世界初の年次カレンダー:パテックフィリップRef.5035
2020-01-21 11:00
ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
本日は高級時計市場の中でも、別格の存在感、そして絶大な人気を博すパテックフィリップから、日常使いにも便利なコンプリケーションウォッチである年次カレンダーをご紹介いたします。また、パテックフィリップが開発した年次カレンダーですが、その初代モデルであるRef.5035についてもご紹介いたします。
年次カレンダーについて
腕時計には時刻のみを表示するシンプルなモデルから、ストップウォッチの役割を果たすクロノグラフ、異なる時刻を読み取ることが出来るGMT、月の満ち欠けを表すムーンフェイズ、設定した時刻を音や振動で知らせてくれるアラーム等、実に様々な機能が存在します。
今回ご紹介の年次カレンダーは、2月を除き大の月、そして小の月を機械が自動調整することで、手動でのカレンダー調整を1年に一度だけに抑える機構です。また、年次カレンダーについて、その歴史は意外なほど新しく、製品としては1990年代にパテックフィリップにより完成されました。
1991年 産学協同プロジェクトスタート
1991年、パテックフィリップは新しい領域の製品開発を、ジュネーブ州立技師学校の卒業研究課題として提示し、そこから導き出された機構こそが年次カレンダーであり、産学協同のプロジェクトとして研究開発が始動しました。
まず、年次カレンダーの開発にあたり基本的な考え方は、従来の永久カレンダー機構を簡素化することでは無く、シンプルなカレンダーモデルをベースに、その延長線上に年次カレンダーを実現させる方針がとられました。
では、なぜ永久カレンダーをベースに年次カレンダーを作らなかったか?という点においては、パテックフィリップの狙う新たな製品領域がハイエンドモデルではなく、ある程度の量産が見込める価格帯に設定されていたことが大きな理由としてあげられます。
仮に、既存の永久カレンダーをベースに開発を進めた場合、永久カレンダーで用いられる大型レバー等のパーツについては、デリケートで組み立てにおける難易度が高く、製造コストが高くなりすぎてしまうことが容易に想像できました。
そこで、製造コストを抑え、組立調整が比較的容易で耐久性に優れた、今回のプロジェクトが望む、実用機としての年次カレンダーを実現するに当たり、センターローターの自動巻きムーブメンCal.315がベースに採用され開発が進められました。
1996年 世界初の年次カレンダー誕生
プロジェクト始動から5年後の1996年、ついに世界初の年次カレンダーRef.5035が発表されました。それは同時に、腕時計の世界に全く新しいジャンルが生みだされた瞬間でもありました。
そして、この新しいコンプリケーションウォッチは、時計専門誌モルトン・パッション誌の「ウォッチ・オブ・ザ・イヤー」に審査員全員一致で選ばれるなど、その年の時計業界の話題を独占するに至りました。
それでは、Ref.5035が実際にどの様な時計なのか、ホワイトゴールドモデルのRef.5035Gを例にご紹介してまいります。
商品詳細はこちらからご覧下さい。
まず初めにケースデザインについてですが、全体的に丸みが感じられる柔らかなフォルムを持ち、96系のシャープな雰囲気、あるいはクルドパリベゼルのスリムな印象とも異なる、時計としてまさに中庸とも言うべきフォルムが特徴であります。
ダイヤルに関しては、整然と並ぶインダイヤルと多針が精緻な印象が与え、見た目からも機械式時計ならではのギミックを楽しむことが出来ます。また、外周を囲むローマンインデックスが上品な表情を生み出すと同時に、時短針とともに夜光塗料が塗布され、暗所での視認性も確保されています。
搭載されるCal.315S QA24Hは、センターローターの自動巻きムーブメントであり、そのベースは定評のあるCal.315。また、仕上げはレベルは時計好きであれば周知の通りですが、ジュネーブシール取得のムーブメントは、鑑賞にも十二分に耐えうる美しさを持っています。
パテックフィリップの受け継がれる伝統
Ref.5035に採用されるデザインは、派生モデルであるムーンフェイズを備えたRef.5036、そして2005年発表の後継機種であるRef.5146にも継承されています。
また、2004年にはカレンダーをディスク表示とした大振りなトノーケースのRef.5135、2010年には同じくディスク表示のRef.5205が発表され、パテックフィリップの年次カレンダー搭載モデルは、バリエーションを増やしてきました。
しかしながら、その原点たるRef.5035は、今なおパテックフィリップの年次カレンダーを象徴するモデルであり、年次カレンダーの祖として、その価値は普遍的なものとして受け継がれています。