W&W2023注目の一本 L.U.C 1860
2023-04-11 11:30
ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
スイス ジュネーブにて時計業界の一大イベントである「WATCHES AND WONDERS GENEVA」が開催され早二週間、総勢50近くのブランドが参加し、発表されるモデルも多岐に渡り、見るものの目を楽しませてくれています。
「WATCHES AND WONDERS GENEVA」から見えてくる腕時計のトレンドとしては、ドレスウォッチはよりカジュアルに、スポーティウォッチはより洗練され、所謂ラグスポと呼ばれるカテゴリーは拡大を続ける印象を受けました。また、ラグスポに関しては、比較的価格帯の低いブランドの参入が増えることで、広く一般に認知される段階に来たのではないでしょうか。
また、目新しさよりも実用面に重きを置いた製品も多く、往年のSLデザインかつ耐磁構造を現代に蘇らせたIWCのインヂュニア、ディープシーチャレンジから一転しRLXチタン採用の使えるロレックスのヨットマスター、シングルプッシュクロノグラフを搭載したエルメスのH08クロノグラフなど、魅力的な製品が数多くありますが、今回のブログでは個人的に一番気になったモデルとして、ショパールのL.U.C1860を取り上げてみたいと思います。
ショパール L.U.C 1860
ショパールの新作ではアルパインイーグルにL.U.Cムーブメントを搭載した薄型機も発表され話題となっていますが、話題の中心とするL.U.C1860は現在のL.U.Cウォッチの原点にして、今なお魅力の褪せないオリジナルモデルを現代に蘇らせた傑作と言えそうです。
新作として発表されたL.U.C1860のケースサイズは36.5mm、ラグの先端の断ち切られたような造形もオリジナルに忠実、一方でケースサイドは膨らみを抑えた現代的なフォルムに改められています。
ゴールド製のダイアルは昨今のトレンドでもあるサーモンカラーが採用され、ショパールのロゴは伝統的な筆記体、印象的な楔形インデックス、手作業で施されるギョーシェ彫りなどオリジナルを踏襲しています。
一方で、ギューシェ彫りの中心が時分針からロゴ位置に変更され、6時位置にあったカレンダーの廃止、ミニッツトラックの緻密にコントラストがはっきりしたことで、全体のバランスが一層美しく見直されたようです。
初代L.U.C1860
下の画像は1996年に完成した初代L.U.C1860、四半世紀経った現在でも全く色褪せることなく、独特の存在感を放っています。
搭載されるムーブメントは自動巻機として最高峰の呼び声高いCal.1.96、ラチェット式のマイクロローターを採用した設計に、当時としては珍しく香箱を2つ備えることで65時間ものロングパワーリーザブを実現しています。
そしてムーブメントの原型を手掛けたのはミッシェル・パルミジャーニ氏であり、これに触発され後年に自身のブランドを立ち上げたとも言われています。
L.U.C Cal.96.40-L
新作に搭載されるムーブメントもまた、Cal.1.96の直系に当たるCal.96.40-Lとなっており、マイクロローターならではの薄く審美性にも秀でた設計は、Cal.1.96同様にジュネーブシールを取得しています。
現在、L.U.Cムーブメントは大きく分けて3系統あり、1860にも搭載される超高級機を目指したCal.1.96系、実用性に重点を置いたセンターローターのCal.01系やCal.03系、最良の手巻ムーブメントと呼ばれるCal.06系がありますが、L.U.Cと言えばやはり印象的なのはCal.1.96系ではないでしょうか。
ルーセントスティールA223
新たな試みとしてケース素材にルーセントスティールA223が採用されている点があげられます。
環境問題に積極的に取り組むショパールが独自に開発したルーセントスティールA223は、70%のリサイクルスティールを含み、抗アレルギー性、耐摩耗性、優れた均質性を持つ結晶微細構造を持ち、見た目にも白く輝く美しさを備えています。
ゴールドに比べ加工の困難なスティールを、上級モデルや限定モデルに据えた商品構成はショパールに限らず、パテックフィリップなど一部のブランドで見られますが、ショパールに関しては象徴的なL.U.C1860の復活に際し、ルーセントスティールA223を持って、自社の環境へのアピール周知したい側面もあるのではないでしょうか。
また、スティールモデルと言えば2021年に発売されたL.U.Cジュビリー カリテフルリエが記憶に新しいですが、こちらは限定25本と極少量生産の記念モデルで今回のL.U.C1860とは少々異なりますが、いずれもスティールケースのハイエンドモデルという、あえての魅力を強く感じるモデルと言えます。
L.U.Cの今とこれから
今回の新作L.U.C1860の復活を持って、原点にして最高傑作の呼び声高いモデルをレギュラーに据えたショパールですが、L.U.Cムーブメント自体の生産数は年産4000個程と限られたもので、中でも1.96系のジュネーブシール取得ムーブメントとなると、従来は限定モデルやプラチナモデルなどの搭載にとどまっていました。
そのような状況を考えれば、今作はレギュラーモデルと言えども入手は相当に困難なモデルであることが予想され、俄然注目は高まるのではないでしょうか。
また、発表時点で3,267,000円(税込)という価格は、三針スティールモデルとしてはあまり見かけないプライスですが、奇しくも二次流通における初代1860が同水準の価格となっています。
仮に自分がL.U.C1860を手に出来るタイミングがあるならば、話題の新作スティールか、はたまた同じ予算で初代ゴールドが、そんな考えを巡らせながら記事を締めたいと思います。
今回も最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。
出典:chopard.com、fleurier-quality.com、gressive.jp、therakejapan.com