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「ロレックスの外装部品について」2019年10月15日

2019-10-15 11:00

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
台風も過ぎ、すっかり秋になりましたね。
秋はとっても短いので、みなさんそれぞれの秋を楽しんでくださいね。

さて、本日は前回の部品シリーズ第二弾、ロレックスの外装部品についてお話したいと思います。


Source: https://www.rolex.com/ja/about-rolex-watches/made-in-switzerland.html

はじめに

現在ロレックスでは、完璧な時計づくりを現実のものとするため、スイスの中に4つの施設を保有しています。ひとつは前回ブログでお伝えした、ビエンヌの部品工房。ここでは部品の製造から組み立てまで行っていましたね。

今回お話するロレックスの外装部品は、ジュネーブ南部に位置する”プラン・レ・ワット”という都市で開発と製造が行われており、この都市はパテック・ヴァシュロン・ピアジェなどの錚々たるブランドの本社が立ち並んでいます。

ロレックスというブランドはブランドロゴの王冠マークに相応しく、いつの時代も時計界を牽引するリーダーであり王様であることをこのブログでみなさまにお伝えできればと思います。

究極の一本をつくるために

ロレックス社は腕時計に必要な何百個もある部品の製造と組み立て、外装であるケースやブレスレットの組み立てやテストなどをすべて自社で行い、前回ブログでもお話したヒゲゼンマイ、腕時計の動力に欠かせない潤滑油の研究・開発、更にはゴールドまでも自社製造している垂直統合された時計製造会社です。

この体制は、1990年代に当時CEOだったパトリック・ハイニガー氏の指導の下、確立されたものです。それに伴い、主要なサプライヤーの買収や、現在までで400件以上もの特許の取得、様々な工程を行うため施設を4つに分けて、今では6,000人を超えるスタッフがロレックス社で働いています。

また、ジュネーブ東部に位置する”シェーン・ブール”で、文字盤の開発と製造を行い、ここに宝石の鑑定士を置いて、文字盤へのセッティングもしています。
そして、ジュネーブ中央部に位置する”アカシア”に本社を構え、ビエンヌ、プラン・レ・ワット、シェーン・ブールで製造された部品をアカシアの本社に集め、最終組み立てと品質管理を行っています。この本社では様々な研究と開発、アフターサービスも担っています。ひとつの妥協も許さず、究極の一本をつくるため、ロレックス社ではいろいろな人々が動いていたんですね。

ゴールドまでも自社製造

ロレックスの傑出している所は、ゴールドの鋳造(ちゅうぞう=溶解した金属を鋳型に注ぎ込み、所定の形のものを作る技術のこと)施設を持っており、形成・加工・研磨まで全て自社で行っている数少ないメゾンであるところです。

現在ロレックス社では、イエローゴールド、ホワイトゴールド、エバーローズゴールドの自社鋳造を行っており、特にロレックスが独自で開発し、特許を取得している”エバーローズゴールド”は時計界に大きな革命を起こしました。ロレックスは従来のピンクゴールドにプラチナを配合し、時を経ても変色し辛い素材を作ったのです。これに追随するように、他ブランドも新素材の研究と開発に傾注し、発表しています。

そして、施設内に設置された数箇所の研究室の一室、化学研究室では、なんと腕時計の動力に欠かせない”潤滑油”の研究・開発を行っています。組み立てる際に数種類の潤滑油を使うのですが、外装部品の素材だけでなく油までもこだわって作っているマニュファクチュールはロレックスだけでしょう。


Source: https://www.rolex.com/ja/about-rolex-watches/tested-to-extremes.html

過酷なテスト

プラン・レ・ワットの施設内にある一室に、 昼夜問わず慌しく動いている白いロボットがいます。(上写真右)人間の腕の形をした このロボットは、一定の間隔で時計をランダムな方向に動かし、人間が実際に腕に装着をした際の様々なシュミレーションを細かく繰り返し行っているのです。数年の人間の動きを、たったの一週間で終え、時計に対する影響を記録しています。

さらに、”ストレステストルーム”と名付けられた一室にもロボットがいて、ここでは落下やクラスプの開閉テストを繰り返し行っており、外装部品の耐久性を調べています。落下は26種類もの様々なテストがあり、最も厳格なテストはベリエテストと呼ばれ、まさかの5000G (Gとは重力の加速度のこと・・・ スカイダイビングで1G、世界最速のジェットコースターが5.5G、レッドブル・エアレースで10G 、リシャール・ミルのブログの時にお話しましたが、 リシャールのケースは200Gの耐衝撃を持ちます) もの衝撃を与えて様子を見るそうです・・・!クラスプに関しては、何万回もの開閉テストを行って、落下テストと共にどんな過酷な状況でも完璧に機能したもののみを、世に送り出しているのです。(上写真左)

極限までの検査

ロレックス社は、通常では直面しない過酷な試練を時計に与え、実際のあらゆる状況下でも正確に動くことを保証するための数々の厳格な検査を行っています。
先に述べたテスト以外に大切なのは防水テストで、同社では特に注力している所です。というのも、1926年に世界初の防水時計「オイスター」を発表し、翌年メルセデス・グライツという女性がロレックスを腕に着けて、ドーバー海峡を10時間以上もかけて渡ったという逸話はあまりにも有名ですよね。約100年前のお話ですが、長時間海に浸かっていたオイスターは、陸に上がっても何の問題もなく完璧に動いていたそうです。この女性のおかげで、ロレックスという名は瞬く間に世界中に広がり、100年後の今、更なる向上を求めて防水テストを行っていることは言うまでもありませんよね。

防水テストは、オイスターケースをひとつひとつ、保証された水圧の10%を、ダイバーズウォッチには25%も上回る水圧の機械に入れてテストを行います。3,900m防水のディープシーに関しては、特別設計の高圧タンクの中でひとつひとつ検査されます。このタンクテストでは、4,875mすなわち保証されている水圧の25%も上回る水圧をクリアしなければなりません。
4,875 mとは4.5t、1t=1,000kgですので4,500kgもの負荷に耐えるということです・・・!これらのことから、ロレックスは文字盤に表記されている防水よりも更に高い防水性を持っている、そしてそれほどの水圧に耐えれるということは、衝撃に強く頑強であるということ、まさにその名の通り、牡蠣=オイスターであるということですね。


Source: https://www.rolex.com/ja/about-rolex-watches/materials.html

素材について①

今までお話してきた通り、ロレックス社はどのような環境下でも問題なく使える究極の時計づくりをコンセプトとしているメゾンですので、ステンレスも並大抵のものではありません。同社が採用しているステンレスは904L(LはLOW CARBONのことで、低炭素という意味)というスチールで、全てのステンレスモデルにこの904Lを採用しています。他の高級ブランドでは316Lスチールが一般的で、近年904Lを採用したモデルを発表したブランドがありましたが、全モデルにというのは数ある時計ブランドの中で唯一ロレックスだけなんです。

316Lでも我々の身近にあるステンレスと比べて耐久性が高く、錆びにくい性質を持つ素材ですが、904Lはそれより更に耐蝕性に優れ、宇宙・航空・化学産業で使用されている”スーパーステンレス”なのです。→詳しくは他スタッフブログ「時計素材の基本(ステンレス編)/ロレックス「オイスタースチール」とは?」をご覧下さい。

素材について②

ロレックスのゴールドは1000分の750%であり、プラチナは950%、プラチナにはこれに” ルテニウム ”という素材を加えているのですが、ロジウムとの違いは、同じ白金族でありながら熱に強く、硬くて安定している素材だということです。ルテニウムを加えることで、ロジウムよりも更に耐蝕性や耐摩耗性も向上し、貴金属の世界ではハードプラチナと呼ばれています。ロレックスのプラチナモデルは、他のゴールドより柔らかいプラチナをロレックス仕様にするための研究の賜物なんですね。

また、ロレックスは2006年にセラミック製のベゼル”セラクロムベゼル”を開発、現在ではほとんどのスポーツモデルに採用されています。セラミックは耐傷性・耐熱性に優れており、2006年以前はアルミニウム製ベゼルだったため、傷が付きやすく紫外線によって褪色していましたが、その弱点を克服した上、何十年経ってもその艶を保つことができる秀逸な素材です。そして、同社ではセラミックに数字と目盛りを刻み、マグネトロンスパッタリング物理蒸着と呼ばれるPVD加工を施します。ゴールドまたはプラチナでコーティングをし、表面をダイヤモンドで研磨すると、溝にゴールドのみが残るというわけです。

ダイアルの種類

ロレックスには様々な種類のダイアル(文字盤)が存在します。広く採用されているのは”真鍮”で、これを基盤として様々な加工を施しています。真鍮とは銅と亜鉛の合金で、 色は黄色味を帯びていて錆びにくく加工が容易なため、古くから幅広い分野で用いられている素材です。

現行モデルには真鍮の他、ホワイト・ピンク・ブラックのマザーオブパール(真珠の母貝)、ターコイズ、マラカイト、メテオライトが採用されており、過去には他の天然石や木を用いた文字盤も存在しました。
色はここ数年でバリエーションが増え、鮮やかなブルーやオーベルジーヌ(下写真)という茄子色(紫)新色も発表されています。アワーマーカー(文字盤の数字)も種類が増えて、毎年の新作が楽しみです。

ブレスレットの種類

ロレックスには四種類のブレスレットがあります。ひとつは主にスポーツロレックスに採用されている”オイスターブレス”。仕上げはオールサテンとサテンと真ん中ポリッシュのコンビネーションブレスの二種類です。(下写真左上)
もうひとつは”ジュビリーブレス”で、主にデイトジャストに採用されています。仕上げは一種類で、サテンと真ん中ポリッシュのコンビネーションブレスです。
(下写真右上)
あとの二種類は金無垢モデルのみに採用されている、”プレジデントブレス”(下写真左下)と”パールマスターブレス”(下写真右下)です。プレジデントブレスの仕上げは一種類で、サテンと真ん中ポリッシュのコンビネーションブレス、パールマスターブレスはオールポリッシュ仕上げの一種類です。

また、デイトナとヨットマスターにのみ、ラバーブレスが存在します。さすがロレックス、普通のラバーは使わず”オイスターフレックス”というロレックス独自のラバーを2015年に発表。→詳しくは昔の私のブログ、「ロレックス初 “オイスターフレックス” ヨットマスター40 Ref.116655」をご覧下さい。


その他の外装部品

ロレックスのリューズは約10個のパーツで構成されており、二重になっているリューズを1950年代、三重になっているリューズを1970年代に開発・採用しています。これらは”トゥインロックリューズ”、”トリプロックリューズ”と呼ばれ、現在オイスターケースを持つモデルすべてにトゥインロックリューズが採用されており、100m防水が確保されています。トリプロックリューズは300m以上の防水を確保するためのリューズで、サブマリーナ・シードゥエラー・ディープシーに採用されています。

また、ガラスはサファイアクリスタルを採用しており、1953年にデイトジャストのために同社が開発し、特許を取得した拡大レンズ付きのガラスは”サイクロップレンズ”と呼ばれます。この名称はギリシャ神話に出てくる一つ目の巨人にちなんでおり、サイクロップレンズは一目でロレックスだとわかる特徴のひとつです。レンズには二重の無反射コーティングが施されており、視認性を高めています。
ロレックスの技術陣たちは、ユーザーがいかに使いやすく快適に着けれるよう、ディテールに至るまでこだわって時計づくりを行っていたんですね。

おわりに

二度に渡ってお伝えお伝えしてきたロレックスの部品のお話、いかがでしたでしょうか。
このブログを見て 、 リセールバリューだけでなく、 内装・外装も素晴らしい、ロレックスのよさを今一度感じていただければ幸いです。

みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

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