時計界のトレンド「インターチェンジャブル・ストラップ」って何?
2022-04-11 11:30
エバンス オンラインショップ担当の大貫です。今回は、時計界のトレンドをご紹介。タイトルの名前からして想像するに難しくはないと思いますが、今回改めてご説明したいと思います。
温故知新の高級時計の部類では、スマートウォッチといったデジタル・ガジェットとは異なり、大きな変化はありませんが、新素材の開発や保証の登録方法や保証期間の延長、サスティナビリティへの取り組みなど、幅広いイノベーションが起こっています。
その中で、いま各社で採用し、注目されているのが「インターチェンジャブル・ストラップ」です。
インターチェンジャブル・ストラップとは?
時計界で、少し前から流行しているのが、「インターチェンジャブル・ストラップ」。最近は耳にすることも増えてきたことと思います。ブランドによってその呼称は異なりますが、『ベルトを簡単に付け替えることができる』システムのことです。
良く知られているのは、『パネライ』ですかね。交換用の工具が付属し、容易にベルト交換ができるものは古くからありましたが、近年は工具不要でストラップ交換が可能なものを指します。意外と昔からあるインターチェンジャブル・ストラップ
インターチェンジャブル・ストラップは、ベルトメーカーであるカミーユ・フォルネ社の「アビエ」(フランス語で「着替える」という意味)システムが先駆けと言われていますが、個人的にはロレックスだと思っています。
ロレックスのアンティークに【カメレオン】と呼ばれるレディースモデルがあります。金属ブレスを含む複数のストラップが付属し、簡単に交換可能。1950年頃のアンティークですが、根強いファンがおり、今見ても新鮮です。
その後、より洗練されたのが、2002年に発表されたカルティエ の「ロードスター」。工具を必要とせずブレスレットとレザーストラップの交換が可能で、ベルト裏側のレバーを押して着脱する、現在の流行に近いもの。ブレスレットとレザーストラップを簡単に交換できるシステムは、当時非常に目新しかったように思います。
ロードスターは非常に革新的なモデルでしたが、その後このタイプのベルト交換システムは続かず、一旦市場から姿を消しますが、最近になり徐々にインターチェンジャブル・ストラップを採用するブランドが増えてきました。
インターチェンジャブル・ストラップが増えてきた理由
近年、様々なブランドで採用されている背景には、精度の高い加工技術の発展が一因と言えます。 特に本体が重いスポーツモデルは、ラグとストラップの噛み合いの精密さが重要で、堅牢さを維持しつつ、時計を保持する高い信頼性が確保できるようになってきたためだと思います。
またジェンダーレスの広がりにより、以前のような「メンズ」「レディース」といったカテゴリがなくなり、サイズ違いのストラップを用意することで、パートナーと兼用できるなど、『SDGs』の考えに即している点も挙げられますね。シンプルに見えますが、高い技術力が必要のシステム。この交換システムを持続させる資金力も重要となります。
採用するブランド一例(2022年4月現在)
現在「インターチェンジャブルストラップ」を採用しているブランドは多数ありますが、今後も増えてくると思います。なおブランドごとにシステムの名称は異なりますのでご注意ください。
ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ」シリーズ
裏側のレバーで脱着、ストラップについているバックルも容易に交換可能。ブレスタイプのモデルは、交換用として2種のストラップと1つのバックルが付属し、非常にお得なモデルです。
オーデマ・ピゲ「ロイヤルオーク・オフショア」シリーズ
裏面の4つのボタンを押して脱着できます。見た目以上に剛性があり、しっかり固定できています。尾錠交換も工具は必要ありません。ほとんどのモデルは交換用ストラップが1本付属しています。
ウブロ 「ビッグバン・ウニコ」シリーズ
交換用ベルトがデフォルトで付属するモデルは少ないながらも、フラッシュフィット部分の中央に設置してあるボタンで簡単に交換可能。
カルティエ
クィックスイッチ交換可能システムという名称で、一部モデルに採用となっており、「パシャ・ドゥ・カルティエ」「サントス・ドゥ・カルティエ」「バロンブルー ドゥ カルティエ」「タンク マスト」シリーズの一部(交換用ストラップが標準装備すのは一部モデルのみ)。モデルによって微妙に交換の仕様が異なっています。
ルイ・ヴィトン「タンブール」シリーズ
交換用ストラップは買い足しとなります。
裏面のスイッチようなパーツをずらすことで脱着可能。ストラップの種類が豊富で、ブティックで時計を購入の際は、お好みのストラップで購入ができます。ブランド戦略もありますが、買い揃えたくなるようなストラップです。
その他の採用ブランド
IWC 「パイロット」「アクアタイマー」シリーズの一部、タグホイヤー「オータヴィア」シリーズ、ゼニス「ディファイ」シリーズなどなど、多数のブランド・基幹モデルで採用されています。アップルウォッチもありますね。
メリット・デメリット
気軽に雰囲気を変えて楽しむことができる点が最大のメリットでしょう。その日の服装に合わせて簡単にストラップを変えることができ、 時計1本で数パターンを楽しめるお得なモデルと言えますね。
デメリットとしては、基本的に専用ストラップのみ対応となる点です。特殊形状の純正ストラップは、比較的高めのコストとなり、生産終了後の調達が難しくなる場合も考慮する必要もあります。
例えば20年、30年、50年と年月が経った場合に、交換用のストラップが手に入るのかということが重要で、ある程度買い足しながら、ストックを揃えるなどの対策も必要になるかもしれません。
インターチェンジャブル・ストラップは今後スタンダートとなる?
ユーティリティや便利さなど、非常に高いメリットが感じられますが、前記のようなデメリットもあります。なので、生産終了となったモデルのストラップが、永久的に手に入るといったことは考え難いところです。
ただ、今後このようなシステムが標準化・定番化すれば、ジェネリック品などが出回る可能性もあり、デメリットも少なくなっていくのではないでしょうか。