マークXXから見る腕時計の最適解
2024-08-06 11:30
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今回はIWCの象徴するシリーズであるパイロットウォッチから「マークXX」をご紹介いたします。
マークXXとは
まず初めにモデル名に冠される「マーク」についてですが、これは伝統的にIWCのパイロットウォッチに採用される名称であり、その起源は1936年のスペシャルパイロットウォッチ、通称マーク9にまで遡りますが、正式にナンバリングされたモデルは1948年のマーク11からとなります。
マーク11については英国王立空軍(RAF)の「Mk.11」計画によって、冷戦下に開発されたモデルでしたが、1970年後半から1986年にかけては市販も行われ、その極めて視認性に優れたダイアルデザインや、磁気からムーブメント保護するために軟鉄製インナーケースで包み込む構造など、今日のパイロットウォッチに続く礎となったモデルと言えます。
マーク11以降は、XII(12)、XV(15)、XVI(16)、XVII(17)、XVIII(18)と続き、2024年現在の最新モデルがマークXX(20)となります。
また、マーク11のみアラビア数字の11を採用している点はRAFがローマ数字の使用を禁止していた事に由来します。
普遍的な魅力
道具として完成されたものには、機能が形状として如実に表れた製品が少なくなく、腕時計の世界においてもそれは当てはまります。
代表的な例を挙げるならば、ロレックスのエクスプローラーやオメガのスピードマスター、ドレスウォッチにおいては96系のケースを持つパテックフィリップのカラトラバなどがありますが、何れもが余計な装飾は排した機能美を備えています。
IWCのパイロットウォッチもまた、戦闘機内という過酷な状況下で真価を発揮すべく生み出されたモデルですが、現在においてもタフな機能を損なうことなく、IWCが高級時計市場でパイロットウォッチを販売していく上で、ユーザーに迎合されるべく 、細部における作り込みを磨き上げた製品作りに徹しています。
細部に宿るこだわり
それでは具体的にパイロットウォッチ マークXXの魅力や、そのこだわりに迫ってみたいと思います。
マークXXで採用されるデザインは前作マークXVIIIを踏襲したものであり、外装面における変更点は僅かですが、その印象を洗練されたものへと一変させました。
まず初めに気が付く個所としてはカレンダーディスクの変更があげられます。
マークXVIIIにおいては黒だったカレンダーディスク、マークXXでは白へと変更になり、9時のインデックスと対になるよう、座りの良い左右対称の雰囲気をダイアルに与えました。
また、白いカレンダーディスクはマークXV以前の様な少し粗野なイメージ、言うなればダイアルとの色合わせを積極的に行っていなかった1990年代以前の印象を受けますが、しかしそこに汎用的なパーツの共通化によるコスト削減といった印象はあまりなく、あえての白ディスク採用、より洗練されたミリタリーらしさを表現しているかの様です。
加えて、アラビア数字のインデックスがやや内側へ、12時・3時・6時・9時のバーインデックスが細くスッキリと、時分針の縁取りがマットブラックから、ロジウムメッキ仕様とする事で、同じサイズでありながら伸びやかな印象を与え
ダイアルのベースは視認性に優れたマットな仕上げは、インデックスの印字はより立体感が強調され艶有る仕上げ、カレンダーの窓枠には前作マーク18同様に一段落とした額縁仕様とし、細部におけるこだわりを感じる事が出来ます。
汎用性の高さ、時計選びにおける一つの最適解
マークXXは直径40mm、厚さは10.8mmに抑えられケースサイズは、直径こそマーク18と同サイズですが、ラグからラグの全長は2mmほど短縮され高いフィット感が得られる設計とされ、また耐磁機能に加え10気圧防水と日常遣いには十分な防水性能が確保されています。
また搭載されるムーブメントはCal.32111、パワーリザーブは120時間と長時間駆動を可能とし、この点に関してもマークXVIIIから大きく進化しました。
ミリタリーウォッチを起源に持ちながらも、今日のIWCが手掛けるマークXXは、上記でも触れましたが高級時計たる仕上げや雰囲気を纏いながらも、華美さとは距離をおいた作りが魅力となります。
様々なブランドがパイロットウォッチを手掛けていますが、歴史的背景、価格に見合う内容、そして完成度の高さで群を抜いた存在であるマークXXは、まさに積極的に選びたい一本であり、時計選びの最適解の一つと言えるでしょう。