同じに見える?似て非なるIWCの歴代『マーク』シリーズを解説
2024-08-19 11:00
エバンス オンラインショップ担当の大貫です。今回は個人的にもお勧めする「マーク」シリーズを解説していきたいと思います。
IWCのパイロット・コレクションに位置する「マーク」シリーズ。2024年現在は「マークXX(マーク・トゥエンティ)」まで生産されているロングセラーモデルです。
軍用のパイロット向けがルーツであるため、歴代のモデルはいずれも似たデザインで、一見しただけではモデルの特定は難しいコレクションです。ですが、細かく見ていくとそれぞれに特徴があり、人気もさまざま。購入を検討している方はぜひご参考下さい。
マークシリーズの特徴
英国空軍の装備品を意味する「MARK(マーク)」。戦闘機パイロット用のプロダクトとして、その名称を長く継承されてきたIWCの傑作シリーズです。
「マーク」シリーズは、シンプルな3針モデルが基本デザイン。軍用時計がツールであことから、高い視認性はもとより、コックピット内の計器から発する磁気対策、急上昇&急降下による温度変化対策や高い耐圧・耐G性能を特徴としています。
そのためパイロットシリーズには、クロノグラフやGMTモデルがありますが、”マーク”の名称は使われていません。1990年代ではレディースモデルが存在するものの、基本は男性向けのみの展開。マークⅫで市販化されて以降は、レザーストラップ仕様とブレスレット仕様が用意されています。
歴代マークシリーズ
“マーク”シリーズは「マーク11」から始まりました。普通に考えると「マーク1」からスタートすると思いますが、いきなりの2桁数字。“マーク”の名称は有りませんでしたが、それ以前にもパイロット向けの時計 (通称としてマークⅨ、マークⅩなどが存在) を製作していたため、「11」からのスタートとなったようです。
マーク11(1948年~1981年頃)
IWCの公式サイトでは、この「マーク11」がシリーズの起源とされています。
イギリス軍の要請により、パイロットの支給品として生産された「マーク11」。軟鉄性インナーケースによる耐磁性、視認性を考慮したインデックスデザインやセンターセコンド仕様など、以降のマークシリーズの原型と言えます。
パイロット向けの支給品であり市販化はされていませんので、個体数も非常に少ないものの、マーク11生産終了後に、余剰在庫を3つの限定モデル(各500本)として民間市場向けに発売された様です。
ちなみに「マーク11」に関しては、モデル名にローマ数字は用いず、アラビア数字で表記。第二次世界大戦後の一時期、英国王立空軍はローマ数字の使用を禁止していたことが理由と言われています。
マークXII/マーク12(1994年~1999年)
創立125周年を記念して1993年発表、1994年から販売された 「マーク」シリーズ初の市販化モデル。「マーク11」のデザインを引き継ぎ、自動巻きムーブメントや日付表示、サファイアガラス製の風防を備えた実用的な仕様となりました。
なお文字盤は「マークⅫ」ロゴの有無による2タイプ存在。 「マークⅫ」 のロゴが無く、「AUTOMATIC」表示のみが初期の個体となります。
- ケース直径:36mm
- ケース厚:11mm
- 防水性:5気圧防水
- ムーブメント:Cal. 884(ジャガールクルト製)
- パワーリザーブ:約45時間
マークXV/マーク15(1999年~2006年)
1999年に発表され、2000年に販売開始されたマーク15。基本デザインは前作を引き継ぎ、ケースサイズが36mm→38mmへ大型化しました。
公式発表はありませんが、“XIII(13)”と“XIV(14)”は、ある諸外国の文化において不運を意味する数字であることを考慮し省略されたと言われています。
- ケース直径:38mm
- ケース厚:9mm
- 防水性:6気圧防水
- ムーブメント:Cal.37524 (ETA製)
- パワーリザーブ:42時間
なお、ブレスレット仕様は3タイプ存在し、前期、中期、後期で形状が異なります。
また防水性を示すアイコニックな『魚マーク』リューズはこのマーク15で終了。メーカーでのメンテナンス時に交換されてしまうこともあるため、オリジナルのリューズを求める方もいらっしゃいます。
マークXVI/マーク16(2006年~2012年)
文字盤・針のデザインを大幅に変更されたマーク16。特に針の形状が大きく変化し、より視認性が高まりました。また時代に合わせてケースサイズも1mm大きくなっています。
- ケース直径:39mm
- ケース厚:11.5mm
- 防水性:6気圧防水
- ムーブメント:Cal.30110(ETA製)
- パワーリザーブ:42時間
マークXVII/マーク17( 2012年~2016年)
マークシリーズ最大サイズ(2024年時点)となる直径41mmのケースに、扇型に開かれたカレンダー窓が特徴のマーク17 。 ムーブメントは前モデルと同様です。
扇形のカレンダーが不評だったためか、僅か4年で生産終了となっています。
- ケース直径:41mm
- ケース厚:11mm
- 防水性:6気圧防水
- ムーブメント:Cal.30110 (ETA製)
- パワーリザーブ:42時間
マークXVIII/マーク18(2016年~2022年)
シンプルなデザインへ原点回帰したマーク18。マーク16に近いデザインとなっています。また派生バリエーションが多いのも特徴です。
デザインや性能は変わらず、2018年にムーブメント変更によるマイナーチェンジがありました。2016年~2018年ではETA製、2018年~2022年はセリタ製が使用されています。
- ケース直径:40mm
- ケース厚:11mm
- 防水性:6気圧防水
- 前期ムーブメント:Cal.30110 (ETA製)
- 後期ムーブメント:Cal.35111(セリタ製)
- パワーリザーブ:42時間
マークXX/マーク20(2022年~
マーク18のデザインを引き継ぎ、自社製の自動巻きムーブメントを採用したマーク20。記事作成時点の現行モデルです。「マーク19」については、理由は分かりませんが欠番となっています。
自動巻きの自社製キャリバーはマークシリーズ初となり、パワーリザーブは120時間と大幅に長くなっています。またこれまで備えていた耐磁性を高める軟鉄性インナーケースは無く、ムーブメント自体の耐磁性能を向上。それにより防水性能が6気圧から10気圧となったものの、ケースの厚みは前作よりも薄くなっています。
- ケース直径:40mm
- ケース厚:10.8mm
- 防水性:10気圧防水
- ムーブメント: Cal.32111(自社製)
- パワーリザーブ:120時間
マークシリーズの派生モデル
マークシリーズは長い歴史のなか、いくつかの派生モデルも誕生しています。「パイロットウォッチ」シリーズとしては膨大な数になりますが、“マーク”の名前は特別な様で、それほど多くはありません。特別な代表的なモデルをご紹介します。
スピットファイア
戦闘機の名機「スピットファイア」をイメージしたモデル。モダンな印象のモデルが多く、年代によって大きく形状が異なる。
プティ・プランス
ケースバックに「星の王子様」のレリーフが刻まれたミッドナイトブルー文字盤が特徴の「プティ・プランス」。 作家でパイロットでもあったサンテグジュペリの特別モデルです。
アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ
上記のプティ・プランス繋がりであり、「星の王子様」の作者にして、パイロットである「アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ」に敬意を表して誕生したモデル。ブラウンの文字盤とケースバック「ロッキードP-38 ライトニング (サンテグジュペリの最後の乗機)」が特徴。
ヘリテージ
1940年代の「ビッグ パイロットウォッチ 52 T. S. C.」に着想を得た文字盤レイアウトに、マットなチタン素材や革ベルトやベージュカラーの夜光、マットなチタン素材などレトロな印象のモデル。
トップガン
米国海軍の戦闘機兵器学校「 TOP GUN (トップガン)」の名を冠したコレクション。 IWCとのパートナーシップを結んでおり、特徴的なロゴを備え、オールブラック仕様のモデルが多い。
今後の展開は?
マークシリーズは基本6年でモデルチェンジが行われてきた為、次期モデルは2028年と予想されます。ナンバリングもXXI(21)、XXII(22)と増えていくと思いますが、デザインの変更はあまりないでしょう。
昨今、デザイン変更だけのモデルチェンジは考えられず、機能向上は必然ですが、シンプルさゆえに難しいところですね。
なお、過去のモデルも中古市場で多く出回っていますが、市販化モデルの中ではマークⅫが最も人気なシリーズで、年々価格が上昇しています。近年ではコンパクトなサイズ感の需要が高いため、マークⅫをベースとしたデザインもアリだと思っています。
私が社会人になった年は、マークⅫが新品で購入できる時代でした。悩んだ末、別の時計を購入してしましましたが、それを未だに後悔しています。是非皆様は悔いのないような時計選びをご検討下さい。