今も愛され続けるロレックスの名機「Cal.1565」のメンテナンス
2020-03-07 11:00
ブログをご覧の皆様こんにちは。今回のブログはエバンス・アフターサービス部より、ロレックスのメンテナンス工程のご紹介をしたいと思います。
取り上げるのは、1960年代のアンティーク・デイトジャスト(Ref.1601)の自動巻きムーブメント「Cal.1565」。こちらのオーバーホールについて説明して参ります。
ロレックスのキャリバー“1565”について
1957年にCal.1530が製造され、改良を重ねながら1987年頃までの約30年に亘って製造されたCal.15系。今でも現役で使用できるムーブメントで、耐久性が高い所も名機といわれる所以です。 このムーブメントを搭載するのは、メンズのスタンダードモデルのデイトジャスト。シンプルながら視認性もよく、現在でも需要が高いモデルです。
「丈夫」と言われるロレックスのムーブメントですが、それでも定期的なメンテナンスをしないと、安定的な精度を出すことは出来ません。特に今回は古いモデルですので、ムーブメントに変色も出て来ています。
長くメンテナンスをしていないと、部品の摩耗等により修理代が高額になる場合もありますので、不具合を感じたら早めに点検することをお勧めします。
下の画像の様に、ローターもかなり変色し、くすみが出ています。オーバーホールをしてもこんな感じだとメンテナンスをした感じはしませんね。
普通に洗浄しただけでは取れないものも多く手間がかかるものの、エバンスでは出来るだけ変色、くすみを取りきれいになるように心掛けています。
受け(ローターの台座部分)には【1560】と刻印されていますが、当時のロレックスでは、キャリバーの表記はそこまで細かくなく、カレンダーが付いているキャリバーを【1565】と呼びます。
ロレックス・ムーブメントにある刻印 “D” の意味
上記画像では、地板に彫らているムーブメントナンバーの最初に【D】が入っているのが分かりますでしょうか。これはカレンダー(DATE)付きのムーブメントと判断します。
ちなみにデイデイトは【DD】(DAY-DATE)。ミルガウスは【M】になります。1978年頃から次世代のムーブメント「Cal.30系」に進化しますが、その後もCal.15系は生産され続けます。それ以降、Cal.15系ではカレンダーが付かないものの、上記の「D」が入っているモデルもあり、そこらへんの判断は難しくなります。
パーツの分解と修正
機械を点検しながら一つ一つ分解していきます。 上の画像は全体をばらしたところです。シンプルなムーブメントですが、分解するとかなりのパーツ数になります。非常に小さいパーツもありますが、部品点数は何点かわかりますでしょうか?お時間ある方は数えてみて下さい。
ぐるぐる長いのはゼンマイ。時計の動力にあたる部分です。こちらは金属疲労などの劣化が見えない部分ですので、オーバーホールごとに交換いたします。
筒車の歯のひとつが傷んでいます。ピンセットの大きさから、傷みの部分の小ささが分かると思います。このままですと遅れ、止まりの原因となりますので、手作業で修正していきます。
傷んでいた歯を修正しました。 細かいところですが、非常に大事な部分です。 これでスムーズに回転しますね。
ヒゲゼンマイも狂いが出ていたので修正しました。ヒゲゼンマイの回転がきれいに渦巻き状になると正常な状態となります。写真に撮るにはなかなか難しいですが。
洗浄・組み立ての工程へ
他にも色々調整や作業があるのですが、細かくなりすぎるので省略します。機会があれば、またご紹介できればと思います。
全てを確認、調製して洗浄していきます。傷がつかない様に出来るだけ大きいパーツは単体で入れておきます。
洗浄後に組み立てました。変色、くすみも取れて最初の画像に比べ、見違えるほど綺麗になりました。その後、精度の確認、調整しながら針付けまで進みます。
ローターもかなり綺麗になりました。普段お客様には見えない部分ですが、機械式の時計の魅力のひとつにムーブメントの美しさもあるので、たとえ見えなくても手を抜くことなく、価値を損なわないよう努めています。
ケーシングを行い完了
ケーシングまで行いました。これからランニングテスト、巻き上げ、持続テスト等を行います。細かい調整を経て全体を確認・点検して完了となります。
現在では日本ロレックスでは修理は受付出来ないモデルも多くなってきており、このムーブメントもその一つになります。 今でも需要があるモデルですが、新品モデルが高額になっている昨今、今後さらに需要が高まるのでは?と思っています。