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時計素材の基本(ステンレス編)/ロレックス「オイスタースチール」とは?

2019-08-05 10:00

ブログをご覧の皆様こんにちは、エバンスの大貫です。
早速ですが、時計のお手入れはされてますでしょうか。 一生ものと言われる機械式時計も、お手入れ次第で寿命が短くなってしまいます。

ムーブメントに関しては、定期的なメンテナンスやオーバーホールを行っている方も多いと思いますが、外装面に関しても注目していただければと思います。

ということで、今回は時計には無くてはならない素材、【ステンレス】について調べてみました。

腕時計時計も含め、様々な用途に使用されているステンレス。腕時計に使用されるステンレスは錆びにくいものの、“錆びない”と思っておられる方も多く、お手入れを怠ると錆びてしまいます。特に夏が過ぎて、汗が時計に付着した状態が長期間続く場合、錆びや腐食の原因となりますので、ご注意ください。

ステンレスの特徴

ステンレス・スチール(ステンレス・スティール)と呼ばれる材質は、 1912年頃から広まり、幅広い分野で活用されてきました。 時計の素材としても最も利用されていますので、皆さんもよくご存知だと思いますが、そもそもステンレスがなぜ錆びにくいのか、また多くの種類がある事は、なかなか知られていません

Stain-less Steel(錆のない鋼)とは、鉄にクロムを加えた合金で、10.5%以上のクロムが含まれるもののことを言います。簡単には錆びず、ご存じのように、ステンレスはさまざまな用途に使用されています。

特徴でもある“錆びない”(錆びにくい)理由としては、素材に含まれるクロムが、空気中の酸素と結合し、鉄表面に耐食性のごく薄い膜「不動態皮膜」(100万分の1〜3mm程度)ができることで、錆びを防いでいます。膜は非常に薄く脆いのですが、周りに酸素があれば再生し、膜を形成します。湿度が高いところや水中、また汚れなどで酸素に触れない状態では錆びてしまいますので、あくまで“錆びにくい”素材となっています。

ステンレスの種類

一口にステンレスといっても、種類は様々。なんと200以上の種類があり、大きく5つに分類されます。

● オーステナイト系ステンレス・・・非磁性で加工性が高く、時計の外装に使われる。

● フェライト系ステンレス・・・磁性があり、耐性はオーステナイトとマルテンサイトの中間。スプーンなどの食器、台所用品として。

● マルテンサイト系ステンレス・・・耐食性に劣るが硬い材質。刃物や工具、ブレーキディスクなどに。

● 二相系ステンレス・・・オーステナイトとフェライトの混合。強度や腐食に優れ化学プラントに使用される。

● 析出硬化系ステンレス・・・高硬度と高い耐食性が特徴。非常に高価で航空機のエンジン付近の部品などに使用される。

時計に使用されるステンレス

一般的に時計に使用されるのは、オーステナイト系ステンレス鋼。加工性、溶接性、耐食性、コスト面などのバランスに優れています。

特にオーステナイト系は「非磁性」という性質がありますので、腕時計には最適な材質となっています。

また、加熱した後に急冷する「固溶化熱処理」という焼入れによって 靱性(破壊に対する抵抗性、粘り強さ)や、延性(破壊されず引き延ばされる性質)が向上し、引っ張りに対する強度が高い割りに、材質の伸びも高いという特性もあります。

そして、オーステナイト系ステンレスの中でも、さらに細かく分類されます

オーステナイト系ステンレス代表種

[SUS304]・・・耐食、研磨性に富み、比較的廉価であるが、切削性が極端に低い。 時計も含め、世界中のステンレス製品の約7割が、[304] と言われる。

[SUS316]・・・304へニッケル含有量を増やし、モリブデン添加する事で耐食性が向上。

[SUS316F]・・316に硫黄の含有量を増やすことで、切削性が向上。加工しやすい。

[SUS316L]・・カーボンを少なくすることで、腐食に強く、耐久性を向上。高級時計メーカーで使用。

[SUS904L]・・上記よりも耐食性、耐久性に優れるスーパーステンレス。

※[SUS]はステンレス鋼材を意味する材料記号で、”Steel Special Use Stainless”からきています。末尾の[L]は低炭素を表しています。

成分 カーボン クロム ニッケル 硫黄モリブデン
304 <0.08% 18~20% 8~11% <0.03%
316F <0.08% 16~18% 11~14% 0.10~0.15% 2~3%
316L <0.03% 16~18% 12~15% <0.03% 2~3%
904L <0.01% 19~23% 23~28% <0.035% 4~5% 1~2%

                   

ステンレス鋼に含まれる成分。主要添加元素の主要効果

C カーボン 鋼に元来含まれる元素。増やすと機械生産性は向上するが、耐食性が落ち、脆くなる。
Crクロム 耐食性をアップさせる。空気中の酸素と結合することで被膜を作り、錆びにくくする。
Niニッケル クロムによる塩酸、硫酸への弱体化を補う、またプレス成型性を高めるが、アレルギーを起こす源でもある。
S硫黄切削性を高める。複雑なケースを製作する際に利点を発揮するが、耐食性が下がってしまう。
Moモリブデン 添加することで耐食性や、素材の粘り強さが向上。コストが高い。
Cu大気中、海水中での耐食性、耐酸性を向上。ニッケルとともに添加すると効果がアップ。

時計業界では、パテック フィリップやパネライ、ブライトリングなどのハイブランドにおいて、耐食性や耐久性が高い、高級ステンレス[316L]が中心となっています。

公表していないブランドが数多くありますが、有名な時計ブランドでは、概ね[316Lステンレス]を採用していると思われます。

ロレックスのステンレス素材 【オイスタースチール】とは

ロレックスでは、使用するステンレスを「オイスタースチール」と呼んでいます。では、「オイスタースチール」とは、どのような素材でしょうか。

ロレックスのホームページに記載があります。

”ロレックスの時計は最も過酷な環境下でも機能し、その美しさを保つことが要求される。そのためロレックスは合金のオイスタースチールを使用する。オイスタースチールは904Lスチール系統に属し、耐蝕性に優れ、美しい輝きを放つ光沢仕上げを施すことができる。
904Lスチールは通常ハイテク産業や航空宇宙、化学産業で使用されている。貴金属に匹敵するほど耐蝕性に非常に優れているからである。ロレックスは904Lスチール製の時計部品のすべての製造を自社内で行っている。”

引用:ROLEX公式ホームページ 
https://www.rolex.com/ja/about-rolex-watches/materials.html

とあるように、ロレックスの「オイスタースチール」は、[904L]を使用していることがわかります。特にロレックスの独自素材というわけではありません。

904Lステンレスは、クロム、モリブデン、銅の成分が多く、腐食や酸、錆への耐性が高い材質で、主に航空宇宙、化学産業の分野で使用されています。硬度や経年耐性はもちろん、堅牢で研磨性が高く、貴金属のような美しい光沢も特徴のスーパーステンレス。非常に高価な素材で、加工コストなども高いため、使用する時計ブランドはロレックスくらいでしたが、近年はロレックス以外にも[904L]を使用するメーカーが増えてきています。

ロレックス以外の[904L]採用ブランド

まだまだ採用するブランドが少なく、ロレックスの様に全商品に使用するメーカーはありませんが、2018年頃から[904L]を使用する一部モデルが出てきましたので、ご紹介します。

【ジラール・ペルゴ/ロレアート クロノグラフ】

https://www.girard-perregaux.com/ja/laureato/laureato-chronograph-42-mm-81020-11-131-11a

出典:GIRARD-PERREGAUX公式ホームページ

【ボール・ウォッチ/オハイオ】

https://www.ballwatch.com/global/jp/collections/%E6%96%B0%E5%95%86%E5%93%81—34/%E3%82%AA%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%82%AA—nm9126c-s14j-sl—2450.html

出典:BALL Watch公式ホームページ

【NH WATCH / NH TYPE 1B】

NH TYPE 1B

出典:NH WATCH公式ホームページ

など、一部のモデルに使用されています。

[904L]は、1985年に時計メーカーとして初めてロレックスが採用。当時から高性能なステンレスに注目し、現在では、すべてのステンレス商品に[904L]を採用しています。

しかしながら、上記の様に高性能なステンレス素材に注目するメーカーも出てきましたので、個人的には今後、時計業界全体にも広がってくるのではないと思っています。良い素材で作られた時計は、末永く愛用できるので、非常に喜ばしい限りですが、価格の上昇などは気になるところです。

ゴールド素材に関しては、ブランドによって独自の製造・開発が進んでいますので、今後はステンレス系の独自素材が出てきてもおかしくありません。使用される素材自体の独自性も注目です。

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