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「奇才の独立時計師 ヴィアネイ・ハルター ”アンティコア”」2018年7月24日

2018-07-25 14:11

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こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
真夏日が続きます、みなさま熱中症には十分お気を付けくださいね。

さて、本日は世にも稀な天賦の才能の持ち主、” ヴィアネイ・ハルター ”により手掛けられた大変稀少な初期作品、アンティコア のご紹介です。


”ヴィアネイ・ハルター”。この名をご存じの方は真の時計愛好家です。
私のヴィアネイ・ハルター作品との出会いは約13年前、ここエバンスでした。
(下の写真をご覧ください)
新人だった私は初めてこのモデル”クラシック”を見た瞬間心臓が早打ち、とてつもなく惹かれるものがありました。
当時、40mm以上の大きくて分厚い時計が主流だったのですが、36mmで薄型でシンプル、クラシカルな文字盤にホワイトゴールドの心地よい重み、どの特徴をとっても他のブランドの腕時計とは一線を画していて、何度も手にとって眺めたのを今でも昨日のことのように覚えています。


特筆すべきはシースルーになっている裏蓋から見える、ある部分です。
下の写真を見ていただきたいのですが、通常扇状になっているローターの姿が見当たりませんよね。
実はガラスの内側に見える”CLASSIC”・”VIANNEY HALTER”と書いてある丸い金属がなんと、ローターなのです。この丸くくり貫かれた輪っか状の金属が手首のわずかな振動をとらえ、ぐるぐると回ることにより、自動的にゼンマイを巻き上げてくれます。他のブランドにはない、見る者を楽しませる遊び心を忘れず、何より今まで誰も考え付かなかった形のアイデアと実現は、”奇才の時計師”と呼ばれる所以ですね。


数十年経った今でもこれほどまでに印象に残っている、私にとって大切で特別なブランドである同社のことをブログに書くことができるのはとても幸せです。なぜなら年間数本しか作っていないので、ヴィアネイ・ハルター作品に出会える可能性が大変低いからです。
今回、その稀少な中でも更に特注レベルの、年間5本程しか製作していない激レアモデル”アンティコア”が奇跡的に入荷し、ハルター氏の世界観に再び触れることができました。
みなさまにもこの不思議な魅力満載の腕時計を是非、一度ご覧になっていただきたいです。


ヴィアネイ・ハルター社の創立は1994年、今回ご紹介するアンティコアは1998年の氏の初期作品です。1999年にはアンティコアのベゼルなしのシンプルなモデルを発表、2000年にアンティコアから派生したシンプルな三針”クラシック”を発表されました。私のようにこのクラシックからVHを知った方も少なくないでしょう。クラシックが作品の中でも製造本数が多く、同社の代表作といえます。
2001年には角型、最新作は2013年の3000万円近くするスペーストゥールビヨンです。(2003年モデルは下記をご覧下さい)現在製造している型は4型でスペーストゥールビヨン製造の後、未発表となっています。彼の世界観溢れる独創的な作品を目にすることができるのは一体何年後でしょうね。心から楽しみです。

ヴィアネイ・ハルターの名が時計愛好家たちに広まったのは、2001年からスタートしたあるプロジェクトがきっかけでした。そのプロジェクトとは、近年腕時計製作に重点を置いているハリーウィンストンと独立時計師とのコラボのことで、世界に数十人しかいない独立時計師達によって、誰もがあっと驚く独創的な腕時計を製作・発表、それらはすべて限定で、”オーパス”シリーズと名付けられました。

2003年、オーパス第三作目”オーパス3”(下写真です。FHHより引用)を手掛けた人物こそ、今回ご紹介する類稀なる才能の持ち主、ヴィアネイ・ハルター氏です。

オーパス3は、これまでの長い時計の歴史において誰も作ることができなかった非常に巧妙で複雑なムーブメントを積んでおり、氏は時計製造技術の限界に挑戦したそうです。

6つの小さな窓には青・黒・赤の数字が入っており、青が時、黒が分、赤が日付を表示、この機械のすごい所は6つの数字すべてが一瞬にして入れ替わる所です。
世界限定55本ということもあり、私はこのモデルを実際に見たことはないのですが、時の針・曜日の針・月の針・日付とすべて独立させてひとつの作品にしているアンティコアを見て、ハルター氏にしか作れない作品であると感じました。
このオーパス・シリーズによって彼自身が注目されはじめ、初期作品のアンティコアはまさに時計愛好家たちの垂涎モデルで、先程もお伝えしましたがここエバンスにあること自体が奇跡なんですよ。


アンティコアは1998年に初めてバーゼルフェアで発表された際、まるでUFOのようだと評され、その外見と中身で人々を驚かせました。
アンティコアのコンセプトは古くも新しくもない、どんな時代にも属さない特別な時計だそうです。
そして一年に5本程の極めて少ない生産本数の理由は、全てが氏と少しの弟子達とによる手づくりだからです。例えば、手巻き式のねじ込みリューズですが、26個の部品から成るこのリューズは金の塊からくり貫いて形成されており、これらのそれぞれはすべて手作業で仕上げられています。

また、冒頭でも触れましたが、ハルター氏の作品の特徴とも言えるローター。この特許取得済みのローターは”ミステリアスローター”と呼ばれ、ヴィンテージの置時計からインスピレーションを得てデザインしたものだそうです。アンティコアのローターにはクラシックや他モデルにはないデザインが施されています。
それはベゼルにあるものと同じ等間隔のリベット(鋲)で、このデザインにより更に落ち着いたクラシカルな雰囲気を纏い、特別なモデルだと一目でわかります。


アンティコアは4つの文字盤で形成されており、一番大きな窓の文字盤は”時刻”を示し、二番目の窓は”月”と”うるう年”を示します。(J~D・・・January~December / 1~LY・・・1年~英語でうるう年の意味のLeap Year)ちなみにうるう年とは、漢字で閏年と書いてじゅんねんとも読み、一年を365日で計算すると四年で約1日の誤差が出るため、四年に一度の2月を一日増やしてうるう年と呼びます。しかし、128年程でまた一日違って来るので、400年に3回うるう年を省いて97回にすると定めています。

普通の時計はうるう年はおろか、11月のように30日から1日に変わる月の日付も手動で合わせなければならないのですが、このアンティコアはうるう年をも自動で合わせてくれる”パーペチュアルカレンダー”という世界三大複雑機構のひとつを搭載しているんですよ。
この見た目でまさか永久カレンダーを持ち合わせているとは夢にも思いませんよね。
さすが世にも珍しい優れた才能の持ち主、ヴィアネイ・ハルター。意表を突かれて驚いている私達を見て喜んでいる氏の顔が目に浮かぶようです。
そして三番目の窓は”曜日”を示し(M~S・・・Monday~Sunday)、四番目の一番小さな窓で日付を表示します。

ハルター氏は私が以前にブログでお話したF.P.ジュルヌ氏と同じで、大きなメゾンに資本金を出してもらって会社を発展させることに興味がないようで、作品を理解し本当に欲しい人だけに使って欲しいという独立時計師特有の考えの持ち主です。だから大量生産をせず、現在ではオーナーのみがVH社と直接コンタクトを取ることができ、注文を受けてからの製作のみを受け付けているそうです。
そして、ご自身の技術や特許を惜しまず他ブランドへ提供もしています。また、興味のある機械の部品コレクターで、船、飛行機、宇宙船、古い真空管などが工房の中のコレクションルームに所狭しと並んでおり、それらから着想を得て作品のデザインをするのだそうです。

今回ご紹介したアンティコアはディズニー映画、”海底2万マイル”のノーチラス号という潜水艦の窓がモチーフとのこと、作品に物語を感じますよね。また、ハルター氏が現在力を注いでいるスペーストゥールビヨンのレギュラー化のために宇宙船の窓を手に入れ、デザインを練っているそうです。
現代はネットが発達しているので画像検索すればすぐに写真が見られる時代です。しかしヴィアネイ・ハルターという人物は、現代の私たちが思いもつかないことを実現させています。日本でいう平賀源内、アインシュタインやダリ、ピカソもそうですね。奇才と呼ばれた人物は歴史に残り何百年、何千年と語り継がれます。彼の作品も何十年後、何百年後には必ず価値が出て歴史に名を刻むはずだと私は思います。

初めて作品を出してから20周年の今年、クラシックを限定で復刻、クラシック初のステンレス製で製作本数は20周年にちなんで20本限定、文字盤にはなんとおそらく手書きのV.HARTERのサインが施されています。私もいつかVHオーナーになって、この腕に特注のヴィアネイ・ハルター作品を着けることを夢見ているんですよ。

ヴィアネイ・ハルター ”アンティコア”。
この一目見たら忘れることのない大変印象的で稀少な初期作品は、お客様からのご委託品です。
人と一味もふた味も違う腕時計にご興味のある方、一日でも早めのご来店をおすすめいたします。
是非この機会をお見逃しないよう、みなさまのご来店心よりお待ち申し上げております。

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