ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
今回の話題は物語の中に登場する腕時計についてです。
それは登場人物達の腕元を彩り、時にはストーリーのキーアイテムとなる魅力的な存在であり、実際に手にすることが出来るのならば、作品の世界観を身近に感じることが出来る、またとないチャンスと言えるのではないでしょうか。
オメガ×007
007シリーズに登場するボンドウォッチ言えば、オメガというイメージが定着して久しいですが、実際に劇場公開作として登場したのは1995年公開の「007ゴールデンアイ」以降であり、それまではセイコーやロレックス、ハミルトンなど様々なブランドが採用されてきました。
1995年以降は2021年公開の最新作「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」まで、実に9つの作品においてオメガのシーマスターが登場し、現在では007を象徴するブランドの一つとして広く認識されています。
「007=オメガ」のイメージを実現するには、オメガは映画製作に関わるタイアップとして少なくない額を投下している訳ですが、世界的な人気作である007のキーアイテムとして常に物語に登場し続けることは、それ以上の対価が望めるからに他なりません。
007シリーズは実在する企業やその製品を登場させる、プロダクトプレイスメントを徹底することで、作品世界にリアリティを生み出すと同時に、登場人物を取り囲むタイアップ企業の製品に対し、スクリーンを通して観客に憧れを、そして需要を喚起させています。
また、オメガに関しても映画公開に伴う記念モデルや、限定モデルの発売が毎回話題となりますが、その多くが映画作品としての007を意識したもであり、007のロゴや銃口をモチーフにしたダイアルなど、誰が見ても分かりやすい要素が含まれていました。
それは一部の007ファンやオメガファンにとっては、またとないご褒美であり、コレクター心をくすぐる一面をもっています。
しかしながら、多くの時計ファンが望むものは映画の広告的なモデルではなく、実際に劇中で使用された製品(ギミック満載とはいきませんが)であったはずです。
その転換点となったのが、2015年に公開された「スペクター」の限定モデルの一つであり、既存のシーマスター300をモチーフに両回転ベゼル、そしてロリポップ秒針を備えた、NATOベルトに換装されたスペシャルモデルの存在でした。
これは、まさに劇中でジェームスボンドが腕に巻くモデルと同じデザインであり、ユーザーがー望む一層のリアリティを、手に取れる形で実現させるものでした。
限定本数は7007本、限定としては少なくない数字ですが、大きな話題とともに入手が難しいモデルであり、現在では定価を大きく超えた価格で取引が行われています。
「スペクター」での成功に続き、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」においても劇中仕様と同じデザインのモデルが発売されました。
ベースデザインはシーマスターダイバー300ですが、素材をチタンとし、ベゼル、ダイアル、裏蓋に至るまで専用設計、そして乾いたベージュカラーをアクセントにいかにもタフな印象に仕上げられています。
また、メッシュブレスモデルとNATOベルトモデル、計2種が販売されており、特にメッシュブレスタイプの人気が高く、こちらをお考えの方は早めのご決断をおすすめします。
こちらは限定本数は定められませんでしたが、当初より品薄が続くなど人気を呈しています。
シーマスター ダイバー300M マスタークロノメーター 007エディションRef.210.90.42.20.01.001
ゼニス×ルパン三世
続いてはアニメ「ルパン三世」の世界から、半世紀の時を経て現実のものとなったゼニスA384の限定モデルです。
今でこそアニメーションにおいても、実写同様にプロダクトプレイスメントが広く採用されるようになりましたが、過去のアニメ制作と言えば、スポンサー企業である玩具メーカー主導の、まさに玩具を売るための映像作品が多く、該当する製品以外は架空のもの、あるいは実在のパロディが基本でした。
しかしながら、アニメ作品の完成度を高めるべく、登場人物が身にまとうファッションや自動車など、細部までこだわり描かれる作品も存在します。
今回、取り上げたルパン三世もまた、実在する企業や製品の登場こそないものの、リアリティを求め描き出される作風については、まさに大人が見ても楽しめる当時としては稀有な存在であったと言えます。
その作中で次元大介が身に着けていた時計こそがゼニスA384と思しきモデルであり、ルパン三世の50周年を記念して、2次元から3次元の世界へと蘇らせました。
前述の「007」のような実写作品であれば、製品そのものを市販することで目的を達成することが出来ますが、アニメーション、それも1971年放映時に描かれていたセル画上の時計を現実のものとするには、製品として完成した際の、わざとらしくならないギリギリのラインが存在するはずですし、それを見事クリアしたのがこちらのモデルであると言えます。
製品から漂う70年代当時の空気感、ダイアルの仕上げ故か、セル画に描かれたそれを彷彿とさせ、現実世界の製品としては良い意味での違和感を楽しむことが出来る仕上がりとなっています。
また、この製品に一層のリアリティを与える要素として、当時のゼニスで採用されていたゲイフレアー製のラダーブレスレットを復刻再現している点も見逃せません。
ラダーブレスレットについてはこちらのモデルに限らず、A384リバイバルと呼ばれるレギュラーモデルに採用されるものですが、その名の通り梯子状のブレスレットは中央の駒に大きな隙間があり、またクラスプに関してもプレス成型した簡易的な形状を持っています。
今日のゼニスのような価格帯では採用しない仕様を、復刻の名のもとに忠実に再現されたことから、小手先だけでは無いこだわりが感じられますし、ユーザーサイドも、あえての仕様に対する理解が深まってきたからこそ、これは時計文化が成熟してきた一つの現れではないでしょうか。
セル画に描かれた一つの時計、それを現在に蘇らせたゼニスのこだわり、メーカーもユーザーも過去の名作を迎合できる、そんな時代だからこそ生み出されたモデルこそ、A384リバイバル ルパン三世 50thアニバーサリーエディションの本来の姿であるように感じます。
クロノマスター エル・プリメロ A384 リバイバル ルパン三世 50thアニバーサリーエディション Ref.95.L384-2.400/27.M384