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宇宙飛行士に向けた腕時計。「BREITLING(ブライトリング) ナビタイマー コスモノート Ref.809」1960年代ヴィンテージ 2021年4月12日

2021-04-12 10:30

今回のエバンスブログは「BREITLING(ブライトリング) ナビタイマー コスモノート Ref.809」のユーズドウォッチをご紹介します。こちらは1962年に宇宙で初めて使われたクロノグラフ腕時計と同型の1本です。

 

今回の時計の概要

ブライトリング ナビタイマー コスモノート Ref.809
ブライトリング ナビタイマー コスモノート Ref.809

(今回の時計 ブライトリング ナビタイマー コスモノート Ref.809 ■インデックスが24まであり、時針が24時間で1周する ■後年の純正尾錠に新品カーフベルト、裏蓋は金属製)

こちらの「ブライトリング ナビタイマー コスモノート(COSMONAUTE) Ref.809」は、1960年代のアンティークウォッチ。パイロット向けに作られた「ナビタイマー」を元に、24時間で針が1周する仕様に変更された手巻きモデルです。

 

ベースとなった「ナビタイマー」

1950年代のナビタイマー Ref.806
2010年代後半のナビタイマー AB012012/BB01(AB0120)

(■1950年代の「ナビタイマー 1stモデル」(Ref.806) ■2010年代後半の「ナビタイマー01」AB012012/BB01 (AB0120) →ナビタイマー一覧へ

コスモノートのベースとなったのが「ナビタイマー(NAVITIMER)」。1952年※に初代が誕生したパイロット向けの腕時計です。1942年の初代「クロノマット」で採用された対数式計算尺を改良した「航空計算尺」を備えます。

回転ベゼルの内外の目盛の組み合わせで、速度、距離、燃料消費など、飛行に関する様々な計算が可能となっています。「プロフェッショナルのための計器」を極めた機能美から、現在でも安定した人気を誇るパイロットウォッチなのです。

(※市販は1956年から。市販される前はこの時計を公認ウォッチにした「国際パイロット協会(AOPA)」会員向けに販売。)

 

宇宙飛行士「スコット・カーペンター」

コスモノートの生みの親が「スコット・カーペンター」少佐。米海軍パイロットで、1958年から始まるNASA(アメリカ航空宇宙局)マーキュリー計画で7人の宇宙飛行士の1人でした。

NASAの訓練中、オーストラリアで航空計算尺を備えたナビタイマーに出会い、24時間で時針が1周すれば宇宙飛行士に最適と、ブライトリング社に手紙で依頼したのが、この時計でした。

これは、昼夜の分かりにくい宇宙空間で時間を把握しやすくする意味と、米軍出身で24時間表示に馴染んでいたという理由があったようです。

1962年5月24日、カーペンター少佐はコスモノートとともにオーロラ7号に乗り込みます。アメリカで2人目となる大気圏外の地球周回を実現、地球を3周し、約4時間56分の飛行を完了しました。アポロ11号が月に着陸する約7年前の出来事です。

着用していたコスモノートは、帰還時に水没、非防水のため損傷を受けました。時計は回収された後、カーペンター氏の元に戻ってくることはなかったといいます。

 

宇宙の時代と時計

1950年代から1960年代は、冷戦時代の旧ソビエト連合とアメリカ合衆国が、宇宙開発にしのぎを削った時代でした。ここでは今回の時計に関係が深い出来事を振り返ります。

1957年 ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」で地球周回
1958年7月 NASA(アメリカ航空宇宙局)が設立
1961年4月 ソ連が初の有人宇宙飛行、地球周回(ユーリイ・ガガーリン)
1962年2月 アメリカ初の有人宇宙飛行、地球周回(ジョン・グレン)
1962年5月 アメリカで2人目の有人宇宙飛行、地球周回(スコット・カーペンター)
1965年 OMEGA(オメガ) スピードマスターがNASAの装備品に選定
1969年7月 NASAのアポロ11号が月面に着陸(スピードマスターも)

NASA、宇宙、と言えば、オメガという印象がありますが、1960年代前半はオメガが公式時計として支給される前で、カーペンター氏本人のお気に入りだったブライトリングを使用したということのようです。

カーペンター氏の3か月前に、地球を周回したジョン・グレン氏は、ホイヤーの懐中型ストップウォッチを使用。1年前のソ連のガガーリン氏は、ソ連製シュトゥルマンスキー(STURMANSKIE)の3針腕時計を着用していたとか。

オメガが厳しいテストを乗り越え、NASA公式として選定された後も、私物として時計を持ち込んだ人はいて、宇宙を旅した腕時計はオメガ以外にも、ロレックス(GMTマスター Ref.1675)、セイコー、カシオなどが存在するようです。

 

コスモノートの歴史 (1962~2018)

2012年発表の記念限定モデル
2012年発表の記念限定モデル裏蓋

2012年発表の「コスモノート」記念限定モデル ■新たに開発した手巻きの自社ムーブ「キャリバー02」を搭載。日付表示付き ■裏蓋にはオーロラ・セブン号の刻印、限定番号入り)

ナビタイマーの24時間バージョンとして誕生した「コスモノート」。その誕生から生産終了までの概略を振り返ります。

1961年 24時間表示のナビタイマーを試作
1962年 カーペンター氏着用の「コスモノート」が完成し地球を周回飛行。市販モデル(Ref.809)が発売
1969年 「クロノマチック(Cal.11)」※を搭載した、右ボタンで左リューズ仕様の「自動巻き」コスモノート(Ref.1809)が誕生
(※ホイヤ-、ブライトリング、ビューレン・ハミルトン、デュボア・デプラが共同開発した世界最初期の「自動巻きクロノグラフ」ムーブメント)
1979年 ブライトリング売却
1985年頃 手巻きムーブメントのコスモノートが復活
2000年頃 手巻きモデルが生産終了
2001年頃 自動巻きバージョンが登場、日付表示が加わる
2001年頃 ジブリ美術館オープン記念「コスモノート ポルコ・ロッソ(紅の豚)」300本限定が発売
2012年 カーペンター氏の偉業から50周年を記念した限定手巻きモデルが登場、のちにレギュラー化
2018年頃 コスモノートが生産終了に

ちなみに、「コスモノート(COSMONAUTE)」はロシアの宇宙飛行士で、「アストロノート(ASTRONAUT)」がアメリカの宇宙飛行士のことだそう。完成した時計を見たカーペンター氏は、競っていても共に宇宙を目指す存在だからということで、その名前のまま着用したのだとか。

 

この時計について

ブライトリング ナビタイマー コスモノート Ref.809
ブライトリング ナビタイマー コスモノート Ref.809

(今回のコスモノートRef.809 ■2時間ごとのアラビア数字など、多くの表示が整然とまとまっているダイアル。回転ベゼルの操作感も良好。 ■ムーブメントはBREITLING銘が入ったヴィーナス社のCal.178)

今回の1本は、ダイアルが黒で、インダイアルがシルバーのもの。カーペンター氏が着用していたコスモノートは、ダイアルもインダイアルも黒でした。同年に発売された市販コスモノートも発売当初は黒/黒で、その後インダイアルがシルバーに変更されました。

文字盤12時位置のロゴマークは「ツインジェット」と呼ばれる二つの飛行機のマーク。その下に「BREITLING」「GENEVE」「COSMONAUTE」、6時位置インダイアル上に「NAVITIMER」の文字が入ります。14と10の数字下に「SWISS」「MADE T」と文字があり、元々の夜光はトリチウムだったようです。

ムーブメントは、ナビタイマーRef.806と同じく、今はなき「ヴィーナス(VENUS)」社による手巻きクロノグラフムーブメントの名機「Cal.178」が搭載されています。

製造番号(109XXXX)から、こちらは1960年代中頃の製造品と推定されます。

 

ストーリー性あふれる1本です

コスモノート 15時の場合
コスモノート 腕に乗せてみました

(■「もうすぐ15時」はこんな感じです。 ■「20時9分です」腕周り16.5cmのスタッフが腕に乗せてみました)

1960年代の「ナビタイマー コスモノート」、いかがだったでしょうか?

宇宙開発の黎明期に、一人の宇宙飛行士のために作られたという由来。スイス製のクロノグラフ付き腕時計として、世界初となる大気圏外の地球周回を果たしたという事実。カーペンター氏の、過酷で孤独な命がけのミッションを共にした相棒としての存在。そんなストーリー性が、このモデルをより魅力的に見せてくれる気がします。

ところで、24時間表示は1日の時間把握によさそうですが、見慣れない感じもします。そこは使用していると慣れてくるものでしょうか?

BREITLING(ブライトリング) ナビタイマー コスモノート Ref.809(ANTIQUE)

「BREITLING(ブライトリング) ナビタイマー コスモノート Ref.809(ANTIQUE)」
 (1960年代、手巻き、41mm径、プラスチック風防)

 

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