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ラグジュアリースポーツウォッチ、いまとこれから。

2023-01-03 11:30

エバンスブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。

今回は2010年代後半から急速な人気の高まりをみせ話題を集めた、腕時計における一つのジャンルであるラグジュアリースポーツウォッチ、いわゆるラグスポの現在と、これからについて考察してみたいと思います。

ララグジュアリースポーツウォッチとは?

まずはじめにラグジュアリースポーツウォッチとは、そもそもどのような時計を指すのか、これについての定義は様々ですが、オーデマピゲが1972年に発表したロイヤルオークこそが元祖であり、そのスタイルに準じるものが現在では広くラグジュアリースポーツというカテゴリーで語られています。

従来の高級時計と言えば、ゴールドなど貴金属を用いた薄型時計が主流でしたが、当時のイタリア市場で流行の兆しを見せていたのがスチール製ブレスレットモデル、それに応えるべく生み出されたロイヤルオークはケースとブレスレットが一体となったスポーティなデザインを持ち、複雑に分割されたパーツには丁寧な面取りが施され、ドレスウォッチのように薄くスマートでありながら、スチールの持つ硬質な印象を強く押し出し立体感に富む造形を備えていました。

オーデマピゲ ロイヤルオーク Ref.5402ST

その新しいデザインはラグジュアリースポーツと言い得て妙、伝統的な高級時計には無い新しい価値を生み出すに至り、後年にはパテックフィリップのノーチラスやアクアノート、ヴァシュロンコンスタンタンからは222やオーヴァーシーズなどが発表されその世界は広がって行きましたが、当初は今ほど支持されることなくは無く、各々のブランドの顧客がカジュアルウォッチとして買い求める、そんな用途が主であったのではないでしょうか。

現在のようにラグスポの名で広く支持を集め、実際にユーザーがこれだけ増えたのはごく最近のことであり、その背景にあるものとは何であったのでしょうか。

ラグスポ人気飛躍の功罪

ロイヤルオークをはじめとしたラグジュアリースポーツと呼ばれるモデルの数々は、そのデザインや仕上げを見ても魅力ある製品ですが、多くの人々がそれを理解し欲しているかと問われればノー、と断言できる状況が長らく続きました。

理由としてはラグスポにあまり興味がない、資金的に購入が難しいといった、高級時計の認識がある層に加え、そもそもラグスポの存在自体を知らないと言った層が大半を占めていました。
しかし、その状況を一変させたのが、インスタグラムやツイッターなどSNSの発展であったのではないでしょうか。

SNSを通して著名人の持つアイテムを日常的に知ることができ、トレンドを具にチェックできる時代において、それら情報を知り得るハードルは相当に低く、流れ込む情報量は飛躍的に高まっており、当然のようにそこには高級時計に関するものも多く掲載されています。

契機1 暗号資産

また、2017年のビットコインをはじめとした暗号資産(仮想通貨)バブルを機に、ラグジュアリースポーツに新たな層の流入が見られました。
時計に興味関心を持っていなかった層が、新たな富の象徴として買い求める動きが加速し、ブランドやモデルによっては在庫不足が顕著になり始めました。

加えてファッションの分野においても、特にラグジュアリーブランドによるカジュアル化が進む中、ラグジュアリースポーツモデルはそれらとの相性もよく、積極的に選ばれる対象となりました。

契機2 COVID-19

その後、記憶に新しいところで言えば、現在でも影響が続く2019年のCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)を発端とした、世界的な金融緩和における現物への資金の流れ、その最適解の一つが高級時計であろう風潮が世間に広がり、前例の無い需要が巻き起こりました。

高級時計として定番かつ高い人気を誇っていたロレックスに加え、今回話題としているラグジュアリースポーツが多くの場合においてその対象とされました。

元来、高級時計は極めてニッチな存在であり、コングロマリッド傘下に多くのブランドが収まった現在においても、メディアへの露出の多さとは反対に驚くほど少ない生産数が常であり、加えてコロナ禍における生産体制の鈍化はさらなる在庫不足を招く事となりました。

コロナ禍における価格高騰から鎮静化まで

二次流通での価格高騰の初動はロレックス、そしてメジャーなパテックフィリップのノーチラスやオーデマピゲのロイヤルオークからはじまり、次いでヴァシュロンコンスタンタンのオーヴァーシーズへと連鎖的に見られました。

その様子はエキサイティングかつギャンブル性を含むことから、時計投資の名の下に多くの人々の注目を集めました。
また、短期で売却益を得られることもあり、活発な売買が高い流動性を生み出し、しばらくの間は時計価格は右肩上がりで成長を続けました。

そして2021年頃からは、ジラールペルゴのロレアートやショパールのアルパインイーグルと言った、一般的には知れ渡っていなかったモデルも次々に品不足となり価格高騰の波に飲まれていきました。

そんな最中、2022年1月にロシアによるウクライナ侵攻が始まると時計業界にも暗い影を落とし、さらには世界各国で行われた利上げの影響からか、価格を大きく伸ばしたラグジュアリースポーツは全体的に価格を下げに転じることとなりました。

大きな要因としては投機的に時計購入を行っていた層が抜け、価格の下支えを失ったことによるものですが、結果として価格高騰前の水準に戻るモデル、あるいは高騰前の水準を下回るモデルも現れ、閉塞感が漂う状況が見られました。

このようにラグジュアリースポーツを翻弄し、あるいはラグジュアリースポーツに翻弄された数年間はマイナス面も目立ちますが、一方で広く一般にラグジュアリースポーツの存在が知れわたり、興味を持ち実際に手にするユーザー数が格段に増加した点においては、大きなプラス要素であったと言えます。

また、この数年においてはミドルレンジのブランドがそれに準ずるモデル発表、ハイエンドブランドや小規模ブランドにおいてもラグジュアリースポーツに参入したりと、高級時計市場における大きな勢力へと成長を遂げていると言えるのではないでしょうか。

ラグスポの垣根は曖昧に

また、近年では各ブランドにおいてドレスウォッチの新たなスタイルを探る姿が多く見られるようになってきました。

ランゲ&ゾーネのオデュッセウスについては同社としては異例のスポーティな雰囲気を持ちながら、その姿は紛れもないランゲのスタイルを踏襲したモデルであり、オーデマピゲのCODE11.59バイオーデマピゲに関しては、同社のアーカイブを紐解き全く新規のスタイルとして昇華した傑作として高い支持を得ています。

いずれもがフォーマルだけに徹さない、多面的な用途に対応できる懐の深さ、これらは新しい時代のドレスウォッチのあり方のであり、その設計思想はどこかラグジュアリースポーツにも通じるのではないでしょうか。

ドレスウォッチとスポーツウォッチはラグスポへ集約するのか

今回の記事ではラグジュアリースポーツの魅力、そして歴史を辿ってきましたが、高級感とスポーティさ兼ね備えたその利便性の高さから、高級時計市場における存在感は一層高まることは予想に難くありません。

これについては時計に限ったことではなく、自動車業界においても従来のフォーマルなセダンではなく、スマートなSUVが多くのメーカーから生み出され、街の風景すら一変させたように、高級感とスポーティさの両立は現代におけるマストな要素として認識されているのではないでしょうか。

今後、さらなる広がりが期待できる、ラグジュアリースポーツウォッチの世界から目が離せそうにありません。

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