現在、日本だけではなく世界中で大人気の腕時計と尋ねられれば、1、2番目にランクインするモデルは、間違いなく「サブマリーナー」と回答出来る。
サブマリーナーとは、スイスの老舗時計メーカーであるロレックス社のダイバーズウォッチである。
モデルの歴史は古く、初登場は1953年。今もなお製造し続けられているロレックスの傑作スポーツモデルである。その性能は、300mの水圧に耐えられる設計となっており、普段使いからマリンスポーツまで幅広い形での使用が可能となっている。
また、サブマリーナーというシリーズには、ノンデイト(日付無し)とサブマリーナーデイト(日付有り)が存在する。半世紀以上の歴史の中で、腕時計の防水性や精度が向上していく中、それぞれの風防やベゼル、ブレスレットなどの外装部品も進化を遂げていく。
本日はその中でも、腕に時計を固定するという重要な役割を与えられているブレスレットに焦点を合わせてみた。実際にどのようなブレスレットが使用されているか、気になる特徴と共に、順を追って解説を行なっていきたい。
オイスターブレスの種類
現在までにサブマリーナーに使用されたオイスターブレスの種類は、大まかに分けると5種類となる。それぞれ、リベット、巻き込み、ハード(フラッシュフィット分離型)、ハード(フラッシュフィット一体型)、そしてハードタイプの最新型である。
オイスターブレス リベットタイプ
1種類目は、リベットタイプ。1960年代まで使用されていたブレスレットである。ブレスレットのコマとコマをつなげた後に、ブレスサイドをリベット留めにしていることが特徴となっている。1953年登場のノンデイトには、こちらが使用されていた。
下の画像は、左右にブレスレットを引き伸ばしたもの。当時のリベットタイプには、内部にバネが入っていてブレスレットが伸びるエクステンションも存在した。
これらの、ブレスレットはアンティークモデルに使用されていたが、年々市場での流通は減少しており、状態の良いブレスレットを探すのは大変困難となっている。
オイスターブレス 巻き込みタイプ
2種類目は、巻き込みタイプ。60年代半ばから70年代後半まで使用されていた。ブレスレットの金属パーツを、折り曲げて部品が形成されていることが大きな特徴である。いわゆる、フォールディングブレスレット。「巻きブレス」とも呼ばれている。
なお、巻き込みタイプには、 ケースとブレスレットの繋ぎ目のフラッシュフィットという部品が、ブレスレットから取り外せる分離型と、取り外せない一体型の2パターンがある。
フラッシュフィット分離型(9315)
フラッシュフィットが取り外せる分離型(9315/280)は、60年代半ばから70年代半ばまで使用された。「9315/280」の「9315」はブレスレット番号を、「280」はフラッシュフィット番号を意味する。
ちなみに、1969年登場のサブマリーナーデイトは、こちらが使用されていた。
フラッシュフィット 一体型(9315)
ブレスレットの形状は一緒だが、フラッシュフィットが一体化されて部品の強化が施されたもの(9315/380)。70年代前半ばから後半まで使用されていたようである。
※巻き込みタイプは、ブレス中央の板状の部品が、コマとコマを巻き込んで繋げる仕組みとなっている。その為、サイズ調整時には、道具を使用してブレス中央の部品を裏側から剥がすことになる。その後、部品を元の状態へ戻すときには細心の注意が必要となる為、サイズ調整を希望する場合は熟練の技術スタッフへ依頼が望ましい。
オイスターブレス ハードタイプ(フラッシュフィット分離型)
3種類目は、ハードタイプのフラッシュフィット分離型である。70年代後半から使用されているブレスレットであり、文字通り全体的に強化が施されている。コマの両サイドを無垢素材に変更して、巻き込みタイプより堅牢性を増加させたことが、大きな特徴である。
デザインは、この辺りから現行モデルに近づいていく。尚、こちらのオイスターブレス(93150)は、一部マイナーチェンジも施されていくが、中々ひと目では分かり難いようである。
フラッシュフィット 分離型(93150)
フラッシュフィットはブレスレットから取り外せる分離型(93150/580)。バックル以外の外観は現行のものと似ているが、中央の部品は中空のままとなっている。また、バックルのダブルロック表面が、溝は無くシンプルな仕上げとなっている。
フラッシュフィット分離型、マイナーチェンジ(93150)
「93150」のマイナーチェンジ(93150/593) 。フラッシュフィットが変更されるが、外観の違いは見られない。ダブルロック表面は溝無しのまま。
フラッシュフィット分離型、ダブルロック溝有り(93150)
フラッシュフィット分離型は同様だが、シンプルだったダブルロックの表面が、クラスプの溝の模様と同様の溝有りに変更された(93150/501B)。 こちらは耐久性というより、統一感の向上を目指したマイナーチェンジと思われる。
オイスターブレス ハードタイプ(フラッシュフィット一体型)
4種類目は、ハードタイプのフラッシュフィット一体型である。「93150」との変更点は、分離型だったフラッシュフィットが一体型になって強化され、更に堅牢性は増したこと。尚、今まで存在していたフラッシュフィット番号は、こちらの「93250」から廃止となった。
また、当時のサブマリーナデイト(16610)には使用されたが、ノンデイト(14060、14060M)には使用されなかった為、ノンデイトのブレスレットは分離型のまま、現行モデルまで変更が見送られた。
また、ブレスレット中央の列は中空のままだが、ウェットスーツの上からでも楽に時計を装着可能な、フリップロックシステムのプレートが一部コマへ変更され、堅牢性がアピールされている。
オイスターブレス ハードタイプ(最新型)
5種類目は、現行のハードタイプ(97200)である。全ての箇所に無垢素材を使用し、今まで中空であった箇所も強化され堅牢性が向上した。
また、堅牢性のみならずクラスプのデザインも若干変更され、ダブルロック表面に、ロレックスのマークが取り付けられている。こちらのブレスレットは、サブマリーナーデイト及びノンデイトと、両方の現行モデルに使用されている。
工具を使わずにブレスレットの長さを微調整できる「ロレックスグライドロック エクステンション システム」付きのブレスレット。 特許を取得したこのシステムは、最大約20mmまで2mm刻みに調節することができ、フリップロックエクステンションにより、さらに26mmまでの延長が可能。
まとめ
メーカーから詳しい年代などの発表がない為、確認出来ない内容も多いのだが、ダイバーズウォッチひとつ取り上げても、ブレスレットの隅から隅まで、こだわりを持って製造されていることが分かる。
現状で満足せずに、常に最善も求めて進化するロレックス社の姿勢こそが、世界中で愛される理由である。今後も、我々を驚嘆させる新しい腕時計を、造り続けていくことになるだろう。