その関係かチタン素材が比較的多めな印象です。

こちらは「ルミノール ベース(PAM00176)」、2004~2013年頃に作られていたモデルです。パネライでは標準的な44mmサイズで、秒針のない2針タイプのシンプルを極めた1本。2層構造の「サンドイッチ文字盤」もパネライらしい仕様です。

シースルーバックから見える手巻きムーブメント(Cal.OP X)は、ユニタス(ETA)の懐中時計用で歴史と定評のあるムーブメントがベースなのだとか。「デカ厚」ですが、革ベルトということもあり重さは約100gとなっています。グレード2と思われる、グレーでマットなチタンは雰囲気があり、「軽めで渋い」と秘かに人気があるという1本です。

PANERAI(パネライ) ルミノール ベース PAM00176
 (USED、2009年製造品)

[エバンス オンラインショップ] チタンケースのPANERAI(パネライ)一覧

 

チタン素材をドレッシーに ~HUBLOT(ウブロ)

HUBLOT(ウブロ) クラシックフューション3針42mm、クロノ45mmビッグバンとクラシックフュージョンの薄さ比較

(HUBLOT(ウブロ) クラシックフュージョン 【3針の42mm】(542.NX.7170.RX)と【クロノグラフの45mm】(521.NX.1171.LR) ビッグバンとクラシックフュージョンの薄さ比較。ビッグバンは横から見たフォルムも角ばった印象)

3本目は「HUBLOT(ウブロ)」のクラシックフュージョン。1980年発表の最初期モデルを再構築した、クラシカルでシンプルなモデルです。3針と2つ目クロノがあり、3針モデルは33、38、42、45mmの4サイズ、クロノグラフは42、45mmサイズが存在します。

ケース素材は、チタンやセラミック素材が主で、このモデルには、ステンレス素材は存在しません。チタンは「グレード5」の合金が使用されており、ポリッシュとヘアラインの仕上げが巧みに使い分けられており、高級感を醸し出しています。

 
ウブロ ビッグバン ステンレス素材ウブロ ビッグバンウニコ42mm

(【ビッグバン】例えば…ステンレスケース×セラミックベゼル(301.SB.131.RX)。 【ビッグバン ウニコ】例えば…42mmサイズ、チタンケース×セラミックベゼル(441.NM.1170.RX)。スケルトン文字盤やベルト交換用の台形ボタンが特徴)

ウブロと言えば、デカ厚のスポーツ系モデル「ビッグバン」を思い出される方も多いと思います。比べると、ビッグバンよりケースが薄い、文字盤カラーが多彩、価格帯が下、などの魅力がクラシックフュージョンにはあります。ウブロ以外のブランドでも、チタン素材でドレッシーな雰囲気の時計は少なく、その点でも注目なモデルだと思います。参考 過去ブログ:「スーツにもお薦め。クラシックフュージョン」

ちなみに、自社製上位ムーブメントを搭載した「ビッグバン ウニコ」にもチタン素材が存在します。こちらは45mm&42mmサイズで精悍さのあるモデルです。

[エバンス オンラインショップ] チタンケースのHUBLOT(ウブロ)一覧

 

精悍&ヴィンテージ感 ~OMEGA(オメガ)

OMEGA(オメガ) シーマスター ダイバー300 007エディションOMEGA(オメガ) シーマスター ダイバー300 007エディション

(OMEGA(オメガ) 「007エディション」(210.90.42.20.01.001)と、ベースとなった現行「シーマスター ダイバー300」(210.30.42.20.01.001)  007エディションの後ろ姿。ベルト長さは穴の位置で調整)

OMEGA(オメガ)からは「シーマスター ダイバー300M “007エディション”」をご紹介。オメガは、チタンモデルの割合は多くないのですが、シーマスター系など海系の時計を主に、チタンモデルを見ることができます。

こちらは、2020年に発表された、スパイ映画「007」の特別モデル。主役の「ダニエル クレイグ」や映画スタッフらの意見を元に作り上げられ、映画の中でも登場しています。前作「スペクター」特別限定モデルの成功を受けて、現行の「ダイバー300」を大胆にリミックス。新モデルと言っていいくらいの変わりっぷりです。(→参考 過去ブログ「007の時計~スペクターとコマンダー~」)

 
オメガ スピードマスター X-33オメガ プロプロフ チタン(生産終了)

(オメガ 過去のチタンモデル(例) ■スピードマスターのアナデジモデル「X-33(Ref.3290.50)」  ■1200m防水の復刻モデル「プロプロフ」はチタン仕様も存在した。ちなみに、現行の超深海向け6000m防水ダイバーズウォッチ「プラネットオーシャン ウルトラディープ」にチタン&ナイロンストラップ仕様が存在する)

 

007エディションは、グレーが渋い「グレード2」チタンの42mmケース&メッシュブレスレット、アルミ製のダイアルやベゼルプレート、濃いベージュ色の夜光など、ヴィンテージ感が満載で雰囲気のある特別感あるモデルとなっています。重さはブレス仕様で約93gと、軽量に仕上がっています。

オメガでは、ナイロン製のNATOストラップにも力を入れています。007エディションのストラップも別途発売されていて、「ボンド ストライプ」がなかなかいい感じです。交換して楽しむのも良さそうです。

OMEGA(オメガ) シーマスター ダイバー300M ”007エディション”
 (USED、42mm、マスタークロノメーター仕様(15,000ガウス耐磁)、2021年保証書)

[エバンス オンラインショップ] チタンケースのOMEGA(オメガ)一覧

 

チタン老舗の耐磁クロノ ~IWC

IWC インヂュニア クロノ AMG IW372503世界初となるチタン製クロノグラフRef.3700 (1980年)

(■IWC インヂュニア クロノ AMG IW372503(※写真は過去に入荷した同型) ■IWCとポルシェデザインによる世界初のチタン製クロノグラフ(Ref.3700、1980年) 出典:IWC公式WEBサイト  )

ラストはIWC「インヂュニア クロノグラフ AMG(IW372503)」。2005年頃の特別モデルです。ドイツの自動車メーカー「メルセデス ベンツ」のチューニング等を行う「AMG」社とのコラボレーションとなります。マットなグレー色のチタン素材で、軟鉄製インナーケースを備えた耐磁モデルです。

IWCといえば、1978年頃から20年ほど「ポルシェデザイン」との協業を行っており、その関係で高級腕時計ブランドではいち早く、自社内にチタン加工設備を導入。1980年には「世界初のチタン製クロノグラフウォッチ」を発売しています。

 
IWC GSTアクアタイマー IW353601IWC マークXIII ヘリテージ IW327006

(IWC 過去モデルのチタン素材(例)  ■「GSTアクアタイマー」チタン素材(IW353601)。GSTシリーズにはクロノグラフ仕様なども存在  ■パイロットウォッチ 「マークXIII ヘリテージ(IW327006) 生産終了品」。現行のマークXX(20)には現在のところチタン素材は存在しない →参考 過去ブログ「絶妙なレトロ感。マークXVIIIヘリテージ」

また、1997年から2003年頃の「GST」コレクションでは、3つの素材の一つとしてチタンに焦点を当てていました。現在は、パイロットウォッチシリーズにいくつかのチタンやセラタニウム(チタンベースの独自素材)モデルが見られます。

こちらのインヂュニアでは、ベゼルの5つ穴など「ジェラルド ジェンタ」氏による1976年モデルのデザインを踏襲。現行モデルは、デザインが変更、耐磁仕様でなく、チタン仕様も存在しないため、その点でも見逃せないモデルなのではないでしょうか?

IWC インヂュニア クロノグラフ “AMG” IW372503
 (USED、42mm、ブレス長さ 約17.5cm)

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新たなチタンモデルに期待

今回はチタン素材の腕時計を5本紹介しました。チタン素材は軽量で、色合いが渋いということで、大きめで精悍なダイバー系ウォッチに多く使われる印象でした。

ところで、オーデマ ピゲやパテック フィリップなど、歴史ある名門の高級腕時計ブランドでのチタンモデルはどうなのでしょう?

 
パテック フィリップ「グランド コンプリケーション」Ref.5270T 1本限定A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」Ref.363.117 2022年250本限定

(■パテック フィリップ「グランド コンプリケーション」Ref.5270T。チャリティオークション用に「1本だけ」作られた2022年限定。パテック フィリップは、通常モデルにチタン素材モデルは存在しない 出典:パテックフィリップ公式WEBサイト   ■A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス チタン素材」Ref.363.117 (2022年)「ブランド初」のチタンモデルは250本の限定 出典:ランゲ&ゾーネ公式WEBサイト

「オーデマ ピゲ」は、大きめでスポーティーなオフショア クロノにチタンケースの仕様が見られますが、「パテックフィリップ」では通常モデルにチタン仕様は存在しません。他の名門ブランドの多くでも、チタン素材は「限定モデル等で様子見」といった感じのようです。

現在はステンレスモデルに過度に人気が集中していますが、上品でスポーティーさもある新世代モデルも登場し始めています。そんな中、新たなアプローチのチタンモデルが出てくるのを楽しみにしたいところです。

 

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