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「RM030”デクラッチャブル・ローター”巻上げ過ぎない時計」 2019年12月10日

2019-12-10 11:00

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本格的に寒くなって来ましたね。みなさん、外出なさる際はあたたかくして
お出掛け下さいね。

さて、本日はリシャールミルから”RM030”のご紹介です。

RICHARD MILLE リシャールミル オートマチック  デクラッチャブルローター RM030

はじめに

私は2015年に初めて、リシャールミルについてのブログを書きました。
当時このブランドに関してほとんど無知だった私は、日にちと時間を掛けて熱心に調べ、リシャールミル氏の人物像まで語った記憶が今でも鮮明に残っています。・・・(はじめての私のブログ「ウォッチ・コンセプター“リシャールミル”」

その二年後の2017年、これまでいろいろなブランドの時計を見て来た私が、こんな時計あるんだ!!とものすごい衝撃を受け、そしてリシャールの中で私が一番好きとなったモデルのブログを書かせていただきました。・・・(「赤土の王者 ”ラファエル・ナダル × リシャール・ミル ”」

そしてまた二年後の今年。三回目のリシャールブログの機会を頂くことができ、このブランドの素晴らしさをまたみなさまにお伝えできることを光栄に思います。お時間がある時に、是非上記二つのブログもご覧になってみてくださいね。


Source: https://en.wikipedia.org/wiki/Les_Breuleux

リシャールミルの情熱

はじめての私のリシャールブログでお伝えした、リシャールミル氏の人物像の部分を読んでいただくとわかるように、華々しい経歴の持ち主である氏はいつか自身の理想の時計を開発したいと考えていたそうです。理想の時計とは、コストを気にせず、どこのブランドにもない”究極の時計”でした。

リシャールミル氏本人も所有しているF1のレーシングカー、世界のトップアスリート達、航空機や建築に至るまで、様々な分野に目を向けてインスピレーションを得て、まずはブランドコンセプトを明確にするところから始めたそうです。

そしてリシャールミルというブランドが成功を収めたのは、なにより”ルノー・エ・パピ社”(後程詳しくお話します)や、新素材を製造してくれるサプライヤー達のおかげです。工場を持たずに製造・販売をする会社のことを”ファブレスメーカー”といいますが、人徳と情熱があるリシャールミル氏だからこそ、成し得た成功ということに他ならないですね。


Source: http://www.richardmille.jp/partners/

オロメトリー社

これまで私のブログで何度かお伝えして来た”ラ・ショー・ド・フォン” と ”ル・ロックル”。これらは、ユネスコ U.N.E.S.C.O(国際連合教育科学文化機関=United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)の世界遺産に登録されている町の名前です。二つとも時計製造の町として文化遺産として町の人々からはもちろんのこと、訪れる人達にも大切にされています。

この二つの町のほぼ中間にあたる小さな村、”レ・ブルルー”にリシャール・ミルの本社である「オロメトリー社」があります。
この工房はリシャール氏とその友人、ドミニク・ゲナ氏が設立した会社で、創業100年以上のゲナ家のモントル・ヴァルジン社に併設されているそうです。

そして2013年にはケース工房「プロアート・プロトタイプス」を設立、現在ではゲナ氏の娘セシル・ゲナ女史もプロジェクトに参戦しています。今年2019年発表された”ボンボンコレクション”の統括を行い、男性向けだとばかり思われてきたリシャールミルの世界を女性に向けて発信したことで、同社はこれから更に幅広い顧客の支持を集めることでしょう。


Source: http://www.richardmille.jp/manufacture/

リシャールミルのこだわり

リシャールミルがこだわっているのはデザインや形だけではありません。複雑な構造のムーブメントですが、メンズにおいてはほぼスケルトナイズされているため、小さな部品に至るまで手作業で研磨を行っているのです。

細かくお伝えしますと、ネジや針、ケースはもちろんのこと、ブリッジ、香箱の蓋、トゥールビヨンモデルに関してはキャリッジなど、主要な部品はすべて熟練の技術者が手仕上げを施します。200~複雑なモデルは400もの部品で成り立っているのですが、そのすべてを手作業で厳しくチェックしています。

また、”シュビーユ・ドゥ・ボワ”というブラックポリッシュと呼ばれる技術をムーブメントに施しているため、角度によって様々な表情を楽しめます。とても小さく繊細な部品にこの手法を施すのは大変困難なため、一握りの熟練した技術者が細心の注意を払って行っています。研磨を行うことは、美しさへのこだわりの他に、腐食や磨耗を抑えることができるからです。
表から目に見えない部分まで、妥協なくこだわり抜いて作る一本はまさに、芸術作品と言えるでしょう。

RICHARD MILLE リシャールミル オートマチック  デクラッチャブルローター RM030

リシャールミルのケース

今回、ご紹介するRM030は2011年発表、シンプルな三針モデルなのに大型のRM011と同じ大型のケースが採用されています。これは同社では初の出来事です。

厚みがある割に腕にピッタリと沿う理由は、ガラス・ベゼル・ミドルケース・裏蓋すべてが全方向に湾曲しているからです。ベゼルとミドルケース、裏蓋には、この形にするために何十回ものスタンピング加工を施し、400時間以上を掛けて202もの工程を経て製作しているそうです。
リシャールミルがこれほどまでに高額なのも、こういう理由を聞くと頷けますね。

RICHARD MILLE リシャールミル オートマチック  デクラッチャブルローター RM030

デクラッチャブル・ローターとは①

自動巻きとは手首の僅かな振動によって、内部の重り(ローター)がぐるぐる回ってゼンマイを巻き上げてくれる仕組みです。しかし、手巻きのように巻き止まりがないからといって、巻き過ぎは注意なのです。

腕時計内部の構造は、ゼンマイを巻き過ぎることのないよう、スリッピングアタッチメントという安全装置が取り付けられていることが一般的です。ゼンマイの納められてる香箱には三箇所の溝があり、十分に巻上が行われるとゼンマイがいずれかの溝に入ってスリップして止まり、余分な力がそれ以上加わらない仕組みになっています。しかし、スリップし過ぎるとトルク(回転する力)が落ちますし、逆にスリップしなさ過ぎだとトルクが強くなり、精度に影響が出てしまいます。

そこでリシャールミル社では、自動的にローターのクラッチ(連結部品)を切る装置を四年もの歳月をかけて開発したのです。

RICHARD MILLE リシャールミル オートマチック  デクラッチャブルローター RM030

デクラッチャブル・ローターとは②

ゼンマイが完全に巻き上げられると、香箱はローター巻上機構から自動的に切り離されます。詳しくご説明すると、デクラッチャブル・ローターとは、パワーリザーブが50時間に達した時、特別なギアシステム(歯車のこと)によって自動的にクラッチ・オフされ、40時間を切るとオンになり50時間になるまで自動で巻上を行う機構のことです。12時位置の”ON/OFF”の表示窓で、ローターが作動しているかどうかを確認することができます。

また、この装置は8~10時位置にあるパワーリザーブ・インジケーターに連結しているので巻上が最適な状態かを一目で確認することができます。
リシャールミルの時計は香箱が二つ備えられているので、他の部品に掛かる摩擦や負担を軽減することができ、長時間安定したトルクを保つことができるのです。

詳しくお伝えしましたが、要するに「巻上げ過ぎない機能」それがデクラッチャブル・ローターなのです。

RICHARD MILLE リシャールミル オートマチック  デクラッチャブルローター RM030

ルノー・エ・パピとは①

前述した”ルノー・エ・パピ”とは、ドミニク・ルノー氏とジュリオ・パピ氏が1986年に二人で立ち上げたムーブメント会社です。二人は共にオーデマピゲの時計師として勤めていました。彼らは仲が良く、いつものように仕事がおわって時計づくりのアイデアを話し合っていたある日、二人で独立しようと決断、ルノー・エ・パピ社が誕生しました。

営業当初はなかなかうまく行かず半年が過ぎ、半ば諦めかけてた時、IWCのギュンター・ブリュームライン氏(リシュモン時計部門最高責任者であり、ランゲ&ゾーネの復興の立役者)と時計師のクルト・クラウス氏に出会い、たいそう気に入られた彼らは、すぐにミニッツリピーターの新規開発の依頼をされたそうです。

それからの二人は当時最先端だったコンピューターを取り入れ、機械と手作業の組み合わせで高級ムーブメントを製作する工房を作ったのです。そして、オーデマピゲに出資を仰ぎ、会社は急成長を遂げます。



Source: https://www.ablogtowatch.com/dominique-renaud-dr01-twelve-first-watch/

ルノー・エ・パピとは②

数年後、ドミニク・ルノー氏は自身の時計ブランドを作りたいと思い立ち、時計業界から離れます。
そして2016年、DR01”Blade Resonator” (ブレード共振器)というモデルを発表、その価格、なんと一億円超えなんです・・・!(上写真参照)ルノー氏の今後の活躍に大注目ですね。

今やジュリオ・パピ氏率いるルノー・エ・パピ社。パピ氏は現在、オーデマピゲのクローディオ・カヴァリエール氏(グローバルブランドアンバサダー=会えるアンバサダー)と一緒に大変ご活躍なさっています。カヴァリエール氏についてもいつかみなさまにお話できたら嬉しいです。

ちなみにルノー・エ・パピ社は、2015年に私が書いたブログ「日本人時計師がおくる “オーデマピゲ ミレネリー4101” 15350OR」でご紹介した日本人時計師、”浜口尚大氏”がかつて活躍していた会社です。(現在はパルミジャーニ・フルリエ社の副社長兼開発製造責任者)浜口氏のような若くて素晴らしい逸材を育てて輩出している工房、それがルノー・エ・パピ社なのです。

RICHARD MILLE リシャールミル オートマチック  デクラッチャブルローター RM030

おわりに

いかがでしたでしょうか。
今回は、リシャールミル氏だけでなく、彼を支える人達にもスポットを当ててお話しました。
リシャールミルの作品である時計一本一本は、素晴らしい仲間たちとの様々な形の結晶です。
いろいろなスペシャリスト達がこのブランドに関わり、特別なモデルを皆で作り上げています。
全モデルを合わせても年間わずか3000本程。雲上時計のひとつですが、いつか、人生で一度は所有してみたいですね。

高額ですが入荷するとすぐに必ず売れてしまいます。気になられた方はお早目にいらっしゃって下さい。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

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