パテックフィリップ「5960/1A」
2023-12-19 11:00
こんにちは、銀座エバンス稲田です。
本日はパテックフィリップから「5960/1A コンプリケーション アニュアルカレンダー クロノグラフ」のご紹介です。
はじめに
「5960/1A」は、2014年に発表されたパテックフィリップ曰く”極めて稀有な”作品のひとつです。というのも、今までステンレススティールとコンプリケーションの組み合わせは、1976年に発表した「ノーチラス」と1996年発表の「アクアノート」だけだったからです。
ちなみに実は2010年に「5950A」というステンレススティール製の超薄型スプリットセコンドクロノグラフを製作しているのですが、現時点で確認できたモデルはなんと約7000万円もの値付けがされております。(下写真)その翌年の「5004A」というこちらもステンレススティール製のスプリットセコンドクロノグラフなのですが、(噂では特別な顧客のために50本だけ製作されたマニア垂涎モデル)現在の価格は確認が取れなかったのですが、昨年のクリスティーズでまさかの一億越えで落札されていました…!
このように、ステンレス製というのは幅広い年齢層の富裕層達に人気があり、手離すコレクターも少なく生産本数も少ないため、年々値上がりしています。冒頭でお伝えした二モデル、特にノーチラスの価格に顕著な高騰が見られ、7~8年前との値差は5倍以上となっていて、正に雲上モデルとなってしまいました。今回ご紹介する5960/1Aも少しずつ、価値が上がって来ております。しかも新品の未開封品は非常に稀で、私自身も久しぶりに見ました。(一番上の写真)この記事を読んで気になられた方は是非、お早めにご検討いただければ幸いです。
5960とは
2006年にまずはプラチナの「5960P」アンスラサイト(ブラックに近いグレー)文字盤(上写真)が発表され、2010年にプラチナによく映える美しいブルー文字盤が仲間入り。2009年にローズゴールドの「5960R」シルバーグレーが加わり、2012年にはブラックとシルバーが追加となりました。2013年にモスクワブティック100個限定のホワイトゴールドモデル「5960G」オールブルーが発売された後、2017年には同じ5960Gのブルー文字盤(2013年のモスクワ限定との違いは、ベゼルのすぐ縁に白いインナーサークルと分の刻みがペイントされた仕様へと変更された点)が新たに発表されました。
今回ご紹介する「5960/1A」(”/1”はブレスレット、”A”は”Acier”の略で、フランス語でステンレススチールの意味)は2014年に満を持して登場。そしてシルバー文字盤の正式な型番「5960/1A-001」は2016年というわずか三年で生産終了してしまい、その後すぐ黒文字盤「5960/1A-010」が登場したのですが、まさかの翌年に生産終了…そのため、黒文字盤はシルバーより生産本数が少ないために更にプレミアムが付いています。この項目で一番特筆すべき点は、5960は実は180年以上もの歴史を誇るパテックフィリップ史上初の”自動巻クロノグラフ”ということです。
文字盤の6時位置をよく見てみると、プラチナモデルは30分計が一番外の丸、そのすぐ内側が35~60分の表記、そして一番内側が12時間表記となっています。(ローズゴールドも同表記です)ステンレスモデルは一番外の丸が12時間の表記、そのすぐ内側が30分の表記、そしてその内側が35分から60分の表記と、12時間計と60分計を組み合わせた画期的なクロノグラフになっているんです。ステンレスモデルはよりアクティブな、スポーティーさが際立ちますよね。それに合わせた曜日・日付・月を弧状で囲ったモダンでシンプルなデザインは、一目見たら忘れられないこれまでのパテック作品にはない一味違った意匠です。(上写真)
現在上記すべてのモデルが生産終了しており、現行は「5961P」と「5961R」の2モデルのみの生産で、この2モデルはベゼルにぐるり一周バゲットダイヤがセッティングされているラグジュアリーモデルです。大変煌びやかで美しいモデルですが、やはり普段使いしやすいのは石の付いていない時計だと思います。そういった意味でも、今回ご紹介する「5960/1A」は大変おすすめなのです。
アニュアルカレンダーとは
「年次カレンダー」のことで、通常日付付きの時計は30日から1日へと変わる月は手動での日付調整が必要なのですが、アニュアルカレンダーはその名の通り、一年に一度の調整でOKな画期的な機構です。つまり、2月末(2月28日(29日)から3月1日にかけて)のみ日付を調整すればいいだけであり、4・6・9・11月は自動的に日付を切り替えてくれる、大変便利な機能なのです。
うるう年とは、現在の太陽暦(グレゴリオ暦)で4年毎に2月を28日ではなく29日として設定しており、これを「うるう年」といいます。ただ、「100で割り切れる年(…1700・1800・1900年…)はうるう年とせず、100でも400でも割り切れる年(…1600・2000・2400年…)はうるう年とする」という例外の規定が設けられています。
ちなみに「永久カレンダー」とは、30日から1日へと変わる月はもちろん、うるう年をも自動的に調整してくれる超絶機構(前述した2100年は100で割り切れるのでうるう年と認識されてしまうため、厳密には100年~300年の間に一度、手動での調整が必要)のことで、パテック社は1925年にこの高度な技術を搭載した腕時計を初めて発表しました。
そして「年次カレンダー」搭載の腕時計は1996年に発表されて、その年スイスの時計専門誌、モルトン・パッション主宰の「ウォッチ・オブ・ザ・イヤー賞」を受賞。初めてのパテックのアニュアルカレンダーは技術的、審美性かつ実用性に優れた素晴らしい腕時計であると各界から称賛を浴びたというのは言うまでもありませんよね。(上写真は現在当社にあるアニュアルカレンダーモデル)
最初のキャリバーは「315 S QA」(イエローゴールドの「5035J」に搭載)で、このキャリバーを基本とした新しいモデルを開発し、進化し続けています。次に発表したのはムーンフェイズ付きの時計、2004年には同社では珍しいトノー型ケースに収められた「5135R」(ゴンドーロ・カレンダリオ)が発表され、これが今回ご紹介する「5960」の原型になったモデルです。
2005年には同社初のレディースアニュアルカレンダー「4936G」を発表、ベゼルとリューズにダイヤモンドを贅沢に敷き詰め、文字盤にはマザーオブパールを採用したこのモデル、機能的な年次カレンダーとムーンフェイズがぎゅっと凝縮された文字盤は、華やかさの中に凛とした美しさも併せ持つ、正に仕事ができる女のための最強アイテムかもしれません。いつかは手に入れたい憧れ時計のひとつですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回はたくさんのアニュアルカレンダーのご紹介となりました。
私イチオシの「5960/1A」は私の大切な顧客様からのご委託品なのですが、冒頭でお伝えした通り、新品未開封なのでご試着は頂けません。パテックフィリップ社が自信を持っておすすめする、素晴らしく滑らかで心地よく腕に馴染むブレスレットを直接触っていただけないのは残念ですが、パッケージの上からでも分かるその美しいつくりを是非、一度ご覧になって頂きたいです。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。