「ロレックス エアキングとは」 2019年11月12日
2019-11-12 11:00
こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
夜は寒くなりましたね。季節の変わり目ですので、みなさまご自愛くださいね。
さて、本日はロレックスの”エアキング”のお話をさせていただきます。
はじめに
ロレックスを空の世界と結ぶ代表的なモデルといえば、みなさんGMTマスターを思い浮かべますよね。
初代GMTマスターRef.6542(下写真)は1955年に発表され、パンアメリカン航空(通称:パンナム航空)がパイロット達のために、製作・販売したモデルなので名が知れ渡っていますが、実はそれ以前にパンナム航空では、長く勤めたパイロットへロレックスの”エアキング”を贈るというのが慣例でした。
今回のブログは、GMTより前にロレックスを空の世界と繋いだ、初代エアキングから最新のエアキングまで、逸話を交えながらみなさんにお伝えいたします。
初代エアキング
1940年代、初代エアキングとして発表されたRef.4365は、”KINGキング”の名の他に「AIR エア」の付くモデルが存在します。”AIR-GIANT エアジャイアント”、”AIR-LION エアライオン”、”AIR-TIGER エアタイガー”が確認できており、いずれも表記は大きな英字のゴシック体、現在日本には在庫がありません。
同時期に発表されたRef.4925もそうですが、非常にレアモデルなので状態のいい個体は少しずつプレミアが付き始めています。ただ、 ここ十数年動向を見て来ましたが、スポーツモデルのように何百万という価格上昇は難しいです。
しかしそういうモデルだからこそ、何十年とかけて一緒に価値を高めていく、親から子へと繋いで行く腕時計として、もし入荷したら私はおすすめしたいです。
次世代のエアキング
1950年代には34mmのref.6552とRef.5500が登場、当時は36mmのエアキングRef.5504というモデルも存在し、5504といえばエクスプローラーを思い浮かべる方が多いと思いますが、実はエアキングも存在するんです。エクスプローラーの名になっただけで、まさかの100~状態のいいもので300万超え・・・!Ref.5504エアキングは現在50万円前後ですが、36mmのエアキングは国内では在庫が確認できず、レアモデルと言えるでしょう。
上写真のRef.5500が初代と思っている方も多く、このモデルからロゴが我々のよく知る筆記体 ”Air-King” になりました。
なぜこのモデルが有名なのかというと、5500は1950年代後半~1980年代までのロングセラーで、製造本数が多いので現在でも比較的安価で手に入りやすいアンティークとして人気も高いためです。
丸いプラ風防と筆記体のロゴの相性がとてもよく、ボーイズサイズなので女性にも好まれているんですよ。
Ref.5501というSS/YGのコンビモデルもあります。
日付付きエアキング
1950年代には他にRef.5502、Ref.5506、Ref.5520があり、いずれもGF(Gold Filled=ゴールドフィルド・金張り)モデルです。この時代にももちろん金無垢のロレックスは存在したので、エアキングもそうなのかなと思って調べてみると違いました。金無垢にすると高額になってしまうので、あえての金張りは”入門モデル”というコンセプトに忠実なロレックスのこだわりなんだと思います。
また、1960年代~1980年代までRef.5700” エアキングデイト ”(コンビモデルはRef.5701)という日付付きのエアキングも製造しており、たまに日本でも見かけますがいい個体のものは非常に少ないため、見付けたらご購入されることをおすすめします。(上写真)
実用性を高めたエアキング
1990年、5桁のエアキングRef.14000(上写真左)Ref.14010(上写真右)が発表され、ムーブメントがCal.1520からCal.3000へ、ガラスがプラ風防からサファイアクリスタルへと変更になりました。(14000はポリッシュベゼル、14010はエンジンターンドベゼルが付きます)Cal.3000はRef.14270とRef.14060にも搭載されている当時の最先端ムーブメントです。
2001年にはRef.14000M、Ref.14010Mが登場、14000との違いはムーブメントで、時計の心臓部である”テンプ”を支えるブリッジを一本(片方)で支えていたものを二本(両方)で支える仕様に変更、より耐久性が向上しています。
外装はラグ穴を塞いだケースへ、6時位置に王冠の透かしが入ったガラスへ変更となり、一見見た目がほぼ変わらないため、「M」の文字をリファレンスに追加しています。このMとは、一番の大きな変更点であるMovementのMの文字だと推測します。
また、Ref.5500以前のモデルはリーフ、ドルフィン、アルファ針でしたが、5500からペンシル針に変わり、14000、14000Mからはバー針に変更となりました。
ちなみにどちらのモデルも最後までノンクロノメーターでした。
生産僅か7年のエアキング
2007年、6桁のエアキングRef.114200(上写真左)、Ref.114210(上写真真ん中)、Ref.114234(上写真右)が発表され、ムーブメントは変わらずCal.3130ですが、クロノメーターへ変更となりました。大きく変わったのは外装で、空洞だったブレスレットをステンレスの塊を繋げることで堅牢性を高め、ベゼルとラグがボリュームアップをし、クラスプも改良されました。114210はエンジンターンドベゼル、114234はSS/WGのコンビ、ダイヤ付きのエアキングも初めて登場しました。
また、ダイヤルバリエーションも豊富になり、基本の3・6・9の間のバーにピンク・ブルーを差し色に入れた文字盤、1~11のオレンジ色のアラビア数字でコンセントリック文字盤(渦巻きのような円模様)、グレー文字盤のプリントローマと今までにないポップなエアキングを製作していました。
しかし2014年、突然の生産終了。
その後、34mmのロレックスはオイスターパーペチュアルとしては製作していたものの、エアキングの文字は跡形もなく消えていたのです。
新生エアキング
2016年、エアキングはその風貌を大きく変えてRef.116900として突然の復活を遂げます。
ムーブメントはなんとミルガウス専用のCal.3131、ケースもミルガウスなんです。そしてエクスプローラーⅠ Ref.214270の文字盤とベンツ針、ブレスレットを採用、3・6・9の文字の間、バーのあった所に5~55の数字を入れ、ロレックスのコーポレートカラーのグリーンをROLEXの文字と秒針に配し、王冠マークはイエロー・・・よく見ないとエアキングと分からないほど、大きく変身しました。
40mmというサイズもそうですが、大きなフォントのアラビア数字を文字盤に描くことにより、パイロットウォッチの要素が強まり、パイロットウォッチの大きな特徴である逆三角形のマークも入っていますよね。
外と中身はミルガウス、文字盤はエクスプローラーⅠ。なんとも贅沢なモデルなんですよ、新生エアキングは。
しかし良心的な価格設定で、ファーストロレックスに相応しいモデルというコンセプトは製作当初から変わっていません。
最新のエアキングは、1930年代の航空黄金期にオマージュを捧げたモデルなのです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。冒頭でもお伝えした通り、ロレックスの最初の航空時計はGMTではなくエアキングだったんですね。
一番有名な逸話は、1930年代に当時の大変著名な人物であるイギリス人パイロットのチャールズ・ダグラス・バーナード氏が、長距離飛行を行った際、ロレックスを着けていたというのがはじまりです。氏がロレックスの機能と視認性を絶賛し、今後も使い続けると宣言したのをきっかけに、他のパイロットたちにロレックスの素晴らしさが瞬く間に広まったのでしょう。その後、高度一万メートルものエベレスト上空を、ロレックスはパイロットの腕に着けられ一緒に飛んだのですから。
現在、店頭に14000Mと116900がございます。
古き良き伝統的なエアキングと、最先端ですがクラシカルなパイロットウォッチのポイントを押さえたエアキング。 全く印象の違う二本ですが、どちらもロレックスの扉を開くモデル、ファーストロレックスとして選んでみませんか?
このブログをご覧になって気になられた方は是非、見比べにいらっしゃって下さい。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。