ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
今回はオメガの定番モデルとして、長年にわたり高い人気を誇るシーマスター アクアテラの特徴と、歴代モデルをご紹介してまいります。
アクアテラはサイズバリエーション、派生モデルも多くありますが、今回はベーシックな自動巻きメンズモデルを取り上げたいと思います。
アクアテラとは?
アクアテラの誕生は2002年にまで遡り、シーマスターシリーズのエントリーモデルであったシーマスター120の後継モデルにあたります。
シーマスター120については、上級モデルのシーマスター300から回転ベゼルとヘリウムガスエスケープバルブというプロフェッショナルモデルとしての要素を取り除き、防水性能を120mを抑えることで日常使いに適したサイズ感を持っていましたが、そのデザインはダイビングモデルらしくスポーティな印象が強いものでした。
一方でシャープでスタイリッシュなデザインを纏ったアクアテラは、ビジネスシーンでも活用しやすいことから幅広い層から支持され、シーマスターの21世紀における新たな定番の地位を瞬く間に確立しました。
また、アクアテラは往年のシーマスターで見られたデザインが随所に配されており、なかでも目を引くのが、矢印のような形状をしたアローハンドの存在といえます。
アローハンドは1950~60年代のシーマスターに見られたもので、半世紀を経た今、アクアテラを象徴する要素として蘇り、そのモダンなデザインの中にシーマスターの伝統が継承されています。
アクアテラは2002年の誕生以来、モデルチェンジを重ねごとに搭載されるムーブメントを進化させ、外装面における質感を飛躍的に向上させてきました。
また、アクアテラは1990年代半ばから量産実用化が進められたコーアクシャル機構を初代モデルから搭載し、順調なセールスを追い風にその普及に大きな功績をもたらしたモデルであると言えます。
第1世代 2002年~2008年
初代アクアテラは、シーマスターシリーズの新たなスタンダードモデルとして2002年に誕生しました。
シンプルなラウンドケースに、ひねりを加えた特徴的なラグを持つフォルムは一目でオメガの時計と分かる要素であり、光沢感の強いダイアルと美しくカットされた針、そしてインデックスが高級感のある表情を生み出しています。
一方でその仕上げ故に、使用環境によっては針やインデックスがダイアルに埋もれてしまい、視認性という点についてはやや難ありといった印象があります。
搭載されるCal.2500は、コーアクシャル機構を備えた革新的な自動巻きムーブメントであり、クロノメーター検定をパスした高い精度も持ち合わせていますが、携帯精度という点においては物足りない部分がありました。
また、同時期にアクアテラをベースにした、レイルマスターというモデルもラインナップされました。
レイルマスターの起源は1950年代に遡り、そのネーミングの通りに鉄道の現場で働く人々をターゲットに生み出されたモデルであり、視認性に優れたダイアル、そして耐磁性能を持つモデルでした。
第1世代のアクアテラをベースにしたレイルマスターは、耐磁性能は備えないものの、マットなダイアルにアラビアインデックスが高い視認性を確保し、カレンダーを省いたクラシカルな表情が特徴となっています。
第2世代 2008年~2017年
従来のフラットなダイアルから一転、タペストリーパターンのダイアルが特徴的な第2世代モデルは、そのデザインもさることながら、ムーブメントに関しては、大きく刷新されオメガ自社製のCal.8500が搭載されました。
中でもアクアテラ、そしてオメガにとって大きなターニングポイントとなったのが、2013年に発売されたRef.231.10.42.21.01.002の存在です。
搭載されるCal.8508は耐磁性能に特化したムーブメントであり、インナーケースでムーブメントを保護する従来の考え方とは全く異なり、ムーブメント自体が耐磁性能を持ち合わせています。
それにより裏蓋のシースルー化はもちろん、ダイアルに窓を開けカレンダー機能を付けることも容易に行う事が出来るようになりました。
その後、 Ref.231.10.42.21.01.002のスペックを引き継ぐ
231.10.42.21.01.006が発売され、Cal.8500はマスターコーアクシャルとして15,000ガウスの耐磁性能を持ったムーブメントへと進化を遂げました。
また、ダイアルに関しては往年のシーマスター120や300を想起させるウェーブパターンが採用され、他のアクアテラとは一線を画す雰囲気を持っています。
第3世代 2017年~
第3世代となるアクアテラは、ダイアルにチークコンセプトという横ストライプが採用されます。それはヨットのウッドデッキをモチーフに海との繋がりが深いシーマスターならではの洗練されたデザインが特徴です。
また、第1世代同様にアクアテラをベースにレイルマスターが発売されましたが、今回のレイルマスターはケースの仕上げから裏蓋に至るまで、通常のアクアテラとは一線を画す個性際立つ仕上がりとなっています。
搭載されるCal.8900(レイルマスターはCal.8806)は、先代モデルで築いた15,000ガウスという超高耐磁性能に加え、さらなる高精度を求めた自動巻きムーブメントであり、その証明としてマスタークロノメーターと呼ばれる、認定基準までも作りあげました。
マスタークロノメーターに関しては、COSCが認定した条件を満たした上で、スイス連邦計量・認定局(METAS)の承認した8つの独立したテストを合格する事でマスタークロノメーターと認定され、それは日常生活での着用される性能は勿論、15,000ガウス以上の磁場に晒されても、時計とムーブメントが正常に動作することを保証されるものです。
アクアテラの今後
熟成の域に達したアクアテラですが、2019年には超軽量のアスリートウォッチ、アクアテラ”ウルトラライト”が発表されました。
ケースにはチタンとアルミニウムの合金であるガンマチタンが採用され、リューズはスポーツ着用時に邪魔にならないよう格納式、ムーブメントはプレートとブリッジにセラミックチタニウムを採用した、極めて堅牢な手巻きCal.8928を搭載、そして重量は僅か57gという、その驚異的な軽さと耐急性が一部で話題となりました。
ウルトラライトの発表時の価格は税抜で522万円と、従来のアクアテラとはかけ離れたものであり、コンセプトを含めアクアテラと同列に扱われることは考えにくいですが、オメガの技術力の証明、あるいは近い将来この価格帯での商品展開を示唆するものではないでしょうか。
最後になりますが、アクアテラはシーマスターシリーズの最もスタンダードなモデルでありながら、その高い質感は上位モデルを凌ぐほどであり、同価格帯の他ブランドのモデルと比較しても頭一つ飛び抜けた存在であり、今後もアクアテラの躍進は止まりそうにありません。