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「神の手を持つ男 ”パルミジャーニ・フルリエ”技術・作品編」 2017年8月22日

2017-08-22 19:55

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こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
まだまだ蒸し暑い日が続きますね。涼しい秋が待ち遠しいです。
天気も崩れやすいので、みなさまお出掛けの際は傘をお忘れないようお気を付けくださいね。

さて、本日は前回の「神の手を持つ男 ”パルミジャーニ・フルリエ”功績編」につづき、彼の技術と作品についてご紹介させていただきます。


1996年に創業、昨年には20周年を迎え大きく変わったことは生産体制だとミッシェル・パルミジャーニ氏は語ります。
当時は職人が手作業で時計を作る小さな工房、現在では文字盤・ケース共に自社で生産なさっています。
ムーブメントの組み立て、どんな小さな部品でもすべて自社で製造、何より限られたメゾンのみでしか不可能なひげぜんまいと脱進機の製作は極めて難しく、それをもやってのける職人を抱えている同社はひとえに彼の才能と人望の賜物だと私は考えます。

年表を追ってみると1990年にサンド・ファミリー財団の後ろ盾を得て、彼の初の会社であるパルミジャーニ・ムジュール・エ・アール・デュ・タン社を設立、1996年に初のコレクションである腕時計と懐中時計やテーブルクロックなどを発表します。
1998年には初の完全自社製、8日巻の角型ムーブメントCal.PF110を発表、その翌年から氏の快進撃が始まります。ケース会社であるブルーノ・アフォルテ社、輪列などを製作するアトカルパ社を買収、2001年には香箱真を加工するエルヴィン社を買収。外部からの供給が停止する可能性を考え、重要な部品に優先順位をつけ、製造会社を次々傘下に収めたのです。
そしていよいよ2003年、後にお伝えするヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエと社名を変え、新体制を設けます。
1994年頃から、サプライヤーからの供給停止の噂が絶えず流れて来ており、それまではフレデリック・ピゲなどからムーブメントを購入していましたが、ひげぜんまいを含む「自社製調速脱進機構」を05年までに完成させるという目標を掲げ、見事、垂直統合化を成し遂げたのです。


”ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ”。ここに、以前私が情熱を持ってブログでご紹介した、日本人時計師がいらっしゃいます。
是非こちらを振り返ってみてください→(「日本人時計師がおくる “オーデマピゲ ミレネリー4101”」
その名も「浜口尚大さん」。彼は美しく芸術的なオーデマピゲ ミレネリーのデザイナーであり、オーデマピゲのムーブメント設計・開発の責任者まで勤めた方です。もっと詳しくお伝えするとルノー・エ・パピでいろいろなムーブメントの製作・修理に携わり、その後オーデマピゲ社へ移り、現在ではまさかヴォーシェ・フルリエの開発部長になっていらっしゃるとは!正に、彼は日本の宝といっても過言ではありませんよね。
天才時計師・浜口氏の力もあり、同社はパルミジャーニ・フルリエの時計だけでなく、他ブランドの時計を設計・製作までをも手掛けています。年々、歯車やひげぜんまいなどのいろいろな部品の供給も増えて来たそうです。これにはもうひとつの理由があり、同社が少しずつ設備を整えて現段階で完璧な状況にあり、これを活用するためだそうです。※上の写真が浜口氏の作品です。

ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエが供給しているのは、リシャールミル、エルメスなどであり、特筆すべきはパルミジャーニ・フルリエ、ショパール、ボヴェ、ヴォーシェの4社による共同プロジェクトとして2001年に設立された「カリテ・フルリエ財団」についてです。
これは、クロノメーター(COSC)よりもはるかに厳しい時計に対する様々なテストを行う機関のことです。
ちなみにCOSCのおさらいですが、5つの姿勢差、高温・低温・常温の3つの温度差による精度チェック、15日間にも及ぶこのテストで直径が20mm以上のムーブメントは一日の誤差-4~+6秒、それ以下のサイズのものは-5~+8以内でなければなりません。これらをクリアしたムーブメントが晴れてクロノメーター認定証を受け取れるのですが、その数なんと、スイス国内で製造されている全体の時計の僅か3%しか存在しないのです。その厳しいCOSCに試験を依頼して合格したムーブメントのみに、更に厳格なテストが行われます。

その過酷なテスト内容の、まずひとつめはクロノフィアブル・テストといってリューズ操作(プッシュボタンと回転ベゼルのあるモデルはそれも含まれる)のテスト、磁気・耐衝撃・防水などのテストです。
次に、ムーブメントの仕上げと装飾のテストで、地板及びブリッジに装飾が施されているか、小さなネジの頭に至るまですべて磨かれているかなど、細かな箇所まで入念にチェックが入ります。そしてカリテ・フルリエが定める美的基準を満たしていないものにはその都度、技術委員会が招集されます。
最後のテストはフルリエ・テストマシンを使い、ムーブメントがケースに入っている状態で実際に着用した際のシュミレーションテストです。このテストは男女別、シーン別で24時間行われ、このテストの合格ラインは日差0~+5秒と定められています。これらの4つのテストに合格した時計にのみ、裏蓋やムーブメントにカリテ・フルリエマークが刻まれます。
現在、確認できているのはパルミジャーニ・フルリエのドレスウォッチ”トンダ”にカリテ・フルリエ検定に合格しているモデルが存在し、これは限定モデルの為現在ではもう手に入らない幻のモデルとなっています。
カリテ・フルリエは世界で最も厳しい検定だという情報もあり、COSC以外の検定機関に頼らず独自でつくりあげる、ここまでこだわりを持った独立時計師を私は知りません。腕時計づくりに対して本当に真摯なミッシェル・パルミジャーニの想いが、ひとつひとつの作品につまってる、これからはそう考えて氏の作った腕時計を手に取りたいと思います。



パルミジャーニの1996年ファーストモデルは、”トリック”という細かい刻みが施されていてベゼルが二重になっている、上品で大胆な作品です。当時はローマ数字でしたが、今年発表の新生トリックにはアラビア数字が採用されベゼルがスッキリしました。その後、”カルパ”という長方形のモデルを発表、2004年にはなんとイタリアの超高級スポーツカー”ブガッティ”社と契約を結び、腕時計を製作します。
私はこのモデルを見て感動し、パルミジャーニ・フルーリエを知りました。
2006年には初のレディースモデルを、そして2008年、本日ご紹介する”パーシング”を発表します。

パーシングとは、イタリアの最高級ヨットメーカーのことで、一台何千万、何億円する超高級ヨットを製造しています。このパーシングとコラボして作ったのが、このモデルで2010年にベゼルをホワイトゴールド製に変えてスポーツモデルに高級感を持たせ、新しく生まれ変わりました。ステンレスとのコンビネーションの他、ローズゴールドとホワイトゴールド無垢のモデルも発表され、現在ではスポーツラグジュアリーウォッチとして定着をしているモデルです。
今回ご紹介するパーシングの文字盤色、深い深い緑色。この色は実は洋服も小物も、難しい色なんです。それを大胆に文字盤と合わせて革ベルトにまで配色をし、特徴あるベゼルデザインも含めてミッシェル氏の意外な一面が見える私の好きなモデルのひとつです。
英国の伝統の車の色”ブリテッシュ・レーシンググリーン”を彷彿とさせるこのカラーを選んだのは、もしかしたら英国向けに作ったモデルだからなのかもしれませんね。


そして最後に革ベルトのお話です。
革ベルトは世界最高級の革製品のメーカーである”エルメス”を採用しています。エルメスは世界中の人間が知らない人はいない名前であり、男女共に永遠の憧れブランドです。
現在、世界で一番入手困難なバーキンをはじめ、革小物、特にバッグはアジアではまず手に入りません。
パリ本店ですらも接客をしてもらうのにまさかの予約が必要で、その予約も何ヶ月待ちだとか。
ここまで世界中の人々を魅了するエルメス。セレブ御用達ブランドだからという単純な理由ではありません。その革、品質のよさ、気取り過ぎていない所、いいところを挙げるときりがない程、素晴らしいブランドだからです。
そしてパルミジャーニを知らない人でも、エルメスの革が時計のベルトに使われていると分かった途端、すごいブランドなのかな?と興味を持ちますよね。エルメスはパルミジャーニ・フルリエのムーブメントを使っていますし、とてもいい関係なのが伺えます。
腕時計本体を支える革ベルトにエルメスを選んだ所も、このブランドの最高な所のひとつだと私は思います。


いかがでしたでしょうか。初の二週に渡る稲田ブログでした。
実はまだまだパルミジャーニ・フルリエについてお伝えしたいことがたくさんあるのですが、またの機会にお楽しみになさってください。
このブログを見て少しでも興味を持っていただいた方は私までご連絡下さいね。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

パルミジャーニ・フルーリエ パーシング005<<未使用品>>

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