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2000年代、腕時計の転換点。一例としてのマスターコンプレッサークロノグラフ2

2020-12-29 11:00

エバンスブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。

今回、取り上げる時計はジャガールクルトの手掛けるスポーツウォッチであるマスターコンプレッサーから、マスターコンプレッサークロノグラフ2です。

マスターコンプレッサーと時代背景

現在では生産を終えたマスターコンプレッサーですが、マスターやレベルソといった伝統的なシリーズとは異なるアプローチで、同社の革新的な技術が具現化された2000年代を象徴するシリーズと言えます。

2000年代と言えば、高級時計マーケットがバブルの様相を呈していた時代であり、自社設計・製造のムーブメント開発が盛んに行われ、またトゥールビヨンに代表される複雑機構を前面に押し出し、内部構造を視覚化した魅せるデザインが花開きました。
見た目にも華やかなモデルの数々、高騰する価格とバランスの取り方、その良し悪しは玉石混在とも言えましたが、高級時計というある種の閉ざされた世界に、現在にも通じるラグジュアリーファッションの側面が持ち込まれた時代でした。

その様な時代にジャガールクルトの示した一つの答えが、ハイエンドのラボを頂点にダイビングモデルまで網羅した、マスタコンプレッサーシリーズの存在と言えます。

圧縮キーの有用性

2002年に生産が始まったマスターコンプレッサーの特徴は何と言っても、その大きく張り出したリューズやプッシュボタンにあります。
そして、リューズやボタンの外周には、防水性を確保する圧縮キーと呼ばれる特許を取得したコックが備えられ、それを180度あるいは90度回転させることで、リューズやボタンのロックを行う構造となっています。
コックの白いマーカー見える状態ではロックがされており、赤いマーカーが見える状態では解除されていることが容易に判断できるようになっています。

リューズやプッシュボタンの防水性を確保する手段として、多くの場合はねじ込み式の構造が採用されています。ねじ込み式のメリットとしては、簡易的でコンパクトな設計があげられますが、デメリットはリューズ、チューブのねじ山磨耗による防水性能の低下、またはねじ込み不足によるトラブルなどがあります。
一方で圧縮キーのメリットはコックを回すだけのシンプルな構造にあり、そこにはネジの噛み合わせも、力をかける必要も無いスムースな操作感があります。
デメリットは、そのリューズ外周を覆う大がかりな構造であると言えます。これは、マスターコンプレッサーというモデル、そして時代背景が許したデザインと言えそうですが、現在においては多くのモデルで採用するにはやや難しいデザインではないでしょうか。

ムーブメントと1000時間コントロールテスト

搭載されるムーブメントはCal.751です。
振動数28,800/時、パワーリザーブ65時間、垂直クラッチ付コラムホイール採用の自動巻きクロノグラフであり、ジャガールクルトの主力ムーブメントと言えます。
また、こちらのムーブメント、モデルに限った事ではないですが、ジャガールクルトの特徴として、1000時間コントロールテストと呼ばれる製品精度検定があげられます。

同社のウェブサイトには下記のような説明がされています。

ジャガー・ルクルトによる「1000時間コントロールテスト」

ジャガー・ルクルトは、品質と時計の最終テストに細心の注意を払っています。

1000時間コントロールテストは、ジャガー・ルクルト・コレクションの各モデルに対して行っている内部検査プログラムであるだけでなく、スイス公式クロノメーター検定を上回る条件で提供する内部製品検査でもあります。このプログラムには時計のケーシング前後のムーブメントの検査が含まれるほか、時計組立の全行程、および実際の着用時の諸条件に準じています。

「1000時間コントロールテスト」の表示、またはこれを記した時計の裏の刻印は、コレクションの各モデルがすべての認証検査に合格し、また、精度、温度・気圧変化への耐性、耐衝撃性、耐磁性、防水性など、すべての製品検査に合格したことを証明するものです。

https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/our-maison/our-1000-hour-control.html

腕時計の世界では高精度を証明する一つの基準として、スイス公式クロノメーター検定協会(C.O.S.C.)による検定がありますが、ジャガールクルトはそれを上回る条件の社内テストである1000時間コントロールテストを実施しています。

C.O.S.C.に関してはテストに要する時間が15日間であるのに対して、1000時間コントロールテストにおいては、その名の通り1000時間、即ち40日以上の時間をかけてテストが行なわれます。
またポイントとしては、C.O.S.C.が実機へケーシング前の状態でテストが行なわれるのに対して、1000時間コントロールテストはケーシング前、そしてケーシング後の状態でもテストが実施される点があげられます。
ムーブメント自体の検定であるクロノメーターに比べ、1000時間コントロールテストは、防水性能や耐衝撃性など、より実用域での時計本来の性能を証明するテストであると言えます。

以上、マスターコンプレッサークロノグラフ2が生み出された時代背景と、現在でも行なわれる1000時間コントロールテストについて、ご紹介してまいりました。
現在では、姿を消したマスターコンプレッサーシリーズですが、ジャガールクルトとしては稀有なスポーツウォッチであり、他ブランドでは見られない独自の機構とデザインは、今なお手に取る楽しさを感じさせてくれます。

商品詳細はこちらよりご覧頂けます
https://evance.co.jp/products/detail/15634

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