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腕時計の「世界初」を探る ~腕時計、自動巻き、自動巻きクロノ、ダイバーズ~ 2023年9月25日

2023-09-25 11:00

今回のエバンスブログは、腕時計における「世界初」について。世界初の自動巻きクロノグラフは1960年代後半、ダイバーズウォッチは1950年代前半の誕生だったような…。うろ覚えの記憶を整理しようと、腕時計の「世界初」を調べてみました。

 

1、世界初の腕時計はカルティエ?

1904年に誕生したカルティエのサントス現行のサントス

(■1904年のサントス :出典) カルティエ公式サイト  ■現行のサントス ドゥ カルティエ 3針WSSA0018とクロノグラフWSSA0017)

 

20世紀初頭の1904年に誕生した「世界初の実用的な腕時計」が「サントス」。3代目となるルイ・カルティエが友人のブラジル人飛行家 アルベルト・サントス=デュモンのために、飛行中に腕に着用できる時計として製作したものです。

実は、その100年ほど前、1810年にはブレゲで、ナポリ王妃からブレスレットタイプの時計の注文を受けた記録があるのだとか。19世紀には高貴な女性達の間で、小さい時計を付けた装身具をオーダーすることが流行だったそう。男性向けでも、19世紀後半に懐中時計を元にベルトを付けた腕時計は存在したとか。

サントスが腕時計の元祖と言われるのは、最初から腕時計としてデザインされたこと、後に一般向けに量産されたことが、大きな要因のようです。現代の腕時計の基本形として大きな存在感があるといったところでしょう。

 

2、世界初の自動巻き腕時計はロレックス?

ロレックスパーペチュアルムーブメント現行のキャリバー3235

(■360度回転のローターを備えたパーペチュアルムーブメント。この頃の巻き上げは片方向で、1950年代に両方向巻き上げとなる :出典) ロレックス公式サイト  ■現行のCal.3235ムーブメント。サブマリーナ デイトなどに搭載)

 

ロレックスの “三大発明” の一つとしても知られる「パーペチュアル」機構。1931年に誕生した、半円形のローターの回転でゼンマイを巻き上げる機構を持った自動巻きムーブメントのことです。ただ、それ以前にも自動巻きムーブメントの腕時計は存在します。

腕時計における自動巻きの基本構造を発明したのはイギリス人技術者「ジョン・ハーウッド」という人で、1923年のこと。1926年にスイスのフォルティス社と共同開発で世界初の自動巻き腕時計を完成させたとか。

ロレックスが革命的だったのは、360度の全回転式ローターを開発したこと。それまでは半回転のバンパー式だったため、巻き上げ効率が大きく上がったといいます。「全回転式」ローターはのちの自動巻きのスタンダードになる程の大きな発明だったのです。

 

3、世界初の自動巻きクロノはホイヤー?

ホイヤー キャリバー11クロノマティックの図解ゼニス公認ヴィンテージ エル・プリメロを搭載した1969年の時計

(■ホイヤー キャリバー11(クロノマティック)の図解 :出典) タグ・ホイヤー公式サイト  ■ゼニス公認ヴィンテージ「ZENITH ICONS」から1969年の”G581″。ムーブメントはエル・プリメロ(3019 PHC)] :出典) ゼニス公式サイト

 

世界初の自動巻きクロノグラフ腕時計というと、1969年3月に左リューズの複数モデルが大々的に発表されたという、ホイヤーやブライトリング等の「クロノマチック(キャリバー11) 」ムーブメントを搭載した時計を思い出される方も多いと思います。(※ホイヤー・レオニダス、ブライトリング、ハミルトン-ビューレン、デュボア・デプラの4社による共同開発)

かたや、ゼニスによる「ハイビート」で一体設計の自動巻きクロノグラフムーブメントの「エル・プリメロ 」も、同じ年1969年1月に新聞で発表されていたとか。(※エル・プリメロはゼニス、モバードの共同開発。36,000振動/時(10振動/秒)の高振動を実現(通常は21,600~28,800振動/時) 。1/10秒単位での計測を可能とし、安定した精度を確保するという。)

一方、日本のセイコーも1969年6月には、「垂直クラッチとコラムホイール」を採用した世界初の自動巻きクロノグラフウォッチを発売していたとか。同じ1969年に、3つのグループの発表が集中したというのは驚きです。(※垂直クラッチは針飛びを起こしにくい切り替え機構、コラムホイールは操作感が良く高級機に使われることが多い制御機構)

 

4・世界初のダイバーズはブランパン?

ブランパン フィフティファゾムス初期モデルと思われる1本ロレックス世界初の防水腕時計 オイスター(1926年)

(■ブランパン フィフティファゾムス初期モデルと思われる1本 :出典) ブランパン公式サイト[70周年記念ぺージ]   ■ロレックス 世界初の防水腕時計 “オイスター”(1926年)。翌1927年に女性スイマーのメルセデス・グライツがオイスターを着用し、イギリス海峡を約10時間泳いで渡ったという逸話も存在 :出典) ロレックス公式サイト

 

先日(2023年9月)発売されたスウォッチ新作コラボの着想元となったのが、ブランパンの「フィフティ ファゾムス」。1953年に発表された「世界初の現代的なダイバーズウォッチ」です。潜水時間を正しく水中で計れるロック機能のある回転ベゼルを備えていました。また、ロレックスのサブマリーナも1953年の誕生で、1953年はダイバーズ元年と言えそうです。(※のちに逆回転防止ベゼルに変更)

と、思っていたのですが、防水時計を遡ってみると、パネライがイタリア海軍特殊潜水部隊向けに「世界初のプロフェッショナル ダイバーズウォッチ」を作ったのが1936年。さらに遡ると、オメガが1932年に「商業化された世界初のダイバーズウォッチ」という角型の”マリーン”を発表。さらに、ロレックスからは密閉性の高い「オイスター」ケースを備えた「世界初の防水腕時計」が1926年に誕生していたりします。

1920~30年代にロレックス、オメガ、パネライなどで防水性の高い時計が登場、軍用向け等で改良が重ねられ、本格的なダイバーズウォッチの原型は1950年代のブランパンやロレックス サブマリーナの頃に出来上がったと言えそうです。

 

「世界初」も歴史の節目

腕時計の「世界初」、4つほど紹介しましたがいかがだったでしょうか?

ところで、1969年に各社から発表された自動巻きクロノグラフ腕時計で、「世界初」は結局どこだったのでしょう?発表はゼニスが早く、発売されたのはセイコーが早かったようなのですが、実は、1940年代後半にレオニダス社が世界初の試作モデルを完成させていた(その後開発は中断)という話もあったりします。

発表、発売、試作…など、「○○において世界初」と、世界初が一つでないというのも面白いところです。そんな様々な世界初が、続いていく歴史の節目を作っているとも言えそうです。

 

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