シードゥエラー徹底比較!①
2021-03-16 11:30
こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
今回は前回のサブマリーナに続き、よく購入比較されるシードゥエラーを徹底比較してみたいと思います。
シードゥエラーとは
1960年、ロレックス社は歴史を動かしました。当時、人類史上最も深い潜水を試みた深海用潜水艇に、同社の腕時計を取り付けて陸と同じように作動するかの実験をしたのです。その潜水艇には、アメリカ海軍大尉のドン・ウォルシュと、スイス海洋学者のジャック・ピカールが乗り込み、世界で最も深い”マリアナ海溝”の海底、37,800フィート(10,916m)へと到達し、世界記録を樹立しました。
勇敢なる二人が生涯忘れられない出来事として後日語られたことですが、海底までの三分の二くらいまで差し掛かった時、ものすごい爆発音と衝撃が機体を襲ったためもうだめだと顔を見合わせたそうです。そして無事に海底から陸へと上がった時に確認できたのは、途中で起きた爆音と衝撃は、外部に取り付けられたプレキシガラス製の窓ガラスが、水圧で割れてしまった音だということでした。
そして同じようにトリエステ号の外に取り付けられた「ロレックス・ディープシースペシャル」(上写真)はなんと、まったくの無傷で時を刻んでいたというのです!
1926年の世界初のオイスターケース発表以来、この歴史的実験の話は瞬く間に世界中に広まり、様々な分野の方々から賞賛を得て、特に専門家達からは絶大な信頼を獲得しました。
”COMEX”(コメックス)。ロレックス愛好家ならご存知の用語ですよね。これは、フランスの潜水を専門とする会社で、ロレックス社に全幅の信頼を置いていた同社は、実際に潜水する社員にサブマリーナを配っていました。ある日、飽和潜水(酸素とヘリウムの混合ガスを体内に吸収させ、深海のものすごい水圧にでも耐えられる状態にする潜水方法のこと)の実験をしていたダイバーの腕に装着されていたサブマリーナのガラスが、地上に出た際に破損してしまうという事故が起こりました。これに胸を痛めた同社は、ロレックス社にガラスが割れない腕時計の製作を依頼します。そうして誕生したのが、1967年発表の”ヘリウムガスエスケープバルブ”搭載の初代シードゥエラーRef.1665です。
もう少し詳しく説明すると、ヘリウム分子は非常に小さく、飽和潜水時にガスケットを通して時計内部に入り込んでしまい、ダイバーが地上に浮上する際に、時計の内と外に圧力差が生じることで、ガラスが割れてしまうのです。そのトラブルを解消するため、ロレックス社はヘリウムガスを外に排出するための”バルブ”をリューズとは反対側のケースに取り付けました。(上写真)この画期的な発明は、60年経った現在でも採用されており、プロフェッショナル達に大いに役立っています。
余談ですが、ロレックス社初のヘリウムガスエスケープバルブ搭載モデルはRef.5514(日付なしサブマリーナ・上写真)で、その文字盤にはCOMEXの文字が堂々と記されており、今では1500万円を超えるプレミアムモデルとなっています。そして、初代シードゥエラーRef.1665・COMEXは2000万円を超える更なるプレミアが付けられています。生産本数が少なく、世界的に評価されていることの証ですね。
Ref.1665は、COMEX以外にもロレックスの文字が赤い”赤シード”(下写真)、クロノメーター表記が真ん中で分かれている”レイルダイヤル(センタースプリット)”が存在し、年々プレミアが付いています。
Ref.1655から始まったロレックス・シードゥエラー。発売当初はサブマリーナと比較されて下火だったモデルが今ではロレックス社にとって必要不可欠となっています。後に続くモデルもどんどん進化しており、これからも楽しみなロレックス一の高防水モデル、それがシードゥエラーなのです。
Ref.16660とは
1978年に発表されたシードゥエラー第二世代、Ref.16660(下写真)。
前作との違いは、プラスチック風防からサファイアクリスタルへと変更され、”6”が三つ続くことから、”トリプルシックス”と呼ばれています。
Ref.1665の防水は610mでしたが、二倍の1220mまで耐える構造に進化しました。ベゼルも両回転から、逆回転防止ベゼルへ、前述したヘリウムガスエスケープバルブは大型化され、更にプロフェッショナルモデルへ近付きました。
キャリバーはCal.1570からCal.3035へ変更となり、一番の大きな改良点はリューズを一段階引いた時にカレンダーを変えることができるようになったことです。初期のインデックスにフチ取りのない「フチなし」文字盤が、5桁ながらヴィンテージ感を得ることのできるモデルとして高い評価を得ています。
1991年まで生産されていて、比較的流通していたことからさほどプレミアムは付いていませんが、フチありは200万円超え、そしてCOMEXは1000万円を超えていてこれからが楽しみなモデルですね。
Ref.16600とは
Ref.16660、トリプルシックス生産終了と共に発表されたのが、1991年~2008年まで生産されていたRef.16600です。シードゥエラーといえばこのモデルを連想する方が多いのは、サブマリーナが大流行している時代で、その比較モデルとして常に選ばれていたのがRef.16600だからです。
見た目は前作後期モデルとほぼ変わりませんが、キャリバーがCal.3035からCal.3135へ、心臓部のテンプを両方で支える構造となりより安定した精度が出るようになりました。1998年には夜光塗料がトリチウムからルミノバへと変更、2003年にはケースの下部、ラグに空いていたバネ棒用の二つの穴(計四つ)が塞がり、外観も視認性もよくなりました。当時、サブマリーナとの比較をされることが本当に多く、初代から続く日付に拡大レンズ(サイクロップレンズ)が付いていないところ、直径は同じ40mmなのに少し小さく見えるところ、防水性が高いため厚みがあり、より頑丈な所、人と一味違うダイバーズウォッチであるところ、を気に入ってシードゥエラーを選ぶ方もいらっしゃいました。しかし、やはりサブマリーナ人気は物凄く、人気はいつも二番目だったのをよく覚えています。
それが現在、Ref.16600は入荷をすると必ずすぐに売れてしまう程安定していて、なくてはならない存在になってとなっており、買取価格もサブマリーナと並ぶところまで来ました。後に登場する新型は、サイズもアップして他モデルとは一線を画していて、ロレックス愛好家に限らず、ファーストロレックスとしても幅広い年齢層の方々に選ばれています。
5桁のロレックスはネオ・ヴィンテージと呼ばれ、Ref.16660・Ref.16600共にいい個体が市場に少なくなっており、これからどんどん価値を高めていくことでしょう。5桁をお持ちの方は普段使いでガシガシ使う方が非常に多いので、このブログを読んで共感していただいたみなさまには是非、大切にしていただきたいです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は4桁と5桁のシードゥエラーのことをまとめました。残念ながら、現在はどのモデルも在庫がございませんが、入荷したらホームページのトップに掲載しますのでお見逃しなく。
次回はいよいよロレックス最強モデル”ディープシー”のお話です。みなさまお楽しみに!