マリーン5517 ブレゲの新境地
2024-11-19 11:00
ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
今回はブレゲのマリーンを話題の中心にしてみたいと思います。
マリーンとは
まず初めにマリーンとはどのようなモデルなのか、大きく三つの世代に分類されるマリーンのモデルについて、時代を追ってご紹介していきます。
「マリーン」その名が示すように、1815年にアブラアン-ルイ・ブレゲがフランス王国海軍のクロノメーター製作者に任命されたことなど、マリーンのイメージを構築する上で壮大な歴史やロマンが語られますが、その実は20世紀後半に若い顧客を取り込むべく企画された、従来のブレゲの印象からは少し距離を置いたスポーティな印象をもつモデルと言えます。
第一世代 1990年~
初代マリーンについてはクラシックモデルのテイストを汲んだデザインではありますが、従来のドレスウォッチやゴールドモデルでは見られなかったスポーティなリューズガードを備え、またケースフォルムもボリューム感あるものが採用されるなど、ブレゲという古典的なイメージが強く持たれるブランドにおいて、全くの新規のモデルであり、その門戸を開くモデルとして誕生しました。
また、ブレゲの象徴とも言えるギョウシェダイアルや、ケースサイドのコインエッジ装飾などはマリーンにおいても継承され、スポーティな印象が強調されそうなブレスレットモデルでさえ、上品な印象を失わないよう抑制の効いたデザインにまとめられています。
第二世代 2004年~
時計業界全体がケースサイズの大型化や、複雑機構の搭載に意欲的であった2000年代、マリーンもまた時代のニーズに合わせモデルチェンジが行われ、第二世代へと移行しました。
そのデザインは初代が持っていたクラシカルな印象からは決別し、比較的広い面を強調したスポーティでエッジの立ったデザインが採用されました。
また、ステンレスケースやラバーベルトの採用も話題となり、素材使いにおいてもブレゲは新たな手札を持つことなり、初代マリーンのコンセプトであった新たな顧客の取り込みという点においても、大きな躍進を果たしたと言えます。
第三世代 2018年~
2018年、ブレゲはマリーンに新たなキャラクターを与えることになります。
第一世代、第二世代のモデルはどちらかといえば、一見してブレゲらしさを感じるデザイン、言うなればオールドスクールな高級時計をスポーティに仕立てた印象を持ち、ブレゲの系譜においても座りの良い存在であったように感じられます。
第三世代のモデルにおいては、マリーンの再構築とでも表現すればよいのか、ダイアルデザインは紛れもなくブレゲそのものでありながら、デフォルメされたインデックスや、新しさを感じられるギョウシェ、またケースにおいても簡潔なラインで構成され、華美な印象を払拭した高級時計の新しい姿を提案されたかのよのようです。
マリーン 5517
それでは第三世代のマリーンとして代表的な3針モデルである5517 TI/Y1/TZ0を例に、その魅力に触れてみたいと思います。
ケース・ブレスレット
第三世代のマリーンの大きな特徴の一つとして外装素材があげられます。
前作ではゴールドとステンレスが主要素材とされていましたが、今作からはチタンも多くのモデルで採用されるようになりました。
従来のブレゲにおいて外装にチタンを用いた例は、TYPEXXやXXIなどのパイロットウォッチに多く見られましたが、それはミリタリー色を強めタフな印象を演出する素材使いとしての側面が強いよう感じられました。
一方でマリーンで採用されたチタンについては、その質感の高さも際立ち、ベゼルやブレスレット接合部のモダンで構築的な造形、ケースサイドに施される伝統的なコインエッジのコントラスト、また鏡面加工を効果的に施すことで、比較的薄いケースでありながら立体感を強く感じられる仕上げが随所に見られます。
ブレスレットについてはコマの全長を短くし、装着感を高めた実用性に富む設計としながらも、コマ中央のパーツにおいては両端に面を作り、更に鏡面で仕上げる美しさも兼ね備えます。
また、クラスプでの微調整機構はありませんが、そもそものコマ全長が短い点に加え、サイズの異なるコマが連結されることで、その組み合わせ次第でかなりのフィット感を得る事が可能な設計となっています。
ダイアル
ダイアルについてはチタンモデル専用となる、繊細なサンバースト仕上げが施されたものであり、ブレゲの多くのモデルで見られる紋様のはっきりとしたギョウシェダイアルとは異なる雰囲気が楽しめます。
ダイアル素材にはブレゲの伝統に則りゴールドが用いられ、サンバーストの始点を12時近くのBREGUET銘に置くことで、広がりある表情と視覚的な安定感をダイアルに与えています。
ムーブメント
搭載される自動巻きムーブメントはCal.777Aであり、これはレマニアやフレデリック・ピゲをベースとせず、ブレゲにより開発された新世代の基幹機とされるものです。
33mmほどの直径があるCal.777Aは大きなローターを備えることで巻き上げ効率の改善が図られ、ブレゲならではのシリコン製ヒゲゼンマイや、脱進機は磁気帯びのリスクを防ぎ、そして緩急心を持たないフリースプラングテンプは耐衝撃性に優れ、高い実用性を備えた機械となっています。
また、堅牢さを感じる設計に対して、細部に渡り施された繊細な仕上げが高級機然とした佇まいを見せてくれます。