こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
今回はデイトナ・エクスプローラーIに続き、エクスプローラーIIに的を絞り、徹底比較をしてみたいと思います。
エクスプローラーIIとは
1971年に発表されたエクスプローラーIIは、エクスプローラーIの上級モデルとして、昼夜を瞬時に見分けるという最大の特徴を持って登場しました。当時の主な愛用者は、もちろん“探検家”ですが、洞窟や火山学者たち、極地を探検する少し特殊な探検家たちでした。
暗闇を探検する彼らにとって、昼夜のわかる腕時計は必須で、非常に実用的な機能として重宝されていました。現在では、2カ国の時刻を同時に表示するGMT機能としてご説明していますが、本来の使い道はその名の通り、探検です。
初代エクスプローラーIIRef.1655は、正確な時刻を読み取りやすい秒毎に長めの刻みを入れたインデックス、昼夜を示す鮮やかなオレンジ色の4本目の針、固定ベゼルには2〜24までの数字、サイクロップレンズ付デイト表示。現行モデルも約50年前のデザインを大きく変えることなく、このオリジナルに忠実にかつ、最新技術で仕上げています。どのモデルにも言えることですが、ロレックスは何年経っても本当に変わらないということです。特殊探検家のための実用時計、それがエクスプローラーIIなのです。
Ref.16550とは
二代目・第二世代のエクスプローラーⅡ。1984年~1988年製造、実際に市場に出たのは僅か二年間程だそうで、稀少モデルのため、後述する白文字盤、”アイボリーダイヤル”・センタースプリット(クロノメーターを示す”SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED”の文字がキレイに真ん中で分かれている印字の文字盤)で300万円を超えるプレミアムモデルとなっています。キャリバーはCal.3085で、前作との大きな違いは短針が単独操作できるようになったことです。
私見ですが、上写真のRef.1655からの大きな変身をしたモデルなので、Ref.16550はロレックス社が試作品として作ったのではないかと思います。
アイボリーダイヤルとは、白文字盤にのみ存在するモデルで、最終年にはインデックスもすべて陶器のように真っ白なポーセリンダイヤルという文字盤や、インデックスのみアイボリーになっていて、文字盤のみ真っ白というモデルも存在します。確定ではないのですが、持ち主の使用環境・状況や、保管されていた場所・温度などにより、元は真っ白だった文字盤製が経年変化により、アイボリーになったということが考えられます。製造年によって文字盤塗料の含有物を変え、よりよいものに進化させていく、ロレックス社の働きが感じられますよね。
インデックスはトリチウムのままですが、四角だった形を丸型へ変更、秒の刻みも小さくなり、視認性がグッと高まりました。針も変更となり、他のスポーツモデルと同じベンツ針を採用、このモデルで最大の変更点は太めのオレンジ色のGMT針からベンツ針や秒針との相性のいい細さの赤色のGMT針へ変更されたことで、インデックスの上に乗る表示板はベンツマークと同じくらいの大きさの正三角形になり、非常にバランスの取れた文字盤へと生まれ変わりました。
そして前作の面影を残すためでしょうか、24時間表示ベゼルの大きなアラビア数字はそのままに(初代と第三世代モデルに比べてはっきりとした太い印字なのが特徴です)エクスプローラーⅠとはもちろんのこと、他のモデルと一線を画すモデルそれが、Ref.16550からの新生エクスプローラーⅡなのです。
Ref.16570とは
1991年から2011年まで生産された、第三世代のエクスプローラーⅡ。
先にご紹介したファーストモデルの次に、Ref.16550という僅か2年の短命モデルが存在し、キャリバーを新たにRef.16570は誕生しました。
上記チャプターで詳しくお話したRef.16550からガラスがプラスチック風防からサファイアクリスタルへと変更となり、Ref.16550はケース、ブレスレットにも堅牢性を持たせたRef.16570の礎になったモデルです。大きな違いはキャリバーの変更と、24時間ベゼルの文字の太さで、このモデルから印字が少し細くなりました。キャリバーはCal.3085からCal.3185へ、2007年頃にはCal.3186へとグレードアップ、具体的には片手で支えていた時計の心臓部であるテンプを両手で支えるツインブリッジへ、2007年からは前回記事でもお話したテンプをブルーパラクロム・ヒゲゼンマイへ変更。このゼンマイは現行にも採用されているロレックス社がもっとも注力している部品のひとつです。
裏蓋が閉じているため、普段は目にすることができませんが、それはそれは美しい青色のゼンマイで金色のテンプの中に鮮やかな青色が入ることで、より一層美しさが際立ちます。そして普段はあまり注目されないのですが、地板へのペルラージュ装飾や、ブリッジの丁寧に面取りされた仕上げなどロレックス社も他の有名メゾンと同じく、私達の目に触れないムーブメントにまでも完璧な仕上げをしている、卓越したメゾンであると言えるでしょう。
エクスプローラーIとは違い、Ⅱは色は黒と白の二色展開ですが、私はこの業界に入る前に、ロレックスが文字盤の色替えができることを知ったモデルがエクスプローラーIIだとこの記事を書いていて思い出しました。同じ型番、同じケースだからできる素晴らしい提案ですよね。この頃、エクスプローラⅠばかりが脚光を浴びていたのですが、このRef.16570から人とは少し違ったモデルを選びたい方が少しずつⅡにも目を向けるようになり、発売当初は30万円以下だったのが2020年現在、約100万円にまでプレミアが付くほど、人気モデルとなったのです。
Ref.216570とは
2011年、最初のエクスプローラーIIから40年にあたる節目に誕生した大胆な作品、第四世代最新モデルです。なぜ大胆なのかというと、前作40mmより2ミリもサイズアップした、スポーツタイプで二番目に大きなモデルで、一際目を引くデザインだからです。
ケースサイズだけでなく、インデックス、ベゼルの数字はもちろんのこと、針まで太くなり、更に前作の赤いGMT針からオリジナルと同じオレンジ色へと変更したところが、大胆さを増したと感じます。実用性と視認性を極限まで表現したモデル、それが新生・最新エクスプローラーIIなのです。
印字の太くなった24時間ベゼルの数字、艶なしの黒い文字盤、オレンジ針。すべて初代Ref.1655を彷彿とさせる仕上げになっており、キリのいい年の節目に原点に帰るロレックス社らしいモデルですよね。
前作Ref.16570との違いは言うまでもなくキャリバーで、Cal.3186からCal.3187へと変更され、前述したブルーパラクロム・ヒゲゼンマイはそのままに、更にパラフレックスショック・アブソーバという耐震装置を装備しました。この耐震装置は以前まで一部の金無垢モデルにのみ搭載されていた部品で、2011年から初めてステンレスモデルに採用、現在の最新のロレックスのモデルにはすべてに搭載されています。
創業以来、同社は心臓部であるテンプを守るためのキフ・ウルトラフレックスという比較的小さめの耐震装置を採用していましたが、2005年、パラフレックスショック・アブソーバを独自で開発・製作。新・耐震装置には表裏共に同じデザインの仕上げが施されており、激しい衝撃が外部から加わっても変形し辛く、前作より約50%も耐衝撃性を向上させました。原点を大切にしながら、最新が最高であることを体現したモデル、それが現行のRef.216570なのです。
Ref.16570・Ref.216570
2モデルそれぞれのディテール
下写真左のRef.16570ですが、シャープなラグ、中空ブレス、当時としては奇抜な2〜24の数字の彫り込んであるGMTベゼルと赤いGMT針が特徴です。また、1995〜1996年まで夜光はトリチウム、1998〜1999年頃まで留め金はシングル(それ以降はルミノバ、ダブルへ)、2000年にはステンレスを折り曲げてカバー状に形成されたフラッシュフィットが、コマと同形状のしっかりした作りとなりました。
ラグ幅は上から約4~2ミリ、ラグ長さ約15ミリ、ベゼル幅約4.5ミリ、ブレスレット幅約19~15ミリ、ケース厚み約12ミリ、クラスプ厚み約0.5ミリという結果でした。
右のRef.216570ですが、最大の特徴は40ミリから2ミリのサイズアップ、それに伴い、ラグ幅、ブレス幅も広くなりました。
前述した視認性の向上を図るデザイン変更に加え、更に機能性も向上しており、前作Ref.16570との違いは、中空ブレスを無垢ブレスへ、クラスプにも耐久性を持たせたものへと変更、全体的にしっかりとした作りになり、重さも加わり高級感が増しています。
ラグ幅は上から約5~2.5ミリ、ラグ長さ約16ミリ、ベゼル幅約4.5ミリ、ブレスレット幅約20~15ミリ、ケース厚み約13ミリ、クラスプ厚み約1ミリという結果でした。
Ref.1655の艶なし黒文字盤と、オレンジGMT針、Ref.16550の太め数字ベゼルを取り入れて再現した最新モデルは、来年50周年を迎えるにあたり、50年間の集大成モデルと言えると思います。一見奇抜でカジュアルなデザインは、幅広い年齢層に受け入れられており、今までロレックスに興味のなかった若い層にもこのRef.216570は購入対象となっています。発表当時、個人的にその風貌に驚きましたが、今となってはロレックス社の秀逸な戦略にただただ感服ですね。その時代に合ったものづくり、さすがロレックスです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。比べてみると良さがよくわかりますね。そして、50年間の集大成であるRef.216570より更にすごいモデルが出るとは考えにくいですが、もしかしたら、更にすごいキャリバーを開発・搭載して直径を40mmに戻して・・・。いろいろ夢と想像が膨らみますね。とても楽しみです。
現在、Ref.16570は白・黒、Ref.216570黒、そしてなんとRef.1655もご覧頂けます。ご興味のある方は是非、ご来店時にお気軽にお声掛けください。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。