スケルトンの腕時計とは? ~銀座エバンスで出会った5本 (ヴァシュロン コンスタンタン、ウブロなど) 2022年12月12日
2022-12-12 11:30
今回のエバンスブログは、銀座エバンスの店頭に並ぶ腕時計の中から「スケルトン」の時計5本をご紹介します。文字盤や裏蓋に隠されているムーブメントが見えるスケルトンの時計。機械が見えるのはなんだか魅力があります。
スケルトン(Skelton)とは
英語でガイコツを意味する「スケルトン(Skelton)」。建物などで「骨組み」や「構造」を示します。スノースポーツのソリ競技にも存在し、骨格だけの簡易なつくりだったことが名前の由来だそう。
腕時計の場合、文字盤がくり抜かれ「機械が透けて見える」時計が「スケルトン」と呼ばれるようです。最近よく目にする、裏蓋がガラスの「シースルーバック(グラスバック、裏スケ)」もスケルトンの一種と言えそうです。
(■BREGUET(ブレゲ) No.1160 (2008年)。18世期のフランス王妃「マリー・アントワネット」のオーダーによる超複雑な懐中時計の復刻版 出典) ブレゲ公式サイト ■CORUM(コルム)のゴールデンブリッジ。手巻きムーブメントのパーツを一列に配置、シンプルを極めたモデル。1980年頃に誕生、現在も販売されている 出典) コルム公式サイト)
そんな「スケルトン」の時計は、18世紀の懐中時計の時代から存在し、超絶な複雑機構を見せるためだったり、動作の仕組みを伝えるために作られ始めたのだとか。
ムーブメントの動きを実感できたり、名門の工芸品クラスの仕上げを堪能できたり、シンプルで宙に浮いたような時計があったりと、目で見て愉しめる時計が多いのがスケルトン時計の魅力ではないでしょうか。
今回紹介する5本は、なぜか4本が自動巻き。特に注目なのが「ローター」です。ゼンマイを巻き上げる振り子的なパーツで、面積を占めがちなローターをどう扱うかも、各モデルの個性だったりするのです。
今回の5本を見てみましょう
1、見入ってしまう細やかさ ~ヴァシュロン コンスタンタン
(■ヴァシュロンコンスタンタン 「マルタ スケルトン」 Ref.43080 裏面写真で右側に見えるイチョウの葉のような部品がローター。肉抜きされ、ほぼフレームだけとなっている)
最初の1本は、世界三大時計ブランドの一つVACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン コンスタンタン) の「マルタ」。ラウンド型のクラシカルな1本です。ダイアルの1時位置あたりに見える十字型がブランドの目印でもある「マルタ十字」マーク。香箱と呼ばれるパーツで、動力であるゼンマイが入っています。
こちらは、自動巻きモデルなのですが、裏から見える半円状のローターは大きくくり抜かれて、まるで存在しないかのよう。マルタ十字がここにも見られます。ダイアルやムーブメントの土台も、部品の配置に合わせ、何カ所もくり抜かれています。表からローターの動きが見えるくらいの透けっぷりです。
残ったフレームの部分にも、非常に細かい彫刻が施され、手間がかかっていそうです。工芸品のように細かく作り込まれた名門の時計。いつまでも眺めてしまいそうな1本です。
→VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン コンスタンタン) マルタ スケルトン
(Ref.43080/000J-0000、自動巻き、35.5mm径、YG)
2、知る人ぞ知る技術系 ~ユニバーサル ジュネーブ
(■ユニバーサルジュネーブ 「ゴールデン クラシック スケルトン」 Ref.151.11.662 裏面写真で下の方に見える、Uマーク入りの半円形パーツがマイクロローター)
2本目は、UNIVERSAL GENEVE(ユニバーサル ジュネーブ) の1本。懐中時計の時代から複雑時計を得意とした往年の名門ブランド。コンパックスなどのクロノグラフがよく知られています。さて、この時計、裏までしっかり見えますが、こちらもなんと自動巻き。
ローターは?と裏を見ると小ぶりな「マイクロローター」が顔をのぞかせます。ローターを小さくすると、ムーブメントを隠さず、薄くできるのですが、巻き上げ効率が良くないこともあり、主流ではない巻き上げ方法だったりします。
ユニバーサルジュネーブは、あのパテックフィリップがマイクロローターを採用する約20年前の1955年にマイクロローターの時計を実用化し発売。マイクロローターにおいても高い技術を誇っていたブランドだったりします。
1990年代前半に作られたと思われる、割と最近の時計ですが、32.5mmの小ぶりなサイズ感に、ベゼル部分の装飾が、なんともクラシカルでいい雰囲気の1本です。
→UNIVERSAL GENEVE(ユニバーサル ジュネーブ) ゴールデン クラシック スケルトン
(151.11.662、自動巻き、32.5mm径、YG、1990年代前半頃品)
3、なんとスカルが ~RJ(ロマンジェローム)
(■RJ(ロマンジェローム) 「スカイラブ48 スピードメタル ブラックスカル リミテッド」 RJ.M.AU.030.21)
3本目のこちらは48mmのビッグサイズな手巻きモデル。2004年設立の新鋭「RJ(ロマンジェローム)」の1本。アポロ11号の一部をケースに含有しだり、インベーダーやパックマンの絵柄のモデルを作ったり、個性的なアプローチで機械式腕時計を作っていたブランドです。
こちらの「スカイラブ48」は、なんと文字盤に黒い「スカル」が。紫、白、水色など、色違いが12色ほどあったとか。黒というのが少し控えめで大人な?感じです。
裏から見ると手巻きムーブメントの構成がわかります。手巻きなのでローター類がなく、構成がシンプル。多くのブランドが手巻きでスケルトンモデルを手掛けるのは、このシンプルさによる構造の自由さがあるのかもしれません。
技術力を洗練した見せ方で、という傾向が強いスケルトン時計において、大きめサイズでスカル柄が入っているという遊び心は新鮮です。カジュアルな腕元にこんな1本というのも、洒落っ気があっていいのではないでしょうか?
→RJ(ロマンジェローム) スカイラブ48 スピードメタル ブラックスカル リミテッド
(RJ.M.AU.030.21、手巻き、48mm径、SS(PVD加工))
4、大胆すぎるカスタマイズ ~スケルトンコンセプト
(■スケルトンコンセプト 「ブレーズ・マテュイディ」 Ref.116710LN 2色ベゼルでなく黒ベゼルというのが渋い)
シースルーバックが少ないブランドの一つが「ROLEX(ロレックス)」。まさかこんな形で内部を見ることができるとは…。
4本目のこちらは、パリを拠点とするカスタマイズブランド「SKELETON CONCEPT(スケルトンコンセプト)」の1本。ベースは黒べセルのGMTマスターII(Ref.116710LN)となります。
裏蓋がガラスになり、文字盤がくり抜かれ、日付の板が透明になったりと、思う存分カスタマイズ。グリーンに着色されたローターも一部くり抜かれ、文字盤側に至ってはもはや別モノといった感じです。メカメカしい印象が新鮮だったりもしますが、ロレックスをよくここまでやるなあという感じも。
車のカスタムでは、こういう改造系のアプローチはあったりするので、これはこれでありなのかもしれません。時計の場合は、速くなるわけではないので、気分的なものでしょうけど。
→SKELETON CONCEPT(スケルトンコンセプト)ブレーズ・マテュイディ
(116710LN、自動巻き、40mm径、SS)
※スケルトンコンセプトは「金無垢デイトナ」(116528)も店頭に並んでいます。こちらも驚きの1本です。
5、実はすごい透けモデル ~ウブロ
(■ウブロ「ビッグバン ウニコ サファイア オールブラック」 411.JB.4901.RT ケースはプラスティックではなくサファイアガラス。 ムーブメントも黒系の仕上げ。くり抜かれたローターの形状は通常のビッグバンウニコと変わらない)
最後はHUBLOT(ウブロ)の1本。ウブロ初の自社ムーブメントとして誕生した「UNICO(ウニコ)」を搭載したモデルは、いずれもシースルーバックで、文字盤側からもムーブメントが見える仕様なのですが、こちらはさらに「ケースが透明(ブラック系)」という仕様。
ちょっと前のゲーム機や、YOSHIKIのピアノなど、透明なプロダクトは色々あるんじゃないか。と思われるかもしれません。
しかし、こちらは「サファイアクリスタルガラス」をケースに用いたというのが凄いところ。ダイヤモンドに次ぐ硬さで、加工が非常に難しい素材なのです。このモデルでは、サファイアガラスを削り出し、組み合わせることで、ビッグバンの複雑なケース造形を実現しているのです。
ブラックのクリア素材に、針やムーブメントまで黒系のブラックマジック仕様で、気づかれにくい感じですが、見れば見るほどシャープで格好いい時計だったりします。重さも110gで案外重くなかったりします。一見すごさを感じにくいというのが、なにげに大人っぽい感じもする、ひと味違う1本です。
→HUBLOT(ウブロ) ビッグバン ウニコ サファイア オールブラック
(411.JB.4901.RT、自動巻き、45mm径、サファイア、シリコンベルト、2016年500本限定)
中を見れるというロマン
スケルトンな腕時計5本、いかがだったでしょうか?最後のウブロは、少し毛色が違ったかもしれませんが、今時の透明系ということで取り上げてみました。(ウブロはこのところサファイアケースの新色開発にも力を入れているブランドでもあります)
スマホなど、可動部品が少ないブラックボックス的な機械が増えている気がする昨今。スケルトンの腕時計は、機械で動くことを実感できる魅力があります。中を見せたい作り手、中を見たい使い手、というお互いのロマンが交差しているようで興味深いところです。