絶妙なレトロ感。「IWC パイロットウォッチ マーク XVIII (マーク18) ヘリテージ IW327006」2021年1月18日
2021-01-18 10:30
今回のエバンスブログは「IWC パイロットウォッチ マーク XVIII(マーク18) ヘリテージ」Ref.IW327006をご紹介します。チタン素材をケースに使い、日焼けしたようなベージュの夜光などで、クラシカルなヴィンテージ感を漂わす1本です。
追記) 2022年の新作で、マーク18の後継機となる「マークXX(マーク20)」が登場しました。マーク18と同じ40mmの大きさで、120時間の自社ムーブメントを新たに搭載、ベルトが簡単交換式に変わるなどの変更が見られます。型番はIW3282番代で、チタン素材は今のところラインナップされていない模様です。
※当記事はマーク20登場以前の内容で、マークシリーズの歴史やチタン素材のマーク18ヘリテージをご紹介しています。
マークXVIII ヘリテージ の概要
(■「マーク18 ヘリテージ」 マットなチタンケース、ベージュの夜光、青い針が特徴)
こちらの「パイロットウォッチ マーク XVIII ヘリテージ」Ref.IW327006は、IWCのパイロットウォッチを代表するモデルの一つ「マークXVIII(以降マーク18)」のチタン素材モデル。文字盤のデザインが、ステンレス素材の定番モデルと若干異なりますが、特に限定ではないようです。マーク18シリーズが登場した翌年、2017年に発表されたモデルとなります。
IWC ~アメリカ的でドイツ的なスイスブランド~
IWC(アイ・ダブリュー・シー)は、元々の社名インターナショナル・ウォッチ・カンパニー (International Watch Company) の3つの単語の頭文字から取ったもの。アメリカ出身の時計技師「フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズ (F. A. Jones)」氏が1868年に設立。2018年に創業150年を迎えた歴史の長い名門ブランドです。
IWCの文字とともに並ぶ「SCHAFFHAUSEN」は、ドイツ語圏でスイス北部のシャフハウゼンという町のこと。創立の地であり、現在もこの地で時計が作られています。
現在はリシュモングループに所属。実用性を重んじたシンプルで質実剛健な高級時計を手掛け、アメリカ的な合理性とドイツ的な機能性を併せもったブランドとして、時計ファンに愛されています。
マークXV(5列の前期ブレス)を15年位使用している店舗スタッフに、その魅力を聞いてみたところ、「シンプルで飽きがこなく、細かいところまでよく考えて作られているので、普通に不満もなく、自然に使い続けられています。」といった感想が聞けました。
マークシリーズ 歴史の概略 ~2つのルーツ~
(■1948年に登場したイギリス空軍向け「マーク11」。マーク12から始まるマークシリーズのルーツ ■1940年に登場したドイツ軍向け「ビッグ・パイロット・ウォッチ 52 T. S. C.」。現行のビッグパイロットシリーズの祖先で、今回のマーク18 ヘリテージの着想元 出典:IWC公式サイト「IWCの歴史」https://www.iwc.com/ja/company/history.html)
今回のマーク18 ヘリテージは「パイロットウォッチ」コレクションの「クラシック」シリーズの中の1本で、マーク18の兄弟モデルとなります。
マークシリーズは、1948年頃から作られていた英国空軍(RAF)パイロット向けのモデル「マーク11」が祖先となる時計です。センターセコンド化し、▲マークなどで視認性を重視した文字盤、耐磁性を高める軟鉄製インナーケースによる2重構造、軍の仕様を満たす高い精度などで、近代的なパイロット・ウォッチの完成型と言われたモデルで、ムーブメントは手巻きの名機Cal.89を搭載していました。
「マーク11」は1981年頃まで英国空軍で使用され、ごく一部だけが80年代中頃まで市販されていたようです。
(■マーク12からマーク18までのマークシリーズ。マーク13やマーク14は存在しない。■マーク18は、特別モデル「プティ・プランス」にブルー文字盤、特別モデル「アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ」にブラウン文字盤も存在)
その歴史的な名作の流れを汲み、初の民間向けモデルとして作られたのが1994年に発表された「マークXII(マーク12)」。自動巻きムーブメントを搭載し、日付表示が加わった、マークシリーズの基本形となる1本でした。その後、1999年登場のマークXV(マーク15)、2006年登場のマークXVI(マーク16)、2012年登場のマークXVII(マーク17)、2016年登場のマークXVIII(マーク18)と続いていきます。
ここで、マーク12からマーク18までの特徴を振り返ってみましょう。
基本のフォルムは変わらずに、ケースサイズや針の形、文字盤のレイアウトの細部が変化しています。見比べてみると、特にマーク15からマーク16で変化が大きかったことが伺えます。
IWCとチタン
(IWCでチタン素材を使用したモデルの例 ■「GSTクロノ」Ref.3707-003 ■「GSTアクアタイマー」 Ref.3536-001 ともに生産終了品)
今回のマーク18 ヘリテージは、定番モデルで使われているステンレス素材でなく、チタン(チタニウム)素材を用いたモデルです。
チタンは、ステンレスの6割ほどの軽さで、強度が強く(キズはつく)、錆びにくく、アレルギーの原因になりにくいといった優れた特徴を多く持つ工業素材。一方で、硬くはないものの、加工が非常に難しく、価格が高くなりがちな素材でもあります。
IWCとチタンの歴史は、時計業界の中では古く、1980年に世界初となる「チタン製ケースのクロノグラフウォッチ」をポルシェデザインとの協業で発表。チタンの製造や切削などに必要な設備を整え、高度な専門技術のノウハウを早い時期に習得、自社での製造を実現してきました。
1997年から2003年頃の「GSTシリーズ」ではゴールド、ステンレスとともに3つの素材の一つとして取り上げられました。今回の時計以外にも、IWCは現在もチタンやセラタニウム(チタンの表面をセラミック化した独自素材)の時計を多彩に展開しています。(→ 参考:過去ブログ「時計素材の基本 チタン・チタニウム編」)
定番とひと味違うこの時計
(■雰囲気のある青い針 ■マーク18のステンレス素材モデルは黒ブレス、黒ベルト、白ベルト仕様が存在。ヘリテージとは「7」や「9」など文字盤の数字の書体も異なる)
今回の時計は「ヘリテージ」ということで、過去の名作に着想を得ています。1940年のドイツ軍向けの高精度な航空時計「ビッグ・パイロット・ウォッチ 52 T.S.C」がそれ。(二つ前の「マークシリーズ」段落に写真あり) 直径55mmの大型サイズで航空士官が使う時計でした。
マークXVIII ヘリテージは、ベージュ色の夜光や青い針を採用、マットに仕上げられたチタンのグレーの色合いと相まって、レトロな雰囲気を醸し出しています。文字盤の分刻み外周のサークル、バーインデックスの長さ、アラビア数字の位置や書体などが、マーク18の定番モデル(IW327009、IW327012、IW327015)と異なります。また、裏蓋は飛行機の刻印がないすっきりしたものとなっています。
(■マットでソリッドなケース造型、リューズはIWCのマーク入り。 ■裏蓋にユンカーズ飛行機のマークは入っていない)
ムーブメントは、自動巻きCal.35111(セリタSW 300-1がベース)を搭載、軟鉄製インナーケースに守られて耐磁性を高めつつ、厚さは10.8mmに留められています。
また、ベルトがブレスレットでなく、カーフベルトということもあり、約59gという軽量な時計に仕上げっています。
ちなみに、2017年に「マークXVIII トリビュート トゥー マークXI (Ref.IW327007)」という限定モデルが発売されていました。こちらはステンレス素材&NATOストラップで、マークXIを模した針や文字盤のデザインでした。
絶妙なレトロ感で長く付き合えそう
(■暗いところでの視認性も高い ■腕周り16.5cmのスタッフが腕に乗せてみました)
20年を超える歴史を重ねる中で、シンプルな実用性だけでなく、上質な雰囲気を高めてきたマークシリーズ。この「マークXVIII ヘリテージ」では、ベージュの夜光、ブラウンのベルト、グレーがかったチタン素材などが、絶妙なレトロ感を加えてくれています。
ここ数年で、カジュアル化が一気に進んでいる最近のビジネスシーン。そんな腕元に、ドレスウォッチほど堅くなく、スポ-ツ系モデルほど個性の主張は強くなく、派手ではないけれどしっかりと作られているこんな1本。さりげなく日々を重ねていける頼れる相棒として、いい選択なのではないでしょうか。
→「IWC パイロットウォッチ マークXVIII (マーク18) ヘリテージ (新品)」(SOLD OUT)
(IW327006、ケース径40mm、自動巻きCal.35111、6気圧防水、ベルト幅20mm)