エバンス オンラインショップ担当の大貫です。今回は【文字盤の材質】についてご案内したいと思います。時計の第一印象を決めるのが「文字盤(ダイアル)」。 文字通り、時計の顔(フェイス)になりますので、時計選びでは重要なファクターと言えます。
オーソドックスなシルバー、スポーティなブルー、武骨なブラックなど、カラーリングによって表情が異なる文字盤ですが、意外と知らないのがその素材。特殊なものならいざ知らず、一般的な文字盤の素材を考えたことはありますでしょうか。
文字盤の基本素材と言えば「真鍮」
真鍮は銅と亜鉛の合金で、 黄銅とも呼ばれる金属。英語では『brass(ブラス)』ですので、こちらの方が馴染みやすいかもしれませんね。“ブラスバンド”というように、トランペットやサックス、トロンボーンなどの管楽器に使用されていたり、5円硬貨の素材にもなっています。
腕時計の文字盤に使用される素材は、ほとんどが真鍮製で、最も使用されています。真鍮のプレートに下地メッキを施し、その上にラッカーなどでの塗装、メッキやPVDで着色するのが一般的です。また、以下に紹介する様な天然素材のベース(土台)にも真鍮は使用されます。
ロレックスの場合、宝石が使用されていない文字盤は真鍮製、宝石がある場合はゴールド製と使い分けがされておりますが、一部例外としてマザーオブパールやメテオライトなどではゴールドの土台が使用されているようです。
なぜ真鍮が使用されるのか
加工が容易という事が利点で、錆びにくく丈夫な一方、変色しやすい欠点があります。しかし、塗装やメッキ加工をすることでデメリットは無くなりますね。真鍮は他にもムーブメントの地板や、ゼンマイなどにも使用されており、時計を構成する重要な素材となっています。
個性的な素材で楽しむ時計の文字盤
カラー以外にも、“素材”によって個性が際立つ文字盤もあります。古典的なモノから、技術の発展による新素材。また天然石や天然素材を使用したもの、豪華な宝石を使用したものなど多種多様。特徴的な文字盤素材がありますので、その一部を紹介したいと思います。
金属
ゴールドやチタンなど、腐食に強い素材が採用されますが、いずれもコストがかかり、高価なモデルに使われることが多いものとなります。意外にも“ステンレス製ダイアル”というものはあまり聞かないですね。
- ゴールド
- シルバー
- チタン
- プラチナ
- オスミウム
非金属
最近では外装に使用される【セラミック】を文字盤に流用するブランドが少しずつ増えてきた印象です。 セラミックやカーボンは、紫外線による劣化が防げます。ポーセリン(陶製)は、アンティークの懐中時計などで見られます。割れやすく、今ではほとんど使用されません。
- セラミック
- カーボン
- ポーセリン(陶製)
天然素材
“マザーオブパール” や “シェル”と呼称される貝殻を使用した文字盤は、今では一般的になっていますね。産地によって色合いが異なり、採取部位によっては凹凸等が変化しますので、個体差が大きい素材。各ブランドでよく使われています。またウッドやレザーなども個性的な印象です。
- マザーオブパール(真珠母貝)
- ウッド(木材)
- レザー(革)
- コーラル(赤サンゴ)
半貴石(セミプレシャスストーン)
アクセサリーにも使用される鉱石。“石”をスライスして使用しています。こちらも天然素材となるため、一つ一つ色合いや雰囲気は異なります。ただ衝撃に対して割れやすいところがデメリットとなります。
- マラカイト
- ラピスラズリ
- ターコイズ
- ジェダイト(翡翠)
- クリソプレーズ
- ルーベライト
- オニキス
- オパール
- メテオライト(隕石)
- アベンチュリン
- タイガーアイ
- スギライト
- マラカイト
- キュープライト
伝統技術
この辺りはアートの領域になってきます。絵柄を楽しむ文字盤ですね。以外にも『蒔絵』は、ヴァシュロン・コンスタンタンやショパール、ブルガリといった世界的ブランドでも採用されたことがあります。
- 蒔絵
- マルケトリ(寄木細工)
- クロワゾネ(金線七宝)
- 和紙
色付けの手法
色を塗るといった表面加工にも様々な技法があります。ラッカーでの塗装が一般的。“ラッカー”とは着色された揮発性塗料のことで、溶剤を揮発させることで速乾性が増し、硬くて耐久性の高い塗面になります。漆もラッカーの一種です。古典的なものはエナメル(ホットエナメル、コールドエナメル、象嵌エナメルなど技法は多数)などもあります。
ラッカーは厚みがあるが耐候性(気候の変化への耐性)に優れ、メッキ加工やPVD加工で塗装面を薄くできるため、繊細で高級感を得ることが出来る、
- ラッカー
- エナメル
- PVDコーティング
- メッキコーティング
- ハンドペイント(メティエダール)
各社が今、文字盤に力を入れる理由
時計のケース素材以上に個性が出る文字盤。現在、各メーカーが力を入れている分野が『文字盤』と言えます。2000年頃から時計メーカー各社は、ムーブメントの自社設計や、新たなケース素材の開発などが進み他社と差別化を図ってきましたが、昨今注目されているのが『文字盤』です。
最近では毎年のように、新たな技術を用いた文字盤を見ることが出来ますので、新作時計発表の際は『文字盤』にも注目すると面白いと思います。