「精緻を極めた伝説の作品”パテックフィリップ 5990/1A”」 2019年4月2日
2019-04-01 17:12
こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
夜は少し寒い日もありますが、日中はようやく暖かくなりましたね。
待ちに待った春を楽しみましょうね。
さて、本日はパテックフィリップのご紹介です。
”ノーチラス・トラベルタイム・クロノグラフ 5990/1A”
はじめに
”ノーチラス”とは、舷窓(潜水艦の窓のこと)から着想を得たフォルムを持ち、その名の由来は言うまでもなく潜水艦です。
はじまりは、1800年のロバート・フルトンという蒸気船の実用化に成功したアメリカの技術者が、世界で初めて潜水艇ノーチラス号を製作したことからで、同氏は偉大な発明家として後世に語り継がれています。
その後、バッテリーで動く電動潜水艦のノーチラスが発明され、1870年には我々もよく知っている「海底2万マイル」(ディズニーのアトラクションにあります)という小説に出てくる潜水艦(下写真)の名前にもノーチラスという名が付けられています。
今回ご紹介する5990/1Aは2014年発表で、このモデルの開発には2006年のノーチラス・クロノグラフの成功という背景があります。しかし、クロノグラフにトラベルタイム(第二タイムゾーン)と昼夜を同時に表示できる機能を組み込むことは容易ではありませんでした。
パテック・フィリップの技術陣達は5990のための新しいケースデザインと、新しいムーブメントの開発が不可欠で、これに加え120m防水を確保するのが大変困難だったそうです。
そこで考えられたのが、ケース左側に配されたトラベルタイムの特徴である、現地時刻のみを一時間単位で進めたり戻したりできる二つのプッシュボタンを特殊な形状(下写真)にすることで、ノーチラスの特徴であるあのデザインを完璧なものにすることでした。
唯一のケースデザインの変更点は、2時と4時のクロノグラフプッシュボタンの位置を前作5980よりもわずかにリューズ寄りに配置(下写真)することで、より効率的にクロノグラフの操作をムーブメントに伝えることが可能になりました。
また、従来のケースより更に明瞭なクリック感とソフトな押し心地が叶えられ、何より1時位置に日付調整の小さなボタンを配することができました。
このように、使う人のことを考え抜いて作られたケースとブレスレットの相乗効果で、機能分三針の5711より少し厚みは出ますが、5990は抜群の付け心地を誇ります。
ケースとブレスレットの製作には、約20名の専門職人がいて、ノーチラスのブレスレットは機械加工の後、55過程の手作業での仕上げが必要だそうです。研磨はサテン・ポリッシュ・サンドブラストの他、ラップ・エメリー、ポリッシュ後のアヴィヴァージュという六種類もの技術を使い分けて、熟練の技術者がすべて手で仕上げています。
この繊細な作り込みによって、頑強で男性的な雰囲気を持つケースと文字盤に、強靭なのに流れるようにしなやかなブレスレットが付くことでふいに高級感が備わり、オーナーにしか味わえない完璧な着け心地を叶えてくれるのです。
ケースは誕生から変わらない八角形で、ベゼルもガラスも同じ八角形で形成されています。(下の写真をよくご覧下さい)
ガラスも、とサラッと書きましたが、この形状のガラスを作ることと、組み立てて更に120mもの防水性を持たせること、これは簡単なことではありません。
ノーチラスは、前述したブレスレットやケースデザイン、中の機械だけでなく、ディテールに至るまでこだわり作り込まれたパテックフィリップのひとつの” 作品 ”だと私は考えます。
2006年、ノーチラス誕生30周年を記念して製作された5980/1Aは現在、惜しくも生産終了してしまいましたが、後継モデルとして5990は更なる便利な機能を装着して生まれ変わりました。5990の機能は、クロノグラフの他、”LOCAL”の窓で現地の昼夜を表示し、”HOME”は出発地点の昼夜を示します。
12時位置に大きな日付表示、そして5980から受け継いでいるデザインの6時位置の積算計は、60分計へと新たに変更となりました。出発地点の時刻を表示する針は中がくり貫かれたスケルトン針になっており、他モデル同様、明確にすべてが読み取りやすい文字盤になっています。
パテック社は2009年より、ジュネーブシールより更に上の”パテックフィリップシール”という独自の厳しく卓越した品質基準を設定しました。同社は完全なるマニュファクチュールとして、ムーブメントやケースの装飾だけでなく、なんとバネ棒に至るまで、恐らく世界で一番厳しいテストを行っています。
世界最高峰とは名ばかりではありません。すべてにおいて抜かりなく、世界最高の時計を製作しているメゾン、それがパテックフィリップなのです。
(ガラスのこと、ジュネーブシールについても私が二年前に書いたロジェデュブイの最初期作品の”シンパシー”のブログで触れています。ご興味のある方はご覧になってみてください→「幻のムーブメント搭載 最初期作品 ロジェ・デュブイ ”シンパシー”」)
今回のブログ写真はPPHPより引用させて頂きました。
おわりに
ノーチラスは1976年に誕生し、当初はステンレスを採用した高級スポーツモデルは存在しなかったため、各メディアや時計愛好家たちへと大反響を呼び、販売当初は人気が伸び悩んでいたそうです。
ところがここ近年、正規店で5~6年待ちは当然のこと、10年経ってもまだ手に入れらていないというお声をよく聞きます。
また、パテックフィリップはどうしてこんなに高いのかという質問を受けることがよくあります。
私がお話するのは、他ブランドと違い量産をしないこと、厳密には精緻な手作りのため量産できないのです。そしてノーチラスに関しては、私を含め世界中に熱望している人々がいますが、生産している数は変わらないため供給が追い付かず、プレミアムな価格になっているのです。特に今は日本にいらっしゃる海外の方が劇的に増えており、更に数が足りないのというのが現状です。
その激レアモデルのひとつである5990/1Aをなんと、私の大切なお客様よりご委託頂けることとなり、現在店頭に並んでおります。
他に5712のAもRも一緒にご覧いただけますので、銀座にお越しの際は是非お早目に足を運んでいただきたいです。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。