「ネオ・ヴィンテージ”ロイヤルオーク Ref.4100ST”」 2020年2月11日
2020-02-11 11:00
こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
まだまだ寒い日が続きますが、みなさまいかがお過ごしですか?
特に夜は冷えますので、あたたかいお召し物をお持ちくださいね。
さて、本日はオーデマピゲから「ロイヤルオーク三針・35mm ”Ref.4100ST”」のご紹介です。
はじめに
私はこれまで様々なブランドについてのブログを書いてきましたが、ご存知の通り、例えば ヴィアネイ・ハルターやパルミジャーニ・フルリエ、ロマン・ジェロームといったコアなブランドを特に好み、記事にしてきました。
オーデマピゲについてのブログは、これまたコアなミレネリーというモデルについて、背景や日本人時計師との関わりをお伝えしています。
今回は時計業界に携わる人間の一人として一度は語ってみたかった、オーデマピゲの王道モデルについて、お話してみたいと思います。
オーデマピゲとは
1875年のジュウ渓谷。オーデマピゲという唯一無二の卓越したメゾンのはじまりです。” ジュウ渓谷 ”・・・私のひとつ前のブログ、「日本限定25本”マスターリザーブドマルシェ”」でお話した大変美しい街でオーデマピゲは誕生しました。
(↑お時間のございます時に合わせてご覧いただけますと幸いです)
同社はジュウ渓谷を”複雑時計のゆりかご”と称し、澄んだ夜空、雄大な自然は今日も時計師たちに素晴らしいインスピレーションを与えてくれるそうです。
この世にふたつとない、他に並ぶものがない傑出したブランド、それがオーデマピゲなのです。
家族経営
今の時代、資本がないと生き残れないという現実にぶつかった時に、どんな企業でも大きなグループに属するというのが一般的な行動です。しかしこんな世の中で僅か一握りだけ、大きな傘の下に入らず確立しているブランドがあります。
それが、今回ご紹介するオーデマピゲであり、ロレックス、パテックフィリップもその内のひとつです。
オーデマピゲはジュウ渓谷のル・ブラッシュという小さな村で創業からどこにも移ることなく時計作りを続けています。
創業者であるジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲ。前回のルクルトブログでも述べた厳しい冬を楽しんで時計づくりに励んでいた一員で、彼らが優秀であったことは言うまでもありません。現在四代目の取締役会長”ジャスミン・オーデマ”率いる稀有なメゾンは、今も誇りを持って経営に臨んでいます。
ロイヤルオークの誕生①
1972年、世界初のラグジュアリーブランドが手掛けたステンレススポーツウォッチとして発表されたロイヤルオークは、時計業界をあっと驚かせました。(上写真)なぜかというと、皆が正統派だとばかり思っていたオーデマピゲから、まさかこんな型破りなモデルが出るとは思ってもいなかったからです。それまでオーデマピゲのお家芸といえば薄型ドレスウォッチで、宝石をたくさん使った宝飾時計や、金をふんだんに使った贅沢な時計しか作ってなかったのにです。
そのため当時の時計愛好家達や評論家達は批判的で、当初世の中に全く受け入れられなかったそうです。
しかし今やメゾンの顔(アイコン)、何年待っても特に三針は手に入らない状況となっているほど、世界中の時計愛好家で”ロイヤルオーク”を知らない人はいません。
誕生から50年近く経った今、この偉大な先駆者に続こうと、ここ数年で様々な大きなメゾンがこぞって高額なステンレススポーツウォッチを発表しています。
前衛的で統率力に優れ、先見の明を持つブランド、オーデマピゲ。
世界三大時計のひとつとして、これからも君臨し続けることでしょう。
ロイヤルオークの誕生②
先に述べたように、発表当時世の中に受け入れられなかった理由として、あまりにも前衛的デザインだったことが上げられます。カクカクしたフォルム、ベゼルと裏蓋を留めている16個ものネジ、ラグを取っ払ったケース、我々の今までの腕時計という形の概念を見事に覆したデザインは、あまりにも見慣れなさ過ぎて受け入れ難かったのではないでしょうか。
しかし、奇抜なデザインのディテールをよくよく観察してみると、美しいヘアライン仕上げのケースとブレスレット、ネジはヘアラインとのコントラストを程よく感じられるポリッシュ仕上げ、 均一な四角で構成される”タペストリー”文字盤、文字盤の上はドレス感を纏った細いインデックス。当時世界最薄だった自動巻きキャリバーに、ケース一体型ブレスレットはエレガントそのもの、オーデマピゲという高級ブランドを見事に表現した、素晴らしいデザイン、そのデザイナーとは。(次のチャプターへ続く)
ジェラルド・ジェンタ
私も大好きな、”ジェラルド・ジェンタ”氏です!彼のおかげで、時計業界に「ラグジュアリースポーツ」という新たなジャンルができたと言っても過言ではありません。少しジェンタ氏のお話をしますね。
ジェラルド・ジェンタは1950年代からデザイナーとして時計業界に入ります。氏の一番最初の作品はオメガのコンステレーション、”Cライン”でした。おそらく80年代に大人気を博した”シーマスター・ポラリス”といえば御存知の方も多いでしょう。このベゼルを薄く、または廃すという手法を当時のジェンタは得意とし、他のブランドも次々に似たモデルを製作し始めたのです。
その後、オーデマピゲのロイヤルオークで成功を収めた同氏は、セイコー、パテック、ブルガリ、IWCなど、様々なブランドからデザインを求められるようになります。
私は今回のブログを書いていて、ジェラルド・ジェンタはまるでピカソやサルバドール・ダリのように、時計愛好家たちによって代々語り継がれていく芸術家のようだと感じました。氏はこのロイヤルオークが認められたから、私の名前が世に知られるようになった、パテックのノーチラスやIWCインヂュニアは最初、私の作品だとは言えなかったんだと語っています。
ジェラルド・ジェンタという人物は、謙虚で熱心な時計師で、繊細な真の芸術家だったんですね。
ロイヤルオーク・35mm
初代ロイヤルオークはRef.5402ST、(上から三枚目の写真)直径39mmの通称”ジャンボ”と呼ばれるモデルです。
現在では500~800万円程のプレミアが付いており、価格の差はロレックスと同じく経年による文字盤色の変化「トロピカルダイヤル」に大変な金額が付いています。
そして今回ご紹介するのは、少し後(GRTに日付の記載がないのですが、76~79年頃の個体と思われます)に登場した直径35mmのミドルサイズ、Ref.4100STです!実は初代Ref.5402STとこのRef.4100STのみが4桁で、以降は全て5桁です。
そしてなんと、35mmケースはこのRef.4100STのみなんです。確認できたのは、最小が29mm、次に33mm(これらはクォーツと自動巻きが存在し、レディースモデルとして提案しています)36・37・38・39・41mm、最大が44mmです。
このことから、35mmケースがどれだけ稀少かお解かりいただけますよね。男性にはもちろん、女性へもおすすめしたいサイズです。
文字盤の色味とキャリバー
三枚目の写真を見てわかるように、当時もっとブルーの色味が鮮やかだったはずですが、今回ご紹介するRef.4100STは経年によりブラックに近いダークブルーにチェンジしており、高級感が増しています。そして、インデックス周りをよく見ると、数ヶ所少しトロピカルに近い色味が見えます。もしかすると、ここから・・・もしかするかもしれませんよ。。。
また、2016年にメーカーへオーバーホールを依頼した際、キャリバーがCal.2123から新型Cal.2325へ変更となっています。この二つの違いはテンプで、緩急針のあるものからないもの(フリースプラング)への変更、両方向巻上から片方向巻上ローターへの変更です。新型のキャリバーは、精度を高めるための改良版で、近年にメーカーへ出した場合、使い手の為にメーカーの配慮でほぼ新型へ変更となるそうです。新型・旧型共に、”ジャガールクルト”キャリバーをベースにした信頼性の高いムーブメントです。
ロイヤルオークとは
「世界初の豪華なスチール ウォッチ」というキャッチコピーで1972年に登場し、50年近く経ってもなお、我々を魅了してやまない時計であることに変わりないモデルって一体どのくらい存在するでしょうか。付属の80年代のカタログによると、「この傑作こそ、スチールの価値を貴金属の価値にまで高め、その独創的デザインは世界中の注目の的となりました」とあります。世界で初めて、ステンレス・スチールに価値を付けたブランドなんですよ、オーデマピゲは。
ロイヤルオークの名は、英国王チャールズⅡ世が反乱軍から逃れるため、大きな樫(オーク)の木の中に身を隠したことに由来します。故に貴重な生命の庇護の象徴とされており、イギリス海軍の軍艦にも名付けられたほどです。オーデマピゲ社では、同社の大切なムーブメントを護る最適な名を検討し、この誇りある歴史的な名称を冠しました。ロイヤルオークはオーデマピゲの最高傑作であることは、言うまでもありませんね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。まだまだ語り尽くせないオーデマピゲ・ロイヤルオークの魅力。特に”ネオ・ヴィンテージ”と呼ばれる4桁のロイヤルオークは確実に今後期待できると思います。
こちらは、私の大切な顧客様から御委託いただいた時計で、今を逃すともう二度と手に入らないかもしれません。
現在、日本にはどこにも在庫がなく、海外で数本発見しましたが、時計のみでした。箱・保証書・80年代の貴重なカタログが数点・保証書カバーまで付いた完品はここエバンスにしかありません。(※内箱の時計ホルダーのみ付属なしです)
このブログをご覧になって少しでも気になられた方はまずは私、稲田までお問合せ下さい。
現行のロイヤルオークを諦めた方、他の人が持っていないモデルを求めている方、是非お早めにお越し下さい。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。