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「伝説の最高傑作 カルティエ“クラッシュ スケルトン”」2016年6月7日

2016-06-07 14:54

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こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
日中は日差しの強い日も増えましたので、みなさま日傘や帽子などで対策をなさってくださいね。

さて本日は、前回に引き続きカルティエからクラッシュ スケルトンのご紹介です。

カルティエは1847年フランスのパリで宝石商として創業、現在世界五大ジュエラーのひとつとしてその名を知らない人はいないほど、有名なブランドです。
腕時計については近年、芸能人などメディアの影響もあり、ジュエリーだけでなく腕時計をも憧れ対象とする人々が増えています。
1904年初出のサントスをはじめ、カルティエというブランドがこれまで様々な形の腕時計を提案してきたことは、実はあまり知られていません。
サントスの次に考案されたトノー。発表はサントスから僅か二年後の1906年のことです。
その後トーチュ、タンクサントレ、クロシュ、サンチュール、ベニュワールなど、次々に形にこだわった作品を発表、今回ご紹介するクラッシュが登場したのは1967年のことでした。

カルティエの本質、それは“ジュエラー”であること。
当時の時計といえば専ら懐中時計で、腕時計といえば女性用でした。
そこでカルティエは、おしゃれな女性やもちろん男性のために、腕時計は時刻を知るための道具ではなく
ひとつのアクセサリーとして考え、一般的な丸や四角の形だけでなく他にはない形にこだわりました。
それは、ジュエラーとして必然のことだったのです。
当時の腕時計は、ケースにラグを溶接するという製法が一般的でした。
ジュエラーであるカルティエのアイデアは、サントスを見てわかるようにケースとラグを一体化させ、
クラッシュのようについにはラグを廃するというところまで辿り着いたのです。

カルティエ最初の腕時計、サントスの特徴である角に丸みをもたせたケース、美しい曲線を描くラグ、小さなねじ(ビス)は現在の様々なモデルに取り入れられています。
今回ご紹介したクラッシュにも、スケルトナイズされた文字盤以外にもケース側面に小さなビスが採用されており、カルティエというブランドも私の今までお伝えしてきた老舗時計メーカーと同じく、初代時計師の技法を大切にし、伝統を重んじるブランドなのだと私は感じました。


60年代、この時代は“スウィンギング・ロンドン”と呼ばれ、イギリスの若者を発祥としてファッション、音楽や映画などで様々なものが大流行した時代でした。
例えばマリークワント、ミニスカート、ヴィダルサスーン、ビートルズ、007(ジェームズ・ボンド)などが代表で、当時の若者たちは自由と快楽を求め、アルコールや幻覚剤などを好みました。
そしてこの陶酔状態で音楽や美術などを製作したものをサイケデリック・アートと呼び、この時代に生まれたのがカルティエ・クラッシュなのです。
このモデルの登場は時計界に大変な衝撃を与え、現在では1960年代にあった自由と活気に溢れた精神を伝える「伝説の時計」と呼ばれています。
1967年、最初のクラッシュの製造本数は僅か12本でした。
そしてその後数回に渡り復刻を遂げましたが、完全限定生産のため今では幻の大変稀少なアイテムのひとつとなっています。

このフォルムから誰でも、サルバドール・ダリの有名な絵画 “記憶の固執 Melting Clock”(やわらかい時計・溶ける時計と呼ばれる)を思い浮かべますよね。
しかし実はこの時計にはひとつの逸話があるのです。
1960年代のある日のこと、とあるお客様より修理の依頼がありました。
現在は生産を終了しているベニュワールアロンジェというモデルです。
持ち込まれた時計にはその美しいボートのような形はどこにもなく、自動車の事故によりケースがクラッシュしてしまっていたのです。
その歪んでしまった時計を見た当時の経営者、ジャック・カルティエは、一目でそのフォルムを気に入り、そのままデザインとして腕時計にしたそうです。


現代に蘇った伝説時計クラッシュ。
当初も今も、真鍮の文字盤にケースに沿ったローマ数字が特徴のモデルです。
しかし2015年、またも世界をあっと驚かせる顔で登場しました。
それは表も裏もスケルトナイズされているだけでなく、よく目を凝らしてみると文字盤のくり抜かれている部分がⅠ~Ⅻのローマ数字の形となっているのです。
上の裏面の写真を見るとよくわかりますが、美しく魅せるために輪列の配置を変えたりと、細い所まで随所に工夫が凝らされています。
くり抜かれた部分は丁寧に面取りと研磨の仕上げが行われており、立体的に見える構造となっています。ケースサイズはオリジナルのものに比べやや大きくなっており、その大胆なフォルムが更に際立つ素晴らしい造形美、カルティエの意匠が籠められた最高傑作です。


こちらは顧客様よりの大切なご委託品です。
ご興味のある方は私までご連絡下さいませ。
大変稀少な一本、是非一度お手に取ってみていただきたいです。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

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