ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
今回の取り上げる時計は、IWCのビッグパイロットウォッチです。
ビッグパイロットウォッチが生まれた背景にあるものは何か、また現在のIWCにおけるビッグパイロットウォッチの存在意義とは何なのか、そのあたりを含めビッグパイロットウォッチの魅力ご紹介して参ります。
ビッグパイロットウォッチの起源
ビッグパイロットウォッチ、見た目そのままなネーミングを冠したモデルが、現在の形として広く一般に販売されるようになったのは2002年と、意外にも最近のことですが、そのルーツを辿れば1936年まで遡る事が出来ます。
1936年、それはIWCにとって初となるパイロット専用時計である「スペシャル・パイロット・ウォッチ(通称:マーク Ⅸ)」が発表された年であり、現代へと脈々と紡がれる同社のパイロットウォッチの歴史の起点となっています。
時代背景としては世界大戦の最中、同社のパイロットウォッチはイギリス軍に納められていた通称マークシリーズ、即ちスペシャルパイロットウォッチ(マークⅨ)から続くマークⅩ、Ⅺ、民生用にも販売が始まったマークⅫ、ⅩⅤ、ⅩⅥ、ⅩⅦ、ⅩⅧ、そして2022年に発表されたマークⅩⅩへと至るモデルが広く知られています。
一方で、1940年には現代のビッグパイロットウォッチのデザインに通じる「ビッグパイロットウォッチ52T.S.C」が発表されました。
こちらに関してはドイツ空軍から要請の元、士官用の高精度パイロットウォッチとして開発されました。
主な目的はクロノメーターの腕時計版であり、正確な時刻をパイロットに伝える役割を担う存在として発展を遂げました。
事実、懐中時計用ムーブメントCal.52を搭載したそれは、群を抜いた超高精度を誇り、後年に生み出された機械式の腕時計においてもビッグパイロットウォッチ52T.S.C超える精度を持った存在は無いとも言われています。
21世紀に蘇るビッグパイロットウォッチ
2002年、ビッグパイロットウォッチはRef.5002として、オリジナルの雰囲気を踏襲し見事な復活を見せてくてました。
ケースサイズはオリジナルの55mmからサイズダウンが図られましたが、実用性を考慮した上でも十分迫力のある46.2mmと大きな体躯に、7日間の長時間駆動を可能としたCal.5011を搭載し、パイロットウォッチならではの耐磁性軟鉄製インナーケースを備えた設計となっています。
その後、ビッグパイロットウォッチはRef.IW5009へモデルチェンジがなされ、基本設計は変わらずとも振動数を21,600振動に向上させ、フリースプラング化が図られ、外装面においても洗練された印象を強く与える仕上げが施されるようになりました。
屈強な印象のステンレスケースにビッグパイロットウォッチを象徴する円錐型の大型リューズ、ダイアルは視認性に優れたインデックスと時分針、カウンターウェイトが長めに取られた伸びやかな秒針に加え、長時間駆動を誇示するパワーリザーブ表示と日付表示、必要な機能を必要な形として一切の無駄なく体現したそれは、ビッグパイロットウォッチならではのものと言えます。
ビッグパイロットウォッチらしさはベルトにも見ることが出来、リベットが打たれた特徴的なデザインを持ち、素材にはサントーニ社のキメ細やかなカーフスキンが採用されています。
大型のバックルもまた、屈強な雰囲気を一層高める要素となっています。
提示されるもの時代が求めるもの
道具然とした佇まいでありながら質感は極めて高く、手にした瞬間に見た目からくる粗野な印象は吹き飛び、無骨さの中に極めて精緻な作りを見出すことが出来るビッグパイロットウォッチ、その特異とも言えるポジションの製品を生み出すIWCというブランド。
一般的な使用下における利便性であれば、近年のマークシリーズがサイズそして機能共に理にかなっていると言える中、 ビッグパイロットウォッチは必要かと問われれば、ノーなのかも知れません。
しかしながら、IWCを含む高級商材全般にとって、長年培ってきた歴史や逸話は製品の魅力を高めるために必要な要素であり、それを体現する事がブランド自体の価値を高めることへ繋がることは明白であり、IWCはビッグパイロットウォッチを通してそれを提示しているとも言えるのではないでしょうか。