こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
今回は5桁のステンレスサブマリーナに絞り、4桁のアンティークモデルも振り返りながら、徹底比較をしたいと思います。
サブマリーナとは
ロレックス社のダイバーズウォッチのことですが、ダイバーズウォッチといえば、世界中の誰もがサブマリーナのようなモデルを思い浮かべますよね。それもそのはず、1950年代から現在に至るまで、各社がこぞって追随しサブマリーナに似たモデルを作って発売、日本のメーカーでさえもこのモデルを模範としていますし、それほど完成された完璧なモデル、それがロレックスのサブマリーナなのです。
1953年はロレックス社が初めて文字盤に”SUBMARINER”の名を記して世に送り出した記念すべき年です。(ちなみにターノグラフとエクスプローラー発表もこの年です)その年から約70年経った今も多くの著名人、もちろん一般の方々にも幅広く愛用されています。
初代サブマリーナはRef.6204で、日付なしのシンプルなモデルです。(下写真)このモデルの文字盤の特徴は我々のよく知るベンツ針ではなく、スッと伸びたペンシル針に、ロリポップと呼ばれる先端に丸の付いた秒針です。特筆すべきは現行のモデルに比べ、ケースが腕に沿うような薄い作りとなっており、100m表記のものと、200m表記の二種類が存在し、OYSTERとPERPETUALの間が離れているスプリットロゴ、艶のある文字盤のミラーダイヤルなど最初期のものがもっとも稀少で入手困難です。
この初代Ref.6204をオリジナルとし、4桁最終のRef.5513、そして最新のRef.124060に至るまで原型を大きく変えることなく製作され続けています。
”ロレックス・サブマリーナ”は世界で最も知られている腕時計として、これからも君臨し続けることでしょう。
Ref.14060とは
前述したRef.5513の後継機として1989年に発表された第五世代のサブマリーナ・ノンデイトです。(初代はRef.6204→Ref.6538→Ref.5510→Ref.5513 ※途中の派生モデルは割愛します)風防がプラスチックからサファイアクリスタルへと変更されたため、防水性が200mから300mへアップ、両方に回転していたベゼルは、誤作動を防ぐため逆回転防止ベゼルへと改良されました。文字盤インデックスはトリチウムからスーパールミノバへ、より長く安全に蓄光を保つため、実際に海に潜るプロフェッショナル達により重宝されたのではと容易に想像がつきます。
キャリバーは前作Cal.1520からCal.3000へと変更され、振動数は19,800から28,800へと向上、高い精度が出るようになりました。Ref.14060の製造は1989~2000年までで、2001年にはCal.3000からCal.3130へと変更となり、見た目はほぼ変わらないのですが、型番の最後に”M”が付くようになりました。
Cal.3130からは心臓部であるテンプを両方で支える仕組みとなり、より安定した高い精度と耐震性を持つモデルへと進化しました。第六世代のサブマリーナ・ノンデイトRef.14060Mには前期・後期があり、このモデルよりガラス6時位置に”王冠の透かしマーク”が入るようになり、後期は2006年からで”クロノメーター”認定を受けたムーブメントを採用しています。
2007年からはガラスの内側、文字盤とガラスの間(インナーリング)にたくさんの”ROLEXの文字 ”と6時位置に”シリアル”が刻印されるようになりました。製造は2012年までで、最後のアルミニウムベゼル5桁の日付なし(ノンデイト)はこのモデルだけですし、Ref.14060は次の後継機に繋がる大切な礎モデルと言えるでしょう。
Ref.16610とは
1989年~2010年、21年間ものロングセラーを誇る第四世代のサブマリーナデイトです。 (初代は1969製のRef.1680→Ref.16800→Ref.168000 ※Ref.168000は、Ref.16800とRef.16610の間に僅かに生産された稀少なモデルで、”トリプルゼロ”という異名を持ちます。ここエバンスでも創業から現在まで取り扱いしたのは僅か数本、私自身10年以上その姿を見ておりません。ポピュラーでないためか、ずば抜けてプレミアムが付いていることはありませんが、いい個体が非常に少ないので今後大いに期待できるモデルだと思います。)
5桁二代目のRef.16610は前作Ref.16800と比べ、見た目の大きな変化はなく、キャリバーが心臓部のテンプを両手で支える仕様・ツインブリッジへと変更されました。21年もの間に様々なマイナーチェンジを経て、Ref.14060M同様王冠の透かし、インナーリングの刻印、フラッシュフィットの変更なども含めて後継機への礎となったモデル、それがRef.16610です。
2003年、サブマリーナ誕生記念モデルとしてRef.16610LV(ロレックスのコーポレートカラーであるグリーンをベゼル色に採用、大きめインデックス採用モデル)を発表しました。一見奇抜なこのモデルは当時人気が伸び悩み、一度市場から姿を消したのですが、その後レギュラーモデルとして2010年まで生産されました。
2003年製、最初期のRef.16610LVはグリーンが薄く、ベゼルの”4”の文字が後期の文字に比べて大きいこと、更に”SWISS MADE”の文字も大きいことから、「ライムベゼルのファット4でビックスイスは激レア」という暗号のような用語でロレックス愛好家の間で親しまれており、現在ではプレミアムとなっています。黒い文字盤にベゼルだけが緑という二色のカラーリングは5桁ではこのモデルだけですし、後期の濃いグリーンベゼルも年々価値を高めています。Ref.16610LVはロレックスって生産終了してからがおもしろいなと改めて感じさせるモデルのひとつですね。
4桁アンティークサブマリーナ ピックアップ
冒頭で初代のRef.6204のお話はしましたよね。その翌年、現行にグッと近付いたベンツ針のRef.6205が登場、秒針がロリポップからまっすぐ伸びた長く細い針へと変更されました。そして1955年、このモデルなくしてサブマリーナは語れない、Ref.6200の登場です。なぜかと申しますと、文字盤が通常のドットとバーの組み合わせではなく、なんと、3・6・9とバーの組み合わせの”エクスプローラーダイヤル”なのです!このモデルは主に海外のロレックス愛好家の中で最も人気が高く、”キング・サブ”という愛称で呼ばれるほどです。少し幅広のぶ厚めケース、リューズガードなしの8mmの大きなリューズ=通称デカリューズ、EXPラジウム文字盤は一味違う、マニア垂涎のモデルです。
その後、スモールクラウンと呼ばれるRef.6536を経て、ついに”ビッククラウン(デカリューズ)”Ref.6538が登場します。もう5年も前になりますが、私のブログ記事で一度だけ紹介したことがあるので、覚えてらっしゃる方も多いと思います。そして、なぜこのモデルが有名なのかと申しますと、1962年に映画「007」でショーンコネリー扮する”ジェームズ・ボンド”がこのRef.6538を着用して登場したのです。ロレックスのサブマリーナといえばこのモデルを連想する方も多いそうです。
そして1959年、現行にまた一歩近付いたモデルが登場します。リューズガードつきのRef.5512です。その三年後の1962年には我々のよく知るRef.5513の登場、日付なしサブマリーナの最終モデルです。Ref.5513は27年もの長い間生産され、様々なマイナーチェンジを繰り返しながら進化していきました。
そして今となっては信じられないお話ですが、サブマリーナって日付なししか作ってなかったんですよ、最初は。
サブマリーナデイトが発表されたのは、サブマリーナ誕生から16年も先の1969年なんです。初代サブマリーナデイトはRef.1680で、4桁の日付付きはRef.1680のみです。1979年までの10年間の製造で、よく耳にする”赤サブ”や”COMEX”という文字盤が存在するのはこのモデルです。(ちなみにCOMEXはRef.5513・5514にも存在します)
そして4桁のサブマリーナデイトの最高峰はCOMEXで、昨年のアンティコルムで約6000万円で落札されました。(前述したRef.6200も同じくらいでした)
ここでは語りつくせないアンティークロレックスの魅力。いい個体が年々減っていき、オリジナルの素晴らしいものはどんどんプレミアムが付いて行っています。僅か数年しか製造されなかったモデルも、前期・後期があったり、例えばRef.1680赤サブ(下写真)に関しても文字盤の印字違いのマーク1~8まで存在するほど、その種類は膨大です。他のモデルですが、最近5桁の文字盤でトリチウムとルミノバが混合した”トリチノバ”が注目を浴びています。このようにおそらく4桁も新しいレアポイントが見付かり更にその価値は上がって行くことでしょう。
Ref.14060・Ref.16610
2モデルそれぞれのディテール
下写真左のRef.14060ですが、前作 Ref.5513との違いはRef.5513は200m防水なのに対しRef.14060は300m、キャリバーだけでなくガラスも変更となり、ケースに厚みを持たせて耐久性を上げました。ベゼルの書体が少し変わり、Ref.14060からは細長くスタイリッシュな印象を持ちます。ルミナスポイントの大きさも大きくなりました。
ラグ幅は上から約5~2ミリ、ラグ長さ約13ミリ、ベゼル幅約5ミリ、ブレスレット幅約19~15ミリ、ケース厚み約12ミリ、クラスプ厚み約0.5ミリという結果でした。
下写真右のRef.16610ですが、前作Ref.16800との見た目の違いは前述した通りほぼなく、文字盤の仕上げの違いが挙げられます。Ref.16800は艶のない黒文字盤なのに対し、Ref.16610は艶有りです。
ラグ幅は上から約5~2ミリ、ラグ長さ約13ミリ、ベゼル幅約5ミリ、ブレスレット幅約19~15ミリ、ケース厚み約13ミリ、クラスプ厚み約0.5ミリという結果でした。
この頃、特にノンクロノメーター表記のRef.14060の印字二段文字盤に日付なしとRef.16610の日付ありとでは見た目にも大きく違いがありますし、日付付きの方が高級に見えるため、圧倒的にRef.16610の方が人気が高かったのをよく覚えています。現行を含めロレックスはほぼ日付・サイクロップレンズ付きなので、ミニマリストの増えている今、スッキリしたシンプルなものを好む方によく選ばれてており、人気は互角です。その時々の時代の流れ、流行で売れるモデルも変わって来るんですね。今回はいろいろなことを気付かされるブログ記事となりました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。4桁アンティークロレックスをひとつのチャプターに加えての記事は初めてだったので、一味違った読み応えだったのではないでしょうか。改めて感じたのは、さすがロレックスの主要モデルのひとつだけあって、サブマリーナは深いですね。ひとつの記事じゃおさまりきれず、第二弾に続きますのでみなさまお楽しみに。
現在、Ref.1680赤サブ、Ref.16800、Ref.14060M、Ref.16610、Ref.16610LVはお店でご覧いただけます。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。