一つの時計と向き合ってみる【パルミジャーニ フル リエ トンダPFマイクロローター】
2024-05-28 11:00
ブログをご覧の皆様こんにちは、銀座エバンスの福永です。
今回ご紹介の時計はパルミジャーニ フルリエのトンダPFマイクロローターです。
2010年代に沸き起こったオーデマピゲやパテックフィリップなどハイブランドが手掛けるラグジュアリースポーツウォッチの一大ムーブメント、それを機に各社カジュアルウォッチともスポーツウォッチとも異なるブレスレット付のモデルを多く手掛けるようになりましたが、その文脈の中において一つの完成形を見せたのがトンダPFではないでしょうか。
パルミジャーニ フルリエが幾度となく手を加えてきたハウススタイルの一つであるトンダですが、細部に技巧を凝らしつつ極めてミニマルにまとめ上げたトンダPFのデザインは静謐で上質な雰囲気を纏い、従来の高級時計が追い求めていた理想像とは異なる、全く新しい表現を持って生み出されました。
パルミジャーニ フルリエ
パルミジャーニ フルリエは時計師そして修復師として成功を収めたミッシェル・パルミジャーニ氏によって1996年に設立されたブランドであり、デザインから生産までを傘下のケースメーカーのレ・アルティザン・ボワティエや、ムーブメントメーカーのヴォーシェなど世界有数のサプライヤーと共に行う、他の高級ブランドでは見られない体制を整えています。
ブランド設立時より自然界から着想を得たモチーフ、黄金分割比を取り入れたデザインを特徴とし、今日においては時計の装飾面における卓越した技術を、サルトリアのそれになぞらえ表現するなど、独自の世界観を持った美しい製品を生み出し続けています。
また、2021年以降はグイド・テレーニ氏が参画する事で、パルミジャーニ フルリエの培ってきた伝統や技術に、現代的な要素を加味する事でラグジュアリーブランドとして更なる飛躍を遂げています。
トンダ
今回ご紹介のトンダは、円形を意味するイタリア語「TONDA」からネーミングされており、トンダの系譜は2010年に発表されたトンダ エミスフェールまで遡ります。
ラウンドケースを持ったトンダはパルミジャーニ フルリエが思い描く美しさを表現するキャンバスであり、ブランドの原点であるトリックの要素を随所に取り入れた普遍的な美しさを讃えるシリーズとも言えます。
また、トンダPFが生み出される前夜とも言える2020年にはトンダGTが発表され人気を博しましたが、ブレスレットを備えスポーティなスタイルを持ったトンダGTは、トンダPFとの共通項が多く感じられながらも、その方向性とは異なる所謂ラグジュアリースポーツ感の強いデザインを特徴としました。
トンダPFの魅力とは
2021年に発表されたトンダPFマイクロローターは、前述のグイド・テレーニ氏る最初のモデルですが、その薄くスリムなケースは7.8mmに抑えられ、全体的なフォルムはドレスウォッチであるかのような造形を持っています。
実際にトンダPFを手にしてみると、そこには静寂の世界が広がりますが、プラチナ製のベゼルにはローレット加工が施され、ダイアルの麦の穂をイメージしたバーリーコーンギョーシェは、光の当たりや眺める方向により様々な表情を見せてくれます。
また、他の多くの時計で見られるような秒針や、ブランド名や機能を示すテキストは排され、ダイアル上には美しく仕上げられた「PF」ロゴだけが輝く姿は、いたずらに誇張しない製品としての完成度の高さを物語っているかのようです。
ケース裏面からはパルミジャーニ フルリエの定番とも言える、厚さ3mm程に抑えられた薄型自動巻きムーブメントCal.PF703を見ることが出来、マイクロローターを採用したそれは、過度な装飾は控えながらも、しっかりと手の加えられた質感の高さが見て取れます。
また、トンダPFのハイライトの一つと言えばブレスレットにあり、短かく幅の広いコマの連結が生みだす極めて滑らかな装着感は、まるで時計を身に着けている感覚さえ忘れてしまうかのようでもあります。
ブレスレットウォッチの新たな可能性を示したトンダPFは、高い審美性を備えつつもアンダーステートメントに徹した、次世代の高級時計の姿を体現してみせた傑作と言えるのではないでしょうか。