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アーミン シュトローム「グラヴィティ・イークォル・フォース」

2023-03-07 11:30

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本日はエバンス初入荷の「アーミン シュトローム」のご紹介です。

アーミン シュトロームとは

1967年、アーミン・シュトローム氏はスイス・ベルン州のブルクドルフに最初のショップを創設しました。彼は販売店とは別に、アフターサービスも充実させていました。特筆すべきは「スケルトンマスター」の異名を持つ氏の卓越したスケルトン技術であり、1990年に世界最小のスケルトンウォッチを製造したことにより、なんとギネスブックに載った凄い人物なのです。ちなみに、今回の記事を書くにあたりいろいろと調べた所、1992年に世界50本限定で製作された伝説のオメガ「スピードマスタースケルトン」は、彼の作品でした…!

2006年の退職後、彼は親交の深い投資家のサージュ・ミシェルに夢を託しました。2007年、ミシェル氏は友人である時計師のクロード・グライスラーをCEOに迎え入れ、2009年に完全自社生産体制の整った工房の操業を開始、それからわずか一年の2010年、”新生アーミン シュトローム”の最初のスケルトンモデル(2009年に発表した最初の手巻きキャリバーARM09搭載)を発表しました。

そこから今日まで、彼らは一貫してスケルトン時計しか製作していません。そして、既存のものを肉抜きしてスケルトンにしているわけではなく、見せるために、スケルトンにするために、部品のひとつから作っているのです。そんな時計ブランド、私の知る限り他に見当たりません。メゾンの名であるアーミン・シュトローム氏の信念を受け継ぎ、それを貫いている唯一無二のマイクロブランド、それが「アーミン シュトローム」なのです。

レゾナンスとは

同社を一躍有名にしたのは、2016年発表の「レゾナンス」です。これまで、トゥールビヨンに重点を置いて時計を製作していたのですが、このレゾナンスに移行。このモデルがなぜ注目されたのかというと、ひとつの大きな蝶のようなクリップで、時計の心臓であるふたつのテンプを留め、同期させて精度を向上させるというこれまで誰も思い付かなかった構造で、腕時計として完成・実現させた上、価格は1000万円以下という前代未聞の腕時計に、時計業界は大いに沸いたのです。

特に2019年に発表された「デュアルタイム・レゾナンス・サファイア」は非常に印象的で、一度見たら忘れない圧倒的デザインの腕時計です。鮮やかな青いふたつの文字盤は、左右少し青の色味を変えていて、心臓部のレゾナンスを文字盤の上に配しています。そのため、形が楕円形で横のサイズが約6cmと非常にインパクトのあるデザインなんです。アーミン シュトロームといえば、このモデルを思い出す時計愛好家が多いのではないでしょうか。(下写真)

その後、今回ご紹介するモデルに搭載されているキャリバー「SYSTEM78」を発表。2020年に次のチャプターで詳しくお話する最初のモデル「Gravity Equal Force(グラヴィティ・イークォル・フォース)」をメンズ・レディース共に発表。レディースモデルはただ直径を小さくしただけでなく、”三日月”を思わせるような大変美しいデザインで、一番の特徴である輪列の構造はそのままに、女性らしい作品に仕上がっています。(下写真)どちらとも200万円代と価格を大幅に抑え、主力モデルであることが伺えます。

2021年にはSYSTEM78を搭載した手巻きの「トリビュート1」、昨年2022年にはグラヴィティ・イークォル・フォースの「ジャングルグリーン」を発表。このジャングルグリーンには素晴らしいギョーシェが施されていて、独立時計師好きにはたまらないお話なのですが、実はあの”カリ・ヴティライネン”先生の手彫りによる文字盤なんです!彼は今、時計界で最も需要のある文字盤メーカーを経営しています。そしていろいろな時計メーカーとのコラボレーションを実現させているのです。これから少しずつ増えてくるバリエーションがとても楽しみですね。

グラヴィティ・イークォル・フォースとは

「Gravity(重力) Equal (同等)Force(力)」は、2020年に発表された、Cal.SYSTEM78を搭載した画期的なモデルです。なぜ画期的かというと、機械式時計とはリューズでゼンマイを巻いて、ゼンマイが少しずつ解ける力で針が動く仕組みなのですが、このゼンマイが解けきると完全に動きが止まり、解けきる直前はトルク(歯車を回す力)が極端に落ち、時間が大幅に狂います。同社はその解けきる手前で動きを止めてしまうという大胆な作戦で、ムーブメントに作動停止機構を組み込み、安定した精度を保つというシステムを開発したのです。しかも、72時間のパワーリザーブを確保したという同社の驚くべき技術は、見事としか表現のしようがありません。

SYSTEM78とは、何年か前の私の記事でお伝えした、「ルモントワール」や「フュゼチェーン」とはまた別の、”世界初の自動巻きコンスタントフォース伝達機構”(テンプに一定した力を伝達する機構)なのです。

そしてなにより、ルモントワールやフュゼチェーンはその複雑な機構故一千万円を超えた値付けをされているのですが、SYSTEM78搭載モデルはまさかの200万円を切るモデルも存在するのです…!これはひとえに小さなネジや歯車、ゼンマイから地板などすべて自社で製作・生産・組み立てまで行うことができるマニュファクチュールだから実現できることなのです。

もっと身近に、できるだけリーズナブルに「アーミン シュトローム」の時計を皆に届けたいという同社の強い思い、昔ながらの技法や伝統を大切にし、左右対称といった視認性のいいデザインを用いていて、使う側のことだけを考えた時計づくりに私は感銘を受けました。

ひとつの腕時計で、こんなにも作り手の思いが感じられるモデルを他に知りません。新進気鋭の若い独立系マイクロブランド、「アーミン シュトローム」。今後期待せずにいられませんね。

おわりに

いかがでしたでしょうか。この記事を読んでアーミン シュトロームを初めて知った方も多いのではないでしょうか。知れば知るほど奥が深く、良さを感じるのがマイクロブランドの魅力のひとつです。

そして、このモデルは現在ここエバンスでしか見ることができません。少しでも気になられた方は、是非実際お手に取ってご覧になっていただきたいです。みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。


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