いつもエバンスブログをご覧いただきましてありがとうございます、銀座エバンスの福永です。
今回の話題の中心はロレックス、オイスターパーペチュアル コスモグラフ デイトナ、通称「デイトナ」についてです。
また、ロレックスをはじめとした高級時計の価格は下落に転じるのか、あるいは上昇を続けるのか、そして最近注目を集める高級時計の資産性について、それらを交えて考察していきたいと思います。
★記事の内容につきまして今後の価格推移、時計の販売価格、売却価格を保証するものではございません。
デイトナありますか?が指し示すもの
高級時計の代名詞とも言えるロレックス、その中においてデイトナは別格の人気を誇り、時計好きならば知らない方はいないであろう知名度の高いモデルといえます。
店頭でも「デイトナはありますか?」というフレーズを良く耳にしますが、少し前までは現行のステンレスモデル(現在であればRef.116500LN)を指し示す事が多かったですが、今日では旧型ステンレスモデル、あるいは金無垢モデルを探されている方の姿も多く見られます。
これらの理由の一つとして、価格高騰が続いていたRef.116500LNなど現行モデルの価格がひと時に比べ落ち着きを見せているものの、依然として新品であれば500~600万円の価格帯にある点があげられます。
しかしながら、現実はそう単純なものではなく、旧型モデルの需要増加には高級時計を取り巻く環境の急速な変化、そして人々の認識の変化も大きく関わってきます。
500万円の使い道、実物資産としての腕時計
500万円~600万円という価格帯では、同じくデイトナのエルプリメロをベースとしたCal.4030を搭載するRef.16520、あるいは後継モデルのRef.116520や同世代の金無垢モデルなども選択可能となります。
そこで注目すべき点が、時計界隈で多く語られるようになった、時計の資産性についてです。
高級時計そのものは極めて趣味性の高いものであり、突き詰めれば高級時計の購入や所有は自己満足の極と言えますが、一方で実物資産としての側面も見直され、日本においてもその考えが定着しつつあります。
実際に店頭でお話を伺っていると、資産という観点で時計選びをされる方、あるいは相談に見える方も多くいらっしゃいます。
長期的に見て世界経済が発展を続けるという前提であれば、実物資産である高級時計の価値も上昇し、かつ生産終了品や希少なモデルともなれば、その上昇幅も大きくなる予測を立てる事か出来ます。
今、500万円でデイトナを手にしておくことが、未来の物価上昇に負けないだけの資産性を生み出す可能性は十分にあるのではないでしょうか。
セミアンティークの魅力、高まる評価
それでは、実際にどのデイトナを選べばよいのか?、これに関しては明確な答えはありませんが、現行品であれば高い流動性が望める一方で、景気の減速懸念やネガティブなニュースに価格が影響を受けやすいといった面があり、冒頭で触れた現行モデルRef.116500LNの価格下落が当てはまります。
一方で生産終了モデルなどの旧型はどうかと言うと、現行モデル程には需要が高くなく、一般的に買取率も現行モデルに及ばないことが多いですが、世界情勢に現行モデルほどは影響を受けづらい印象があり、これに関しては旧来のファンや、趣味として時計収集しているような方が主な購入層となっている点があげられます。
そこで昨今、人気の高まりを見せているのが「セミアンティーク」と呼ばれるカテゴリーのモデルです。
セミアンティークの定義としては、主に1980年代後半~2000年代半ばに生産されたリファレンスが5桁のモデルを指し、防水性や耐震性などの観点から現在でも実用に十分耐えられる設計を持ち、かつ現行モデルには見られない要素が魅力としてあげられます。
セミアンティークが評価される主なポイントは、当時のロレックスが持っていた実用性に大きく振ったシャープなフォルムやデザイン、そして現在では採用されないトリチウム夜光や、プロフェッショナルモデルであればシングルバックルなど、再現が出来ない(或いは困難な)仕様が現存する点であると言えます。
デイトナにおけるセミアンティークとは?
デイトナのセミアンティークに該当するモデルはRef.16520やRef.16523、Ref.16528などのブレスレットモデル、またはRef.16519などの革ベルトモデルなど多岐に渡ります。
まず一つ目の評価されるポイントは製造年代、例えばRef.16520であれば1989年(Rシリアル)から2000年(Pシリアル)まで10年以上に渡り生産されたモデルですが、生産初期と最終製造年の個体は特に高い人気となり、最終製造年の個体は生産期間が短い為に需要が高まります。
一方で生産初期の個体に関しては、時間経過共に現存数の減少が著しく、また初期にしか見られない仕様、文字盤上のモデル名表記「DAYTONA」が一段落ちた「段落ち」やタキメーターのスケールが200までの「200タキ」などが特徴としてあげられ、その特徴がしっかり確認出来る個体が良しとされます。
これらが重要視される理由としては、ロレックスは同一リファレンスにおいても、製造時期によって細かな仕様変更を行うことが常であり、また劣化による部品交換で当時の状態を維持出来ない個体も多く、オリジナル性に最も重きを置くセミアンティークの世界において、それこそが絶対的な正義となっています。
また、ロレックスにおいては製造年代とパーツの適合の他、文字盤に表れる経年変化も大きな評価対象となります。
Ref.16520で話題となっているのが上の画像の様な、黒文字盤のインダイアルが茶色く変色した「ブラウンアイ(パトリッツィ)」と呼ばれるものであり、これは塗布されたニスが紫外線の影響を受けて変色したものと言われています。
発現する年式が限定される点に加え、色の濃淡も様々であり、意図的に再現が出来ないなど偶発的な要素が、その高い評価へと繋がっています。
ロレックス、そして高級時計を取り巻く環境
ここまでは比較的ミクロな視点で見てきましたが、これらの価値の拠り所はどこにあるのでしょうか、その一つがオークションでの落札結果からも見て取れます。
オークションから見て取る高級時計
オークションについては開催期間が設定され、参加者も限定される、そして入札者の心理的な側面に影響するなど、予想を大きく上回る結果が生まれる場合においても、全てが適正とは言い難いですが、それでも時計価格の動向における一つの指標としては十分に機能する存在です。
オークション各社がアートやジュエリー、クラシックカーなどと並び、高級時計を大きく扱うには、他の作品に比べはるかに流通量が多く、昨今の時計人気の高まりを追い風に大きな収益を上げられるからに他なりませんが、アートなどと同様に扱われることは、人々に対して高級時計=資産性があるものという認識を与えるに十分な影響力があると言えます。
ラグジュアリー商材としての高級時計
さらに広い視点で言うならば、高級時計そのものが好事家の購入対象から、ラグジュアリー商材としての側面を一層強めてきている点があげられます。
現在では多くの時計メーカーがグループの再編や、コングロマリット傘下に入ることで、大々的な広告戦略のもと消費を訴え、またブティックの新設など販路を改めることで、従来の顧客層とは異なる層の取り込みを急進的に進めた結果、高級時計はファッションアイテムとしての特性を色濃くしながらも、広く一般に知れ渡る存在へと変化を遂げました。
特定のものが価値を得るには、多くの人々がそれを欲するという、すごくシンプルな要素が決め手となりますが、ラグジュアリーブランドとして確固たる地位を築いた高級時計は憧れを集め大量に消費され、そしてオークションではレアなポイントに価値が見出され続けるはずです。
記事前半で記した、世界経済が成長を続ける限り実物資産としてのロレックスが価値が高まり続ける、それを強く後押しする土壌は着実に整いつつあり、長期で見れば買い時はいつでも大丈夫、そんな答えになってしまいますが、手にされるならば少しでも早いタイミング、それがリスクを低く抑えるポイントと言えるのではないでしょうか。