エバンス オンラインショップ担当の大貫です。
パテック フィリップのブランドの象徴である十字の紋章「カラトラバ十字」。洗練されたパテックフィリップの社標である「カラトラバ十字」ですが、どんな理由でロゴにしたのか? またどのような由来があるのか? など気になるところですよね。
と言いますか、個人的に、なんとなく気になったので、調べてみました。
パテックフィリップのカラトラバ十字
『カラトラバ十字』は、パテック フィリップによると1887年から使用されている社標で、高級感漂うパテック フィリップらしいエンブレムと言えます。もともと、この十字の紋章は 【12世紀に実在したカラトラバ騎士団(カラトラバ十字軍)の紋章】 ということは、時計好きの方はご存じだと思います。
十字軍ですから、十字の紋章。そこに百合のモチーフ(フルール・ド・リス)がデザインされてます。百合のモチーフと言えば、フランス王家の象徴だったり、フィレンツェの紋章を思い浮かべますね。
百合の紋章『フルール・ド・リス』とは?
フルール・ド・リスは、よく“百合(ユリ)の花”と言われますが、百合というよりも アヤメ(アイリス)の花を様式化した意匠を指すようです。「Fleur-de-lis」とはフランス語で「アヤメの花」を意味しています。アイリスの一種を様式化したものらしく、フルール・ド・リスを思わせる装飾品は、文明のごく初期から工芸に使用されています。
他ブランドのロゴの由来
時計メーカーでは、比較的ブランド名がそのままロゴになっているところが多いく、むしろロレックスやパテックフィリップの様に、エンブレムのようなロゴを使用しているブランドは少数派です。
海外ブランドの有名どころをピックアップしてみました。もちろん意味がある様です。
【ウブロ】
HUBLOTの頭文字である「H」を象ったロゴ
【オメガ】
ギリシャ文字の最後の “Ω”。究極を表す同社ムーブメントの名前から
【 ヴァシュロン コンスタンタン】
ゼンマイの巻上を制御する部品がマルタ十字に似ていたことが由来の一つ
【チューダー】
堅牢性と信頼性を象徴する「盾」 をイメージしたロゴ
【ゼニス】
「ZENITH」が頂点を意味する社名の為、天空の頂点である「星」を象ったロゴ
【ブライトリング】
空と海を制する意図の「翼」と「錨」。それと頭文字「B」の組み合わせ
【ロンジン】
未来に羽ばたく意味の「翼」と「砂時計」の組み合わせ
【ロレックス】
ロレックスも謎だが、時計界の王を意味する「王冠」、「職人の手」など諸説あり
などなど、何かしらブランドの意図や共通点が感じられますね。
一方パテック フィリップはというと、十字の紋章『カラトラバ十字』。ヴァシュロンの「マルタ十字」に似ていますが、あまり繋がりは感じられません。しかしながら、当時から時計界の頂点に位置するパテック フィリップのロゴですので、気になります。
なので、由来や意味を調べてみました。
カラトラバ騎士団
由来となっているカラトラバ騎士団(カラトラバ十字軍)とは、8世紀頃から15世紀末まで続いた、イベリア半島でのイスラーム支配に対するキリスト教徒による反抗運動「レコンキスタ」で活躍したスペインの騎士団の一つです。
「レコンキスタ」とはスペイン語で再征服の意味で、国土回復運動や再征服活動とも呼ばれます。歴史の授業でやりましたね。
12世紀、スペイン・カスティーリャのシト―修道会の傘下騎士団として、スペインで初めて設立された宗教騎士団と言われています。カラトラーバ・ラ・ヌエバに拠点となる城をかまえたことで、“カラトラバ騎士団”と呼ばれる様になりました。
1487年のグラナダでの戦いで戦死した当時の騎士団長の死後、カラトラバ十字軍は解散。1492年にスペイン王国がイスラーム教国の最後の拠点であるグラナダを陥落し、レコンキスタが終結します。ちなみに同じ年にスペイン王の命によりコロンブスの大西洋横断が成功し、その後の大航海時代に繋がります。
パテック フィリップとカラトラバ騎士団の関係
公式サイトには、
パテック フィリップの名と結びついたエンブレムが130年にわたり、愛好家、コレクターから熱狂的に追い求められてきました。そのエンブレムとはカラトラバ十字です。カラトラバ十字は1887年4月27日に商標登録され、法的に保護されています。商標登録は1908年1月25日に更新され、「カラトラバ十字(Croix de Calatrava)」が、このパテック フィリップ・ブランドのエンブレムの正式名称として登録されました。
パテックフリップ公式サイトより引用
ジャン・アドリアン・フィリップが1887年(アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックは10年前に死去)にカラトラバ十字をエンブレムとして採用した理由は、そのデザイン的な美しさ、およびその数百年におよぶ歴史にあったとされています。カラトラバ十字の完璧な均衡は、時を超越した美しさを持っています。この意味からカラトラバ十字はパテック フィリップの価値と、長期的な企業理念を表す理想的な象徴となっています。
となっています。
デザイン的な部分と、歴史的な背景から採用したようです。その為、パテック フィリップとカラトラバ十字は、直接の繋がりはないことが分かります。 しかし、パテック フィリップが、なぜこの紋章をロゴにしたのか、いまいち見えてきません。
生まれ故郷の紋章にヒント?
さらに公式のサイトを見ていくとヒントがありました。
「ジャン・アドリアン・フィリップが生まれた村、バゾッシュ‐グエのあるフランスのウール・エ・ロワール県の紋章は、3つの百合の花からなっています。パテック フィリップの技術的、デザイン的卓越性を表現するエンブレムとして、プレステージと君主の象徴としての百合の花のテーマが選ばれたといえるでしょう。」
パテックフリップ公式サイトより引用
この辺りで、ようやく繋がりが見えてきました。
なるほど、生まれた村の紋章にいているのか? ということで調べてみました。下の画像が、 フランスのウール・エ・ロワール県の紋章です。確かに「フルール・ド・リス」が3つあるのが分かります。
確かにあります・・・・
けど、なんだか後付けっぽい感じもします。こういった紋章は、「百合のモチーフ」結構使ってますしね。
パテックフィリップを代表するコレクション「カラトラバ」
カラトラバの名前を冠するパテックフィリップのコレクションがります。「96(クンロク)」でも有名なカラトラバ。
カラトラバのコレクションは、1932年に誕生しましましたので、ロゴの商標登録よりも後になります。このころには既に、カラトラバ十字 = パテックフィリップとなっていたでしょうから、パテックフリップの代表作として「カラトラバ」は作られたと思います。
結局謎が深まるばかりですが、パテックの商標登録から、既に100年以上経過していますので、[カラトラバ十字 = パテック]という認識になっていることは疑いようがありません。
エンブレムの件、調べていくと非常に面白いことが分かりました。また機会があれば、他のエンブレムも調べてみようかと思います。