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グランドセイコー「御神渡り(おみわたり)」

2023-09-05 11:30

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本日はグランドセイコー(GS)から「エレガンスコレクション”御神渡り”」のご紹介です。

GSエレガンスコレクションとは

グランドセイコーの「エレガンスコレクション」は、日本の美意識と洗練されたデザインを融合することによって、そのことを表現するコレクションです。

どのような場所、時間帯であっても、その腕時計はどこからでも美しく光を受けて、繊細な煌めきをまといながら、腕時計をつける人に自信と余裕を与えてくれる。優れた実用性を備えながら、人生の中の特別なシーンで装いのアクセントとなり、美しさを演出するモデルを展開するのが、エレガンスコレクションのコンセプトです。

今回ご紹介する「御神渡り(おみわたり)」文字盤の他に製作している独創的な文字盤は、日本の季節の移ろいを表現した「花筏(はないかだ)」文字盤(春、風に舞い散った桜の花びらが川の水面を覆う様子を表した文字盤)、「季春(きしゅん)」文字盤(初夏の若葉や、青葉の香りを含んだ穏やかな風を彷彿する爽やかな色味。繊細で有機的な型打ち模様を施した文字盤)、「白南風(しらはえ)」文字盤(梅雨明けに吹く爽やかな風によって起こる”さざ波”をイメージした文字盤) 、「雪晴れ」文字盤(雪が止み、染み入るような静けさと寒さの中で輝く”夕日”をイメージした文字盤。信州を覆う雪の質感を文字盤で表し、優しく輝くGMT針の色で夕日を表している)、中でも有名なのが「雪白(ゆきしろ)」文字盤(風紋の刻まれた雪のような独特な模様は、信州の山々に積もった雪をイメージしたもの。まるで”和紙”のような質感の文字盤は、日本だけでなく世界中で人気を博している)などです。

ムーブメントは信州「時の匠」工房で作られているCal.9R31。ひとつの香箱の中にふたつのゼンマイを組み込んだデュアル・スプリング・バレル機構で、約72時間のパワーリザーブ、手巻きのスプリングドライブです。

スプリングドライブとは

2004年に誕生した、機械式腕時計に搭載されているものと同じ”ゼンマイ”を動力とし、クォーツ時計に搭載されている”水晶振動子”とICチップで構成されている画期的な調速機構のグランドセイコーだけのムーブメントのことです。

簡単にお伝えすると、例えば自転車に付属しているライトは、タイヤが回る力で発光するのですが、スプリングドライブのメカニズムは、ゼンマイのほどける力がローター(自動巻きの場合)とコイルに伝わり、ローターが一秒に八回転するとわずかな電気エネルギーが生じます。その電気エネルギーが水晶振動子とICを動かすのです。ICの役割は、ローターに磁力のブレーキをかけ、一定の速度を保たせて正確な針の動きを生み出しています。同社ではこれを「トライシンクロレギュレーター」と呼んでいます。(TRI(トライ:3つの)SYNCHRO(シンクロ:同調させる)REGULATOR(レギュレーター:調速機))

スプリングドライブはその動きを見れば一目で搭載モデルと分かります。機械式時計の細かい動きでもなく、クォーツ時計の一秒ずつの動きとも違う。文字盤上を美しく滑らかに動くその動きは「スイープ運針」と名付けられており、時が経つのを忘れるくらい、見入ってしまいます。

精度は普通の機械式時計が日差+-5~15秒(平均月差+-5分)なのに対し、スプリングドライブは自動巻きで日差+-0.5秒(平均月差+-10秒)、手巻きで日差+-1秒(平均月差+-15秒) とただただ驚くばかりです。機械式とクォーツの融合時計、それがスプリングドライブなのです。

御神渡り(おみわたり)とは

長野県の”諏訪湖”に現れる自然現象のことです。
諏訪湖とは、長野県の真ん中に位置する大きな湖で、大きさは約13㎡(東京ドーム282個分)、諏訪湖の周りは16kmで、3~4時間で歩いて一周できる散歩コースもあります。近くには博物館や美術館、温泉がたくさんあり、日本屈指の観光地となっています。ちなみに日本で一番大きな湖は滋賀県の”琵琶湖”で、なんと諏訪湖の50倍もの大きさだそうです。

この諏訪湖で、壮大な自然現象「御神渡り」が見られる季節は冬だけで、マイナス10度以下の寒気が数日続くことが第一条件で、近年では暖冬の影響により御神渡りの起こらない「明けの海」が増えています。

御神渡りの名前の由来は、その壮大さから古(いにしえ)の人々が「神の御渡りになった跡」と思い、古くから言い伝えられて来たことからです。呼び名は様々あり、神渡り、御渡り、神幸などで、現在では「御神渡り(おみわたり)」に統一されました。ちなみに、諏訪湖を挟んで北と南に祀られている上社と下社(それぞれ二社ずつあり、日本でも珍しい四社体制の神社)があるのですが、上社の男神”建御名方神(タケミナカタノカミ)”が、下社の女神”八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)”に会いに行くために通った道筋という、ロマンチックな言い伝えもあるんですよ。

御神渡りが起こる理由は、冬の諏訪湖の全面が氷に覆われ、マイナス10度以下の寒気が数日続くと、氷の厚さが10cm以上になります。そして昼夜の寒暖差で氷の膨張と収縮が繰り返されると、湖の南岸から北岸にかけて氷が割れてぶつかり合って高さ30~60cmの氷の山脈ができるのです。この氷の山脈ができる時、ものすごい轟音がして、その数日後にも同じ方向に氷の山脈ができるのですが、最初のものを「一の御渡り」と呼び、次に現れたものが「二の御渡り」と呼ばれ、更に一と二の御渡りに東側から交わってできたものを「佐久の御渡り」と呼び、この三筋が出現すると「御神渡り」と認定されるそうです。次のチャプターでは御神渡りを検定する神社について触れてみたいと思います。

八劔神社(やつるぎじんじゃ)とは

長野県諏訪市小和田にある神社です。この神社では八千矛神(やちほこのかみ)、日本武尊(やまとたけるのみこと)、誉田別尊(ほむたわけのみこと)の三社を祭っています。元来、諏訪湖は現在の二倍以上(岡谷市から茅野市辺り)の大きさがあり、八剱神社はもともと現在高島城のある場所にあったのですが、お城を造るにあたって氏子(氏神を信仰する人々のこと)と共に現在の場所、小和田に移りました。

八剱神社では特殊神事として、今回ご紹介する御神渡り「御渡拝観」、「式年造営御柱大祭」があり、御柱祭は7年に一度の諏訪人にとって大切な行事です。
八剱神社ではただ単に柱を建てて祭るのではなく、山から巨木を曳いて来て、鳥居、門、宝殿(神様を祀る建物)などの建物を新しく建て替えて、古い宝殿から新しい宝殿に御神体を移し、社殿の四隅に柱を建てることを行います。御柱祭とは社殿を新しく建て替えたお祭りなのですね。

そして本題である”御神渡り”についてですが、八剱神社では御渡拝観といって、冬の諏訪湖で御渡りが観測されると、拝観式の日にちを決めて、八剱神社宮司、氏子総代、小和田区長等約60名が、先述した一・二の御渡り、佐久の御渡りを拝観した後、御渡りを神へ報告する「御渡拝観奉告祭」が行われます。そしてその年の農作物や気候、社会情勢の吉凶などを占い、結果と御神渡りの状況を諏訪大社に報告する「御渡注進式」が行なわれ、諏訪大社は宮内庁と気象庁に上申して初めて、御神渡りが認定されます。これらの特別で大切な伝統神事を担っているのが八剱神社なのです。

御神渡りの歴史は古く、1443年から現在までに503回も現れており、最後に現れたのは2018年、地球温暖化の影響で近年は”明けの海”が続いているため、次に見られるのを心待ちにしている人がたくさんいます。この記事を書くにあたり、「諏訪の七不思議」とも言われている御神渡りという自然の神秘に初めて触れ、私自身も冬が待ち遠しくなりました。

こんなに神秘的な日本だけの自然現象をまさか文字盤デザインにするなんて、正に日本ならではですし、スプリングドライブの動きだけでなく、その美しさにただただ息を飲むばかりです。セイコー社最高傑作のひとつといっても過言ではないモデル、それがエレガンスコレクション「御神渡り」なのです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。日本の伝統を少し感じていただけましたでしょうか。腕に吸い付くような着け心地、なにより御神渡り文字盤をじっくりとご覧いただき、実物を手に取って感動を味わって頂きたいです。

この記事をご覧いただいて、気になられた方は私までご連絡下さい。みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。


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