こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本日はついに徹底比較!編のトリを飾る、デイトジャストのご紹介です。
デイトジャストとは
1926年、ロレックス社より硬い牡蠣の殻からインスピレーションを得て命名された、世界初の防水時計「オイスター」が誕生、1931年にはこちらも世界初の自動巻き腕時計「オイスターパーペチュアル」を完成させ、1945年、今回の主役「デイトジャスト」を発表しました。(上写真)
当初は小さな日付を瞬時に認識するための、我々のよく知る拡大レンズ(サイクロップレンズ)は付いておらず、初代デイトジャストの日付は赤と黒の交互表示でした。後に登場するRef.116234の赤黒デイト(※現在は生産終了)は、初代のリバイバルだったんですね。そして、ベゼルに細かい刻みの装飾を施し、高級感を纏った細かい繋ぎ目のブレスレットを組み合わせた、デイトジャストのためだけのデザインは、後続モデルにも受け継がれています。(のちにベゼルは”フルーテッド”、ブレスは”ジュビリー”と名付けられました)
生産当初、デイトジャストは男性用としての腕時計でしたが、1957年、女性のためのデイトジャストが登場しました。(上写真)
ちなみにその名の由来は、日付(デイト)が夜中の0時ちょうど(ジャスト)に変わることから名付けられました。
70年以上も前からその基本的なデザインは変わっていない、ということは、それほどまでに完成されたフォルムであるということです。
新作を発表する度に、基本スタイルを変えずにスペックを向上させており、その存在は益々際立ち、ロレックスのドレスウォッチとして時計界のトップに君臨しています。
「ロレックス・デイトジャスト」。デイデイトとは違う、普段使いに適した実用時計であり、世界各国・老若男女がその名を聞いてどんな時計かが想像できる唯一の時計であり、世界で一番有名なモデルと言っても過言ではありません。
現にこのデザインを模した腕時計が、どのブランドにも存在し模範とされ続けていますし、それは国産の物にも及びます。
ロレックスを語る上で欠かせない、”デイトジャスト”は、私達の手の届く高級時計なのです。
Ref.1601とは
1945年に登場した初代デイトジャスト、Ref.4467をはじめとし、15年の間に数回マイナーチェンジを経て1960年頃に誕生したのがRef.1601です。このモデルからロレックス・デイトジャストの名が広く知れ渡るようになり、完成度からしていかに秀逸な傑作機であるかが見て取れます。(下写真)
キャリバーはCal.1570。初代キャリバーよりも少し大きな作りになっており、理由は両方向自動巻きと日付の早送り機構を搭載するためです。
また、それまで金無垢とイエローゴールドとステンレスのコンビモデルのみのつくりでしたが、Ref.1601からホワイトゴールドとステンレス(オールシルバー色)のモデルが加わり(Ref.1603というオールステンレスも後年に登場します)、幅広い年齢層の愛好家たちを魅了して世界中での好セールスを記録しました。故に、生産から60年以上経った2021年現在でも、アンティークロレックスですが、さほど高額ではなく日本にも数多く現存するのです。
1970年代後半からはついに5桁のデイトジャスト、Ref.16013・Ref.16014が登場、型番下一桁で素材を見分けられるようになりました。(3…ステンレスとイエローゴールドコンビ/4…ステンレスとホワイトゴールドコンビ)
デザインは変わらず、特徴であるプラスチック風防もそのままに、キャリバーがCal.3035へと進化しました。前作Cal.1570との違いは、19,800だった振動数を28,800まで上げて精度を高め、特筆すべきは日付の早送り機構を追加したことです。
5桁になり、Ref.1601という完成度の高いモデルを更に進化させていることがよくわかりますよね。Ref.16013・Ref.16014は5桁でありながら、プラスチック風防を備えているので、セミ・ヴィンテージとして注目されています。価格も50万円前後と手に入れ易く、ここエバンスでも入荷したらすぐに売れてしまうモデルのひとつです。これからも目が離せないですね。
Ref.16234とは
1980年代後半から、前作Ref.16014などに代わり登場したのがRef.16234(ステンレスとホワイトゴールドコンビ)です。(上写真)二つ上の写真を見ていただくとわかりますが、Ref.1601と見た目はほとんど一緒で、前作との違いはキャリバーです。Cal.3035からCal.3135になり、片手で支えていた心臓部のテンプを両手で支える”ツインブリッジ”仕様となり、耐衝撃性が高まりました。大きな変更点として、プラスチックだった風防が、強固なサファイアクリスタルになり、耐久性も向上しました。
この頃からRef.16238(イエローゴールド無垢)、Ref.16233(ステンレスとイエローゴールドコンビ)Ref.16200(オールステンレス)など、様々な素材とバリエーションに富んだ文字盤のデイトジャストが登場します。大袈裟ではなく、ロレックスのモデルの中で、2021年現在世界で一番、数多く存在するのはこの5桁のデイトジャストです。そのため、文字盤やコンディションにもよりますが、比較的相場が安定していて、一番入手がしやすいロレックスだと思います。
ちなみに4桁のモデルにも存在したのですが、5桁になって登場したRef.16264というモデルが通称”サンダーバード”と呼ばれており、デイトジャストで唯一、回転する幅広ベゼルが付いているレアモデルで、私が好きなモデルのひとつです。(下写真)
ロレックスはモデルによっていろいろな愛称が付いていますが、サンダーバードとは、1960年代にアメリカ空軍アクロバットチーム”サンダーバーズ”の隊長が引退する記念にロレックス社に特別に発注して製作してもらった記念モデルで、それがノーマルモデルとなり、2000年前半まで作られていたものです。
今回、この記事を作成するにあたって、改めてデイトジャストの系譜を見てみると、常に現状で満足せず、理想の腕時計づくりを追い求め続けるというロレックス社の理念が顕著に表れているモデルだと感じました。
初代から形を変えず、使う人のためによりいいものを研究し、現実に作り上げている同社の努力の結晶、それがロレックス・デイトジャストなのです。
文字盤いろいろ
こちらはRef.16234の文字盤の一部のご紹介です。20年位の長寿モデルの初期ローマ文字盤には二種類ありました。前回記事「デイデイト徹底比較!②」でお話しましたが、新しいスタイリッシュなローマ文字盤と、上写真左から二番目の文字盤、似ていると思いませんか?
これは、”アップライト”といって、昔の4桁のアンティークロレックスの時代から採用されている手法で、小振りのインデックスだとアンティーク調に、大振りだと現代風なデザインに変身します。そしておもしろいことに、「4」は「IIII」になっていますよ! もしお時間ございましたら、前回記事の写真と見比べてみてくださいね。
こちらは、Ref.16233の文字盤の一部をご紹介しています。前々回記事、「デイデイト徹底比較!①」でもご紹介した、マホガニー(木)を採用したレア文字盤もコンビモデルには存在します。(上写真真ん中)そして、右から二番目を見てもわかるように、昔のダイヤの台座は四角く角張っていて、ダイヤ自体は小振りだったんですよ。文字盤を見ても、いつ頃生産されたかある程度の年代が識別できるんですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。まだまだ語り尽くせないロレックス・デイトジャストの長い系譜、みなさんご興味持っていただけましたか?
次回は6桁のデイトジャストにスポットを当ててお話ししたいと思っています。みなさまお楽しみに。