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オメガのスピードマスターは、なぜ手巻きにこだわるのか。手巻きムーブメントCal.1861の魅力

2020-08-14 11:00

エバンス オンラインショップ担当の大貫です。個人的に好きなモデルの一つとして、オメガの「スピードマスター」があります。特に手巻きのプロフェッショナルは、20年以上愛用していますので、私自身なくてはならないアイテムとなっています。

現在、スピードマスターのバリエーションは幅広く、自動巻きやクォーツ式など様々なモデルがありますが、オメガの『スピードマスター・プロフェッショナル』は、頑なに“手巻き式”にこだわり続けている数少ない時計です。しかし一般的に「使いづらい」と言われる手巻き時計が、何十年も支持されています。


スピードマスター誕生の歴史

オメガのクロノグラフモデル「スピードマスター」は1957年に誕生。同社のダイバーウォッチ「シーマスター」のクロノグラフを元に開発。名前の通りスピード(速度)を図るための時計として、レーシングドライバーやスポーツカーの愛好家向けに制作されました。

当時のクロノグラフは、まだ自動巻き式が開発されておらず、手巻き式は当然で、その中でも初代ムーブメント『Cal.321』は、今では「伝説」と呼ばれるほど、完成度の高いものでした。パテック・フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンなどハイクラスのブランドにも使用されてきた歴史もあります。

スピードマスターは、レーシングカーの振動に対応するため、世界最小と言われた小型のムーブメントを、中空のインナーケースで支える構造によって高い耐衝撃性を確保。後にこの構造が最大の利点となってきます。

スピードマスター ファーストレプリカ

その後1968年に、スピードマスターのリニューアルが行われ、その際にムーブメントが変更されています。新たなムーブメントは『Cal.861』。大量生産を行うため、パーツ数を減らして簡略化するとともに、精度の向上を目的に開発されたムーブメントで、細かな仕様変更を行いながら、現行モデルにおいても採用されているムーブメントです。

現在のムーブメントは1997年にマイナーチェンジされた『Cal.1861』。Cal.861とはメッキの種類が違う程度で、ほぼ同一のものです。1968年に誕生してから50年近くも同じムーブメントを使用しているのはスピードマスター・プロフェッショナルくらいでしょう。それだけ完成されたムーブメントと言えます。


Cal.861

スピードマスター最大の偉業

NASAの有人宇宙ミッションの全てに使用された唯一の時計として、オメガのスピードマスターは万人が知ることになります。NASA公式時計として、実際に様々なミッションに携行されたスピードマスター。NASAの装備品ではあるものの、市販品が採用されているため、いまでも普通に購入することが出来る珍しいモデルです。

特に有名なのが、1969年の人類初となる歴史的な快挙【アポロ11号の有人月面着陸】と、1970年に実際に起きた事故で、映画にもなった【アポロ13号の危機】。スピードマスターの存在感を高めたエピソードとなっています。

月面着陸後のスピードマスターは、“ムーンウォッチ”と呼ばれるようになり、以降、裏蓋には「FLIGHT-QUALIFIED BY NASA FOR ALL MANNED SPACE MISSIONS」(すべての有人宇宙計画用としてNASAが認証した) 、及び「THE FIRST WATCH WORN ON THE MOON」(着用されて月に行った最初の腕時計)の文字が刻まれています。


月で実際に着用されたムーブメントは?

月面着陸時に実際に着用されたスピードマスターのムーブメントについては、アポロ11号による月面着陸が1969年のこと。ちょうど後継機との切り替わり時期と重なっていたことで、長らく論争がありましたが、 スイスにあるオメガ博物館の確認のもと、初代の『Cal.321』ということが判明しています。

偉業の数々

過酷なテストを唯一クリアし、NASAの公式時計として採用されたのは1965年。ジェミニ計画やアポロ計画に携行されますが、正式採用となる以前から、オメガのスピードマスターは個人の装備品としてマーキュリー計画で使用されるなど、既に耐久性の高さが実証されていました。

宇宙での活躍は数知れずありますが、もちろん宇宙関連の活躍に留まらず、1968年に北極探検の装備品に選ばれ、マイナス52℃の低温化でも正常に機能したと言います。

また、1989年には著名な登山家であるライホルン・メスナー氏による徒歩での南極横断時に着用。マイナス40℃、2800キロを3か月かけ踏破する際に使用されるなど、その実力を遺憾なく発揮しています。

スピードマスター 現行モデル Ref.311.30.42.30.01.005

スピードマスターと言えば 「手巻き」

昨今のモデルは“自動巻き式”が主流となっており、その中でもスピードマスターは、あえて手巻き式を作り続けています。もちろん自動巻きのバリエーションも豊富で、むしろモデル数は自動巻きの方が多いくらいですが、「スピードマスターと言えば手巻き」と認知されています。

では、なぜオメガはここまで『手巻き式』にこだわるのか。その理由を推察してみました。

手巻きにこだわる理由①

現代のムーブメントに比べると、スペック面で見劣りするものの、基本設計の完成度が高く、非常に丈夫な作りになっており、むしろ変える必要がないムーブメントで、コストパフォーマンスも良く、シンプルな分、整備性も高い。

手巻きにこだわる理由②

現在もNASAや、国際宇宙機関の船外活動(EVA)に対して認定を受けている唯一の時計で、宇宙空間での操作が必要となるため、重力の影響で動く自動巻きのローターが不要。過酷な環境で正確な計測が出来るクロノグラフと、堅牢なムーブメントが必要であることから、手巻きのムーブメントが必要。

手巻きにこだわる理由③

過去の偉業へのリスペクト 。月面に降り立った時計という称号を持つスピードマスターは、いまのところ唯一無二の存在。時計のデザインはもとより、ムーブメントも変えることはないとと思われる。

といったことでしょうか。

しかし2019年に、ロングセラーの現行手巻きムーブメントをマスターコーアクシャル化した『Cal.3861』の開発や、2020年には、伝説の初代ムーブメント『Cal.321』を当時の仕様で再設計し復活させるなど、オメガの手巻きムーブメントも進化しています。ただコスト面の問題もあることから、レギュラーモデルには採用されていませんが、今後はどうなってくるのか、気になるところです。

Cal.3861
出典:オメガ公式サイトより
https://www.omegawatches.jp/ja/watch-omega-speedmaster-moonwatch-anniversary-limited-series-31020425001001


現行スピードマスター 搭載 Cal.1861の魅力

レマニア社が設計した「Cal.1861」は、機械式クロノグラフとしてはシンプルな設計のクロノグラフムーブメントで、無駄がなく質実剛健のイメージ。誕生した1968年から半世紀たった現在においても現役で、傑作ムーブメントと言っても過言ではありません。

スピードマスターのムーブメントとして有名ですが、実は他のブランドにも同一ムーブメントが搭載されており、過去にはブライトリング、タグホイヤーなどでも使用されてきました。

しかし、巻き上げの持続時間(パワーリザーブ)は48時間程度と、最新のモデル(約70時間)に比べるとやや物足りなく、精度検定であるクロノメーターの認定もありません。また秒針停止機能(ハック機能)もなく、一般的に扱い辛さは否めません。

写真はシースルーバック仕様の“Cal.1863” 1861とほぼ同一

実際にスピードマスターを使い続けた感想

20年以上スピードマスターを使い続けた個人的な印象は、『丈夫』ということに尽きます。もちろん使い方にもよりますが、金属疲労によるゼンマイ切れ以外では、故障したことはありません。

個人所有のスピードマスター

精度に関しては、私自身あまり気にしないタイプですので、何とも言えませんが、特に問題は無いと思います。それ以上に、日々ゼンマイを巻き上げるルーティーンによって、非常に愛着が湧く時計と言えます。クセはありますが、お勧めのモデルです。

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