こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
今回はデイトナに引き続き、ステンレスのエクスプローラーⅠに絞り、徹底比較を行ってみたいと思います。
エクスプローラーIとは
1953年、その名の通り“探検家”の冒険のための腕時計として誕生したエクスプローラー。どのような状況でも瞬時に正確な時間を読み取ることができる、3,6,9のアラビア数字のみで構成されたシンプルな文字盤デザインの腕時計です。
色は黒のみ、誕生から67年経った今でもそのデザインは一つも変わることなく、進化し続けています。
1930年代よりロレックスの腕時計は様々な場所において探検家たちの腕に装着され、人類においての偉大な冒険に携わって来ました。 その中のひとつに、サー・エドモント・ヒラリーとテンジン・ノルゲイという偉大な探検家が、1953年に世界最高峰であるエベレストに初登頂したという記録があります。その時の彼らからや他の登山家たちからの情報を元に、ロレックス社はエクスプローラーという後世に残る偉大な作品を開発したそうです。
スポーツロレックスの入門モデルとして時計愛好家達から時計初心者に至るまで定評のあるモデル、それがエクスプローラーIなのです。
Ref.14270とは
第四世代のエクスプローラーⅠ 。1990年から2000年まで製造されていた、日本で一番普及していると言っても過言ではないモデルです。なぜかと言うと、1997年に放映されていた、俳優:木村拓哉さん主演の“ラブジェネレーション”で木村さんがドラマの中で着けていたために日本中が注目し、プレミアムが付きました。
現在、Ref.14270は最初期ロットのEとXにのみ、“ブラックアウト”と呼ばれるインデックスに夜光のない文字盤が、レアモデルとして注目を集めています。
前作Ref.1016との違いは、Cal.1560/Cal.1570からCal.3000へ変更になった点です。デイト付きのCal.3035をベースに、ノンデイトへと仕様変更をし、当時最先端の技術を用いて同社が製作した優秀なキャリバーです。このキャリバーはエアキング(Ref.14000)とサブマリーナノンデイト(Ref.14060)、オイスターパーペチュアル(Ref.14203)にも採用されており、心臓部分であるテンプを支えるブリッジが一本であることに変わりはありませんが、振動数を19,800から28,800振動へとハイビート化し、精度を安定させました。
他の大きな変更点はガラスがプラスチック風防からサファイアクリスタルに、1996年頃からバックルがシングルからダブルへ変更となった所です。また、1999年頃から夜光塗料がトリチウムからスーパールミノバへ変更され、これらのことから最初期生産の”ブラックアウト・シングルバックル・トリチウム”がプレミア価格となっているのです。
現在、最初期以外のRef.14270は、次世代のRef.114270と価格がほぼ変わらなくなって来ており、90年代に20万円代で販売されていたことから考えると、この30年で三倍になっています。いい個体はこれからもゆるやかに上がり続けていくことでしょう。
Ref.114270とは
第五世代にあたるエクスプローラーⅠ。製造は2001年から2010年までで、サイズがRef.14270と同じ36mmですし、パッと見の見た目がほぼ変わらないことから、昔から今も「Ref.14270とRef.114270、この二つの違いは何ですか?」とお客様より必ず尋ねられるモデルです。前作との大きな変更点は、Cal.3000から、Cal.3130へ変わった所です。この二つのキャリバーの違いは、心臓部分のテンプを片方で支えていたものを、両方のブリッジで支えるようになり、より耐久性を持たせ、精度の向上を図りました。
ゼンマイは平ヒゲゼンマイから巻上ヒゲゼンマイへ、マイクロステラスクリューからマイクロステラナットへ変更されました。ロレックスのテンプは、緩急針と呼ばれる精度を調整する針のない、フリースプラング・テンプを採用しており、マイクロステラスクリュー及びマイクロステラナットとは、時刻の遅れ進みを調整する部品のことです。
マイクロステラスクリューはテンプを構成する部品、テンワの外側に取付けられているその名の通り小さな星型のネジで、マイクロステラナットは同じく小さな星型のネジを、今度はテンワの内側に取付けました。これにより使う人への精度の安定性が得られるのと共に、修理をする際の技術者たちにとっても調整がし易いという夢のような機構を、ロレックス社は何十年も前に開発し、今現在では全てのモデルに採用しています。
もう一つの大きな変更点は、ブレスレットとケースを繋いでいる金具、フラッシュフィット部分です。前作(上写真左)は金具を曲げて作ったカバーのような形状でしたが、このモデルから、ステンレスの無垢をブレスレット先端に取り付けて繋ぐ(上写真右)、より堅牢性を持たせたものへ変更となりました。夜光塗料は前作までトリチウムとルミノバを採用していましたが、1999年頃からトリチウムが廃止になり、このモデルからはすべてルミノバの採用となりました。年々改良を積み重ね、いい物を作るというロレックス社の傑作のひとつ、それがRef.114270なのです。
Ref.214270とは
第六世代のエクスプローラーⅠ。2010年に、我々が予想もしなかった36mmから39mmへと3ミリものサイズアップで登場したモデルです。黒文字盤のみというのは変わらずですが、黒の色がRef.1016を彷彿とさせるマット調へと変更になり、2015年までの生産のRef.214270は、Ref.14270でご紹介した数字に夜光の入らない“ブラックアウト”仕様でした。(下写真左)
数が多く出回っているためすぐではないと思いますが、将来プレミアムになる可能性を秘めているモデルです。
2016年生産分より、数字にクロマライト夜光が入り、針も太く長くなり、より視認性が高まりました。(上写真右)Ref.114270との違いはもう一つあり、中空だったブレスレットがステンレス無垢を繋いだものになり、更に簡単に5mmの調整ができるようにバックル近くに“イージーリンク”という小さなコマが取り付けられました。
キャリバーはCal.3130からCal.3132へ変更となり、特筆すべきは時計の心臓部であるテンプを構成する部品”ヒゲゼンマイ”についてですが、耐磁性・耐衝撃性に優れ、温度の変化にも強い美しい青色をした「ブルーパラクロム・ヒゲゼンマイ」を採用したことです。この青色は美観を保つだけでなく、耐久性を向上させるために酸化皮膜を施したものです。
この素晴らしいヒゲゼンマイは現在では全てのモデルに採用されています。
Ref.214270が現在の最新であり、ロレックス社の渾身の一本と言えるでしょう。
今年、2020年にRef.214270生産終了の噂が根強くありましたが、やはりサブマリーナが先でした。もしかしたら近い将来、新作を発表し我々をあっと驚かせてくれるかもしれませんね。
Ref.14270・Ref.114270・Ref.214270 3モデルそれぞれのディテール
下写真、一番左のRef.14270ですが、当時のエアキングやデイトジャストと同じ仕様のケースで、鋭利な艶消しラグ、前述したカバー状のフラッシュフィットが特徴です。ラグ幅は上から約4~1.5ミリ、ラグ長さ約15ミリ、ベゼル幅約2.5ミリ、ブレスレット幅約19~15ミリ、ケース厚み約12ミリ、クラスプ厚み約0.5ミリという結果でした。
真ん中のRef.114270ですが、Ref.14270とケース、ブレスレットの仕様は同じですが、フラッシュフィットの形状が変更となりました。(4つ上の写真をご覧下さい)また、ラグ幅からクラスプ厚みまですべて上記のRef.14270と同じ結果でした。やはり見分けがつかないはずですよね。重さのみ、2グラムの差(Ref.14270・・・約103グラム、Ref.114270・・・約105グラム)があり、フラッシュフィット分の差ということですね。
一番右のRef.214270ですが、他二つより3mmの大幅サイズアップをし(36ミリから39ミリへ)ラグ幅は上から約5~2ミリ、ラグ長さ約17ミリ、ベゼル幅約3ミリ、ブレスレット幅約19~15ミリ、ケース厚み約12ミリ、クラスプ厚み約1ミリという結果でした。 ここでおもしろいのが、ブレスレット幅が前作、前々作と同じという所です。本体が3ミリもサイズアップしたのに、幅を変えなかったのは着けた時のバランスや重さを考えてのことでしょうね。さすがロレックスだと改めて感じたブログ記事となりました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は、ここ20年のエクスプローラーIをそれぞれ比較してみました。エクスプローラーⅠとは、ロレックスが好きな人は必ず一度は所有する、言わば万能モデルですね。
今回お話した三本は現在すべて在庫がございます。この記事を読んで気になられた方は是非、見比べにいらっしゃってください。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。