エバンスブログ

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ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス Ref.363.068」

2022-10-18 11:30

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本日はランゲ&ゾーネから、初入荷のオデュッセウスのご紹介です。

A.ランゲ&ゾーネとは

1845年、フェルディナンド・アドルフ・ランゲはドイツザクセンのグラスヒュッテに時計工房を設立しました。1868年には、息子であるリヒャルトが共同経営者となり、”アドルフ・ランゲと息子たち”これが「A.ランゲ&ゾーネ」のはじまりです。1939年の第二次世界大戦後、1948年のことですが、ランゲの工房は国有化されてしまい、メゾンの撤退を余儀なくされます。しかし1990年、A.ランゲの曾孫である”ウォルター・ランゲ”が、何度か私のブログでも登場した”ギュンター・ブリュームライン”(2020年の私の記事「日本限定25本”マスターリザーブドマルシェ”」で氏のことを詳しくお話しておりますので、お時間のございます時にお読みいただけると幸いです)と共に力を合わせて再興させたのです。

A.ランゲ&ゾーネというブランド名と、ランゲ・ウーレンGmbhという会社を商業登記し見事に復興を果たした同社は、1992年には最初の特許”アウトサイズデイト”(通常サイズの約三倍の日付表示窓の時計)を取得。そしてその二年後の1994年にA.ランゲ&ゾーネ復活後初のコレクションとして4型もの新作を発表します。「ランゲ1」・「サクソニア」・「アーケード」・「トゥールビヨン”プール・ル・メリット”」です。アウトサイズデイトは記念すべき新生ランゲの上記三モデルに採用されており、今となってはランゲ&ゾーネといえば思い浮かぶ欠かせない象徴なんです。

少し掘り下げますと、”アウトサイズデイト”はわずかなスペースに大きく表示する日付表示のことで、通常のデイト付き時計には”日板”という1~31までの一枚の丸いリング状の薄い板が組み込まれていて日付を表示するのですが、ランゲ&ゾーネのアウトサイズデイトは1~3の十字型プレートと、0~9の丸形プレートの二枚のプレート(板)で構成されています。丸形プレートは一日に一回、十字型プレートは十日に一回動き、30日と31日に二回だけ表示するための3の数字の複雑な動きも必要となります。一見シンプルな表示窓に見えますが、内部は大変緻密な計算され尽くした構造になっており、特筆すべきは通常モデルの日付の早送りにはリューズ操作が必要なのですが、この画期的な機構は更に驚くべきことにケースに取り付けられたボタンを押すだけで次の日に送ることができるのです。(上写真)

アウトサイズデイトは創業者A.ランゲの理念である、完璧な時計づくりの中の視認性の良さと簡単な操作が具現化された最大の偉業といっても過言ではありません。そして今回ご紹介するオデュッセウスにはなんと、曜日までも日付と同じサイズの大きな表示窓になっています。この機構は同社初の試みで、オデュッセウスのためだけに新しく開発されました。構造は通常のアウトサイズデイトと少し違い、0~9の大きな丸形プレートと小さな1~3の丸形プレートが隣接しており、MO~SUまでの曜日用の丸形プレートが離れて設置されている、三枚のプレートで構成されています。オデュッセウスは同社にとって、初、初尽くしの大変力を入れているモデルで、まだバリエーションは少ないのですが、これからが楽しみ過ぎる作品です。偉大なA.ランゲの息子たちがつくる作品は、これからも私たちを楽しませるたくさんのサプライズを与えてくれるのでしょうね。

オデュッセウスという名の由来

ギリシア最古の叙事詩人であるホメロス作、ギリシャ神話「オデュッセイア」の中の英雄の名前です。有名なのはトロイア戦争(トロイ・トロヤとも呼ばれる)の「トロイの木馬」ですが、これは策略家である知将「オデュッセウス」によって作られた大きな木馬で、この木馬の中に50人もの兵士を隠し言葉巧みに敵側の城内に侵入、戦争が終わったと思い込み、勝利の酒に酔いしれて眠りについていた敵の兵士達は、抵抗する間もなく全滅。オデュッセウスの見事な作戦に、現在でもこのエピソードはいろいろな例え話となって語り継がれています。

余談ですが、コンピューターウィルスのひとつとしてトロイの木馬と呼ばれているものがあります。これはフリーのバージョンアップ用のユーティリティソフトであると偽装をしてユーザーにクリックを促し、ダウンロードしてしまったが最後、個人データの消去・改ざん・流出をされてしまう大変恐ろしいプログラムなのです。この最悪マルウェアのことだけを知っている若い世代に伝えたいこと、それはトロイの木馬とは、ギリシャの英雄”オデュッセウス”の優れた作戦のことだということです。

この記事を書くに当たり、映画「トロイ」を観ました。ブラット・ピットが熱演した”アキレス”が中心の内容で、オデュッセウスはさほどクローズアップされてはいなかったのですが、ギリシャ神話の世界観に初めて触れて感動致しました。オデュッセウスの知略によるトロイの木馬は圧巻で、そこからの展開はとてもドキドキハラハラでした。ランゲ&ゾーネのオデュッセウスにご興味のある方には是非一度ご覧になって頂きたい映画です。

私調べによりますと、日本では薔薇(バラ)と日本酒と車にオデュッセウスの名にちなんだものが付けられています。(バラ…オデュッセイア/日本酒…Odysseia 2001/車…HONDA オデッセイ)そして海外では、オデュッセウスの名を含め、英雄オデュッセウスの貞淑な妻ペネロペや、神話に出てくる神々の名を付けられた人物がたくさんいます。ギリシャ神話は私達にいろいろなことを教えてくれる物語が多いので、機会を作って読んでみたいと思います。

本題のランゲ&ゾーネ社がこの英雄の名を選んだ理由、それは、先に述べた10年続いたトロイア戦争の後、オデュッセウスが故国であるイタケへの帰郷に至るまでの様々な困難な道のりを経て、10年もの冒険をするという試練や忍耐の物語を、時計開発の10年と重ねたからです。実際にオデュッセイアというギリシャ神話を読んでから”オデュッセウス”という名の腕時計を装着してみると、この力強さと大胆なフォルムに魅了されることでしょう。

オデュッセウスを見て

2019年、ラグジュアリースポーツウォッチ、いわゆる「ラグスポ」時計が大旋風を巻き起こしている時代に、ドレスウォッチづくりの代表格であるあのランゲが!?まさか!遂に!?と、オデュッセウスのステンレスモデルを初めて見た時、私は個人的に大変な衝撃を受けました。(同社初のケース一体型ステンレスブレスレットモデル・初のねじ込み式リューズ・初のアウトサイズ日付&曜日表示)

翌年には、今回ご紹介するホワイトゴールド製モデル、そして今年2022年には限定生産本数僅か250本のチタン製モデルが登場。実物を見たことのない私は、当初の衝撃も薄れて少しずつ興味が落ち着いていたのです。そしてこの度、正しく遂に、ようやく実物を手に取ることができた私は、初めてランゲ&ゾーネの”ツァイトヴェルク”に出逢った時のような高揚感を覚え、すぐに虜になってしまいました。

先に触れた”アウトサイズデイト”(曜日もなのでデイデイトと言ってもいいのでしょうか)が思ったよりも控えめで、針や刻みとのバランスが素晴らしく、何よりデザインだと見間違うほどケースと一体化している調整用のボタンが最初どこかわからなかった程です。ランゲが作るとラグスポすらランゲ、ラグスポ改めドレスポだという私の感想は、実際に手に取った人にじゃないとわからないと思います。そして何より裏蓋の大きく開いたガラスから覗くムーブメントが、本当の意味でのランゲを所有する醍醐味ですよね。ちなみに、ローターに刻印されている”DATOMATIC”とは、ドイツ語の日付(Datum)と自動巻き(Automatischer)を組み合わせた造語なのですが、それすらもカッコイイと思いませんか?(下写真)

ここ数年で様々なブランドがラグスポブームに乗って、ステンレスの防水時計を発表したのを見て来たのですが、やはりどのブランドも”あのモデル”に寄せて作ってるんですよね。しかしさすがランゲ。どこからどう見ても、何にも似ていない、見る度に、使う度に愛着の湧く唯一無二のランゲ&ゾーネ作品、それがオデュッセウスなのです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
本当に素晴らしい作品を扱うことができた感動で、個人的な主観が強い記事となってしまいました。

まだ三型(ステンレス・ホワイトゴールド・チタン)しか発表されておらず、これも同社初のアイスブルー文字盤のチタンモデルなんて、本当に幻の激レアモデルでもうどこにも見当たりませんが、今後新作を出してくれるのを待つばかりです。

もちろん、今回ご紹介したホワイトゴールドモデルも生産本数が極めて少なく、奇跡的な入荷ですので、この記事を読んで気になられた方は是非、お早めに見にいらっしゃって下さい。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

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