世界初の自動巻きクロノグラフを追求して誕生した『タグ・ホイヤー モナコ』
2020-08-17 12:00
皆さまこんにちは。
いつもブログをご覧いただき、ありがとうございます。
本日は、世界初の角型ケースの自動巻きクロノグラフとして誕生した、タグ・ホイヤーの“モナコ”についてご紹介いたします。
モナコが誕生するまで
モナコは1969年3月に、初の自動巻きクロノグラフとしてお披露目されました。
それまでのクロノグラフは手巻き式でした。
手巻きだと、必ずリューズを引き出してゼンマイを巻上げる必要があり、その頻度の高さによりリューズ内の防水用パッキンが傷んでしまうため、防水性能の部分での不安材料となっていました。
そのため、自動巻きの機械を搭載することにより手巻きをする機会を少なくし、パッキンの痛みを抑えることにより防水性能は高めることが出来る。と、クロノグラフを自動巻き化することに多くのメーカーが挑んでいました。ですが当時の技術では時計の厚みが分厚くなってしまったり、コストがかかりすぎてしまったりと、商品化するには数々の問題点がありました。
そんな中ホイヤー(現在のタグ・ホイヤー)は、ブライトリング、ビューレン・ハミルトン、ムーブメント製造メーカーのデュボア・デプラと共に約3年という期間をかけて自動巻きクロノグラフを共同開発しました。そして、1969年3月に<キャリバー11 (通称 “クロノマティック ” )>が大々的に発表されています。
ちなみに、同時期に発表され、現在でもとても人気のあるムーブメントとして、ゼニスの“エル・プリメロ”があります。当時クロノマティックとエル・プリメロは良いライバル関係にあったと言われています。
キャリバー11は、共同開発した各メーカーのモデルに搭載され、ホイヤーはスクエア型のクロノグラフモデルとしてモナコを新たに製作しました。当時、角型ケースに防水性能を持たせることは難しいとされていましたが、ケースメーカーのピケレが開発に成功したことによって、モナコが誕生することとなりました。
このとき、モナコはリューズを通常とは反対側の9時位置に設定されています。これは、自動巻きであることを強調するための配置だったようです。
キャリバー11搭載モデル
モナコのモデル名の由来は、クロノグラフを搭載したレーシングウォッチとして、モナコグランプリにインスピレーションを得て、この名前がつけられたようです。
その後、キャリバー11は、ホイヤーの別モデルである、カレラやオータヴィア、シルバーストーン、モンツァ、スキッパー、カリキュレーター等、次々と搭載されていきました。
ちなみに、ブライトリングは“ナビタイマー”へ、ハミルトンは“フォンテーヌブロー”に搭載し、発表しています。
モナコとスティーブ・マックイーン
1969年の発売当初は、あまり人気があるとはいえない状況だったモナコですが、翌年の1970年、映画『栄光のル・マン』で主演のスティーブ・マックイーンが着用したことにより、人気モデルとなるきっかけとなりました 。この映画の撮影の際に、別ブランドの時計も用意されていましたが、スティーブ・マックイーン自らモナコを選んだそうです。また、衣装のドライビングスーツにはホイヤーのブランドロゴまで入っており、ホイヤーに対する愛着のようなものを感じます。この映画以降も、両者はとても良い関係を築いていったようです。
クォーツショックによりモナコ、生産終了
1970年の映画公開以降、順調にきていたモナコですが、数年後には厳しい状況に陥ってしまいました。
キャリバー11の開発時には、低コストを目指していましたが、完成してみると高価格になっていたり、防水角型ケースへの拘りを追求するあまり、同時期に販売されていたモデルと比べ、高価なモデルとなっていました。それに加えて、不況も相まって、モナコは一般的な手巻き式のムーブメントに変えるなど、路線変更を余儀なくされましたが、セイコーによるクォーツ式時計が発表され、低価格で高精度な時計が世界を折檻し、所謂クォーツショックが起りました。
このことはホイヤーだけでなく、スイスの機械式時計を生産するメーカーに与えた影響は非常に大きいものとなります。
モナコも1970年代半ばには、残念ながら生産終了へと追い込まれてしまいました。
1998年、モナコ復刻
モナコが生産終了となってから約20年後の1998年、世界5000本の限定生産として復刻されました。ブラック文字盤やダイアルのデザインなど、1969年当時とは異なる点もありますが、『 HEUER 』表記ロゴやプラスチック風防が採用されており、発売と同時に大きなインパクトと共に早い段階で完売となるなど話題の1本となりました。
その後、映画着用モデルを再現したモデルを発表したり、ベルト・ドライブという画期的なムーブメントを搭載した“モナコV4”や、クォーツと手巻きのふたつのムーブメントを搭載したリバーシブルタイプの“モナコ Sixty Nine”など、タグ・ホイヤーの人気モデルのひとつとして続いています。一度は生産終了となったモナコですが、昨年には誕生50周年を迎え、現在ではタグ・ホイヤーの定番モデルのひとつとして愛されています。
どこかレトロな雰囲気と、現代的なシャープさを併せ持つモナコシリーズ。
ぜひいちど見てみて欲しいモデルのひとつです。