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さよならミルガウス~ 生産終了したROLEX (ロレックス) の耐磁モデル ミルガウスとは 2023年4月10日

2023-04-10 11:00

今回のエバンスブログは、ROLEX(ロレックス) ミルガウスを振り返ります。2023年3月、新作発表の裏で、ひっそりとラインナップ外となったロレックス唯一の耐磁ウォッチです。後半では耐磁モデルの今後についても考えてみました。 

 
ミルガウス Ref.116400GV グリーンガラス仕様:黒、Zブルーミルガウス Ref.116400 クリアガラス仕様:黒、白

(【”最後”のミルガウス】 Ref.116400GV グリーンガラス仕様→ [1] ブラック(2007~2023年) [2] Zブルー(2014~2023年)  【”同世代”のミルガウス】 Ref.116400 クリアガラス仕様→  [3] ブラック(2007~2015年頃)  [4] ホワイト(2007~2016年頃))

ミルガウスとは

裏蓋とインナーケースインナーケースの中にムーブメント、文字盤の下にもインナー蓋

(【ミルガウスのインナーケース Ref.116400GV/116400】通常の裏蓋の下に「B」の文字が入った強磁性合金のインナーケースが存在 反対面の文字盤の下にもムーブメントを保護する内蓋が存在する)

1956年に初代モデルが誕生した「ミルガウス(MILGAUSS)」。X線を扱う医師や、発電所で働く技術者たちに向けて作られた耐磁モデルで、「1,000ガウスという高い耐磁性能」を持つ時計です。ムーブメントをインナーケースで覆うことで耐磁性を実現しました。

世界有数の素粒子物理学の研究所である「欧州原子核研究機構(CERN)」の厳格なテストで、実際に1,000 ガウスの磁場に耐えられることを確認したという逸話も残っているそう。

一時、生産中止になっていたものの、2007年に、初代の「イナズマ針」に、初となる「グリーンサファイアガラス」を備え復活。その個性的な外観も印象的なモデルでした。
(※耐磁性能を示す際、gauss(ガウス)でなく、A/m(アンペア毎メートル)の単位を用いる時計もあります。1,000gauss≒80,000A/m に相当)

ここで意外と知られていない (かもしれない) ミルガウスの豆知識をご紹介します。

 

ミルガウスの豆知識

  • ミルは「ミリタリー」ではない
    (mill(ミル)はフランス語で「1,000」、gauss(ガウス)は磁束密度の単位から)
  • 他のロレックスに、「イナズマ針」や「グリーンガラス」の仕様はない。
  • 元々「スタンダードモデル」だったが、途中で「プロフェッショナルモデル」になった。
  • デイトジャスト同様、「リューズガードなし」、ブレスレット留め具が「シングル」タイプだった。
  • 40mmエアキングの初代 (Ref.116900、2016~2022年) は、兄弟モデル。
    (Ref.116400GV/116400と同じ耐磁ケース&ムーブメントを使用していた)
  • 型番末尾の「GV」は、Glace Verte=フランス語で「緑のガラス」のこと
  • Zブルーの「Z」は、ジルコニウム(Zirconium)から
 

歴代のミルガウス

1966年頃のミルガウス Ref.1019 黒ミルガウスの使用シーンをイメージした写真

(第2世代のミルガウス Ref.1019 ブラック文字盤(1960年代後半品)  ミルガウスの使用シーンをイメージしたと思われる写真。取説小冊子の表紙だったこともある絵柄。 出典:ロレックス公式サイト ロレックスの歴史)

 

ミルガウス 歴史の概略

今から約70年前の1956年に誕生したロレックスの耐磁ウォッチ「ミルガウス」。途中20年ほど歴史が途絶えている時期もあります。まずは、その歴史を振り返ってみましょう。

1956年 初代ミルガウス(Ref.6541)誕生
1960年代前半頃 第2世代のミルガウス(Ref.1019)誕生
1980年代後半頃
 
生産終了に
 
2007年 ミルガウス復活 (グリーンガラスのRef.116400GV(黒)、クリアガラスのRef.116400(黒と白) の3種類で登場)
2014年 グリーンガラス Ref.116400GVに「Zブルー」ダイアルが追加
2015年頃 Ref.116400(クリアガラス) 黒が生産終了
2016年頃 Ref.116400(クリアガラス) 白が生産終了
2023年 Ref.116400GV(グリーンガラス)黒&Zブルーが生産終了に
 

非常にレアな初代と第2世代

初代ミルガウス Ref.6541第2世代ミルガウス Ref.1019 1979年頃品

(ミルガウスの初代モデル Ref.6541 出典:ROLEX公式インスタグラム   第2世代のミルガウス Ref.1019 シルバー文字盤 1979年頃品)

1956年に誕生した初代モデル Ref.6541は、37mmサイズのステンレスケースに、個性的な「稲妻型の秒針」や回転ベゼルを備えていました。製造されていた期間が数年間と短く、生産数も非常に少ないという、幻のオークション級モデルでした。(※後にポリッシュベゼルに変更された模様)

第2世代のモデル Ref.1019は、イナズマ針でない37mmサイズ。耐磁機能が一般向けではなかったためか、こちらも生産個数が少なかったモデルとなります。ただ、約30年のロングセラーであり、探すと出てくる可能性はあるヴィンテージ~セミヴィンテージ時代のモデルです。

購入するとしたら、3世代目であり最終モデルとなったRef.116400GVや、同世代のRef.116400が、現実的なところかと思います。復活したイナズマ針や新登場のグリーンガラス(116400GV)といった外観的にも特徴のあるモデルです。次項では、今買える可能性のある2世代目、3世代目モデルを表の形でひとまとめします。

 

第2、第3世代ををひとまとめ

  (第2世代) (第3世代)
  Ref.1019 シルバー
Ref.1019 黒
Ref.116400 黒
Ref.116400 白
Ref.116400GV 黒
Ref.116400GV Zブルー
モデル
型番
ミルガウス
Ref.1019
ミルガウス
Ref.116400
ミルガウス
Ref.116400GV
シルバー、黒 黒、白 黒、Zブルー
製造年 1960年代前半頃
~1980年代末頃
2007~2015頃(黒)
2007~2016頃(白)
2007~2023(黒)
2014~2023(Zブルー)
ケース径 37mm 40mm
厚さ 約14mm 約13.5mm
重さ 約107g
(ブレス約18mm)
約157g
(ブレス約19mm)
ムーブメント Cal.1580
(一部に耐磁のパーツを使用した専用ムーブメント)
Cal.3131
(一部に耐磁のパーツを使用した専用ムーブメント)
備考   イナズマ針 イナズマ針
グリーンガラス

3世代目モデルのRef.116400GV/116400ですが、ガラスやダイアル以外にも、インデックスの色などが違い、印象が少しずつ異なったりします。今だと「グリーンガラスならZブルー」、「クリアガラスなら白」文字盤が人気なのだそう。

今後、価格が上がるのか?商品担当のスタッフに聞いてみたところ「上がるもしれないが、人気モデルではないので期待しにくい。上がっても緩やかな動きでは?」との事でした。価格は「未来の人気やラインナップ」等に左右されるので、期待はほどほどに。がよさそうに思います。

 

使い勝手は?

女性スタッフ着用例(Ref.116400GV)Ref.116400GV/116400のブレスレット留め具

(女性ユーザーの着用例。他のロレックスにはない雰囲気が魅力だったそう。 ミルガウスのブレスレット留め具はスポーツモデルで見られる「ダブル」ロック式でなく「シングル」式だった。)

シンプルながら個性的なミルガウス。その使い勝手はどうだったのでしょう?当社スタッフに2人ほどRef.116400GV(黒)の元ユーザーがおり、その話をまとめてみると、「ケースが少し厚い」「少し重さを感じる」「ブレスレットのシングル金具が心細い」でも「外観は魅力的だった」といったところでした。

イナズマ針やグリーンガラスで、知られている割に、着用している人は意外と少ない「通な個性派モデル」なのかもしれません。(参考 過去ブログ「女性の私が、ミルガウスを3年使って分かった○と×」)

 

今後はどうなる?

ひとまずラインナップから消えたロレックスの耐磁モデル。今後、動きがあるとしたら、以下の3つぐらいが考えられそうです。
 

1、インナーケース式で、新型ムーブを搭載。耐磁ミルガウスとして復活

2、インナーケース式でなく、ムーブメント自体を耐磁化。新・耐磁ミルガウスとして復活

3、インナーケース式でなく、ムーブメント自体を耐磁化、定番モデルの一部を耐磁仕様に。(さらに、耐磁の目印としてグリーンガラスやイナズマ針を引用)

1は、従来同様のインナーケース式による耐磁構造で、ムーブメントを刷新するパターン。今回「生産終了」となったため、すぐに復活する可能性は低いかも。

2や3は、ムーブメントのパーツに非磁性素材や非鉄素材を使用するなどし、インナーケースなしで高耐磁を実現するパターン。オメガとチューダーが、「マスタークロノメーター」認定を取得した、高耐磁の時計をすでにリリースしています。

 
オメガ超耐磁モデルの例「シーマスター ダイバー300」とスピードマスター プロフェッショナルチューダー超耐磁モデルの例「ブラックベイ セラミック Ref.79210CNU」

(1、オメガ「シーマスター ダイバー300」(2018年~)人気の定番ダイバーズ、色違いもあり。  2、オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」(2021年~)名作手巻きモデルも遂に超高耐磁化  3、チューダー「ブラックベイ セラミック」(2021年~) さらに、2023年新作でブラックベイ41mmの赤ベゼルを高耐磁仕様に変更した)

【マスター クロノメーター(MASTER CHRONOMETER)】とは?
オメガとMETAS(スイス連邦計量・認定局)が、2015年に立ち上げた新しい認定規格。その要件の一つが「15,000ガウスの超高耐磁」です。オメガは、2010年代後半以降「マスター クロノメーター」認定をクリアした超高耐磁モデルを、シーマスターなどの各シリーズに広く展開しています。

ロレックスの弟ブランド「TUDOR(チューダー)」は、2021年に、マスタークロノメーター認定をクリアした超高耐磁モデル「ブラックベイ セラミック(Ref.79210CNU)」を発売、オメガ以外で初となる「マスター クロノメーター」取得モデルとして話題となりました。(参考 :オメガ公式サイト:マスタークロノメーター認定 チューダー公式サイト:METAS認定

 
復活するなら、2の路線でインナーケースを略した耐磁ムーブに、グリーンガラスやイナズマ針を備えたミルガウスが、「シースルーバック」で登場といった姿を見てみたいところです。はたしてどうでしょうか?

ちなみに、昨年2022年のロレックスは、11月に新作(ディープシー チャレンジ)をサプライス的に発表しており、今年2023年の秋も「なにか」出るのかも?しれません。(※参考 当社ブログ:突如発表された2022年新作「ディープシー チャレンジ Ref.126067」の件)

 

ミルガウスを継いだ時計、いつの日か

耐磁モデルの例:2023年の新作IWC「インヂュニア40」
耐磁モデルの例:ボールウォッチ 「マグニトーS」

(2023年の新作IWC「インヂュニア40」ジェラルド ジェンタの名作を踏襲した外観フォルムに、軟鉄製インナーケースを備えた耐磁モデルとして復活。 出典:IWC公式サイト   BALL Watch「マグニートーS」シースルーバック内側に「開閉式シャッター」を備えた80,000A/mの耐磁モデル。 出典:BALL Watch公式サイト

2023年の新作として、IWCの「インヂュニア」が軟鉄製インナーケースを備えた耐磁モデルとしてリニューアルしています。インヂュニアは、耐磁モデル→通常モデル→耐磁モデルという歴史を歩んでいて、耐磁を専門に打ち出したモデルというのは、なかなかニッチなものなのだろうと想像します。

ミルガウスの場合、耐磁という機能とともに、イナズマ針やグリーンガラスといった個性的な外観も魅力でした。またいつか、その個性を引き継いだロレックスを見れる日を期待したいところです。

 

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