IWC ポルトギーゼ クロノグラフ その魅力の源泉とは
2025-06-30 11:00
ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
本日はIWCのポルトギーゼ クロノグラフをご紹介いたします。
ポルトギーゼの起源については、1930年代にポルトガル商人が航海に使えるマリンクロメーター級の腕時計を要望したことをきっかけに、IWCは懐中時計に採用していた機械を腕時計転用することで、非常に高い精度と視認性に優れた腕時計、後にポルトギーゼと呼ばれるモデルを完成させました。
また、当時として異例の大きさを持ったポルトギーゼですが、その意匠は現在に引き継がれ、40mmを超えるケースサイズをいかしたダイアルには、緩やかなカーブを描くリーフ形状の針、そして緻密に並んだインデックスが知的でクリーンな印象を与える、今やIWCを象徴する人気シリーズとなりました。
なかでも今回ご紹介のクロノグラフについては、同シリーズのエントリーモデルでありながら、外装面やムーブメントに至るまで改良を重ね、実に30年近くに渡り支持されてきました。
ポルトギーゼ クロノグラフ遍歴
美しく高級感あるデザインのポルトギーゼ クロノグラフですが、1995年に原型となるラトラパンテが誕生し、そのデザインを踏襲する形でクロノグラフは1998年に発売されました。
Ref.3714XX 1998年~2019年
1998年以来、高い人気を博すポルトギーゼ クロノグラフは特徴的なデザインを変えることなく、今日に至るロングセラーモデルの代表格と言えますが、その裏では時代に合わせ常に高みを目指すIWCならではの改良が幾度となく行われてきました。
第一世代となるRef.3714XXにおいては1998年から2019年にかけて生産され、その間には主に外装面における改良が行われました。
2001年 アプライドインデックスへ変更
ポルトギーゼを印象付ける要素としてアラビア数字を用いたインデックスがありますが、発売当時それはエンボス仕上で作られていましたが、2001年を境に植字式のアプライドへ変更されました。
アプライド インデックス エンボス インデックス
ダイアルとインデックスを別体とすることで、明瞭なコントラスト与えると同時に、ダイアル表現の幅も広がり、その後のバリエーションの拡大に大きく寄与しました。
2012年 自社製ケース採用
かねてよりケースの内製率の高かったIWCですが、ポルトギーゼクロノグラフにおいても2012年より自社製造のケースが採用されるようになりました。

IWCが自社でケースを手掛けるようになった大きなきっかけは、1980年代に始まったIWCによるポルシェデザインの時計製造と言われています。
当時、ポルシェデザインで採用が決まったチタン製ケースですが、製造を請け負うサプライヤーは無く、IWCは自社で製造する道を選びました。
結果、そこで得た知見や、切削による高い製造技術は他素材にも応用展開することで、現在ではIWCは高級時計然とした質感を持ったケースを製造出来るようになり、リューズやプッシュボタンと言った操作系統の感触の良さも、高い次元でコントロールする事が可能となりました。
Ref.3716XX 2019年~
2019年には自社製ムーブメントCal.69355を搭載するRef.3716XXへとモデルチェンジが行われました。
外観におけるデザインは先代を踏襲し、裏蓋がシースルー仕様へ変更された他は、新旧の判別は難しいほどの小変更に止めら、それはポルトギーゼクロノグラフの持つデザインの完成度の高さの表れでもありました。
Ref.IW371606Cal.69355
Ref.3716XXに搭載される自動巻きムーブメントCal.69355は、従来のハイエンドモデルに搭載されるCal.89000系から、フライバック機構など付加機能を取り除くことで生産性を上げコストを抑えたムーブメントです。
それはまた、長年信頼を得て来たCal.7750をベースとしたCal.79350の代替機として十分に機能する、ベーシックかつ必要十分な性能を持ち合わせた次世代機であり、ポルトギーゼクロノグラフのキャラクターにマッチした組み合わせとなりました。
ポルトギーゼクロノグラフが選ばれ続ける理由
ここまで、ポルトギーゼクロノグラフの遍歴を見てきましたが、1998年の誕生以来、その変わらぬデザインは多くの時計愛好家の支持を獲得し、内外装含め改良を行う事で商品性を失う事なく、むしろ人気は拡大の一途をたどります。
絶妙なサイズ感を持ったケースは、ビジネスの場では一見大きく感じられるかもしれませんが、ある意味で匿名性を持ったデザイン故主張は控えめに、身につける方の印象を引き立ててくれる存在とも言えます。

数多ある高級時計ですが、ポルトギーゼ クロノグラフほどにデザイン、そして機能面のバランスが取れた時計は多くはありません。
また、実際に手にして感じる”良いもの感”は、IWCならではの緻密な作り込みがもたらすものであり、そんな理路整然とした製品でありながら、一方で言語化出来ない不思議な魅力、そして情緒に訴える何かを併せ持つ点も、ポルトギーゼが長く愛される理由なのかもしれません。