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チャペック「アンタークティック パサージュ・ドゥ・ドレーク」

2023-01-31 11:30

こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
本日はチャペックから「アンタークティック」のご紹介です。

チャペックとは

1832年、最初の会社「Czapek & Moreau」創業者の一人であるフランソワ・チャペックは、その後運命的に出会ったアントワーヌ・ノルベール・ド・パテックと共同で1839年に「Patek, Czapek & Cie」を設立します。ちなみに、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとは、なんと、あの、パテックフィリップの創始者の一人なんです!

細かくお伝えすると、パテック氏が後にジャン・アドリアン・フィリップと出会って「パテックフィリップ」を設立、パテック氏との契約は6年間で、1845年からはまた別のパートナーのユリウス・グルゼフスキーと共に改めて「Czapek & Cie」を設立したというわけなんです。チャペック氏はその頃にはなんとナポレオン三世の専属時計職人として時計業界で一目置かれる存在になっていたのにも関わらず、まさかの謎の失踪を遂げ、チャペック社は幻のように消えてなくなってしまったのです。

そして2012年、ある三人の起業家達が時計業界初のクラウドファンディングを行い、2015年に見事チャペック社を復活させました。チャペックとは、世界中の時計愛好家によって再興されたブランドだったんですね。

モデルバリエーション

新生チャペックのファーストモデルは「Quai des Bergues ケ・デ・ベルク」というラウンドの、1850年にチャペックが製作した懐中時計へのオマージュモデルです。中でもローズゴールドケースに真っ白なグランフーエナメル、”No.33bis”は、2016年のGPHG(Grand Prixd’ Horlogerie de Geneve=ジュネーブウォッチグランプリ。2001年より始まった、時計業界で最も重要な賞のひとつ)で一般の時計愛好家達の投票による”パブリックプライズ”を受賞したことで一躍有名なモデルとなりました。その後、ダイヤルバリエーションを増やし、昨年には珍しいリコシェパターンというユニークなギョーシェの文字盤に、大胆なグリーンとブルーのエナメルを重ねた文字盤をリリース。チャペックファンにはたまらない作品となっています。

2017年にセカンドモデル「Place Vendome Tourbillon プレイス ヴァンドーム トゥールビヨン」 を発表。1850年にフランソワ・チャペックがはじめてのブティックをオープンした場所、”ヴァンドーム広場”の名前をそのまま時計のモデル名にしています。

2018年にはサードモデル「Faubourg de Cracovie chronograph フォーブル ド クラコヴィ」を発表。こちらは、1854年にオープンしたポーランドのブティックの場所にちなんで付けられたそうです。

そして2020年、今回ご紹介する「Antarctique アンタークティック」を発表。意味は”南極” で、独特な文字盤デザインとブレスレットの形状が印象的なモデルです。2022年には直径38.5mmの薄型アンタークティックを発表、文字盤色はグレイシャー・ブルー、サーモンの他、地球上で最もレアな金属(地殻に極少量しか存在しない)”オスミウム”を採用。まるでダイヤモンドを敷き詰めているかのように妖しく輝くその文字盤は、見る者全てを虜にすることでしょう。(上写真)アンタークティックについては次のチャプターで詳しくお話します。

他には特注によるメティエダール(熟練の職人による卓越したエナメル加工技術)の製作を行っており、世界数本限定で非常に稀少なモデルも存在します。(ちなみに先述したオスミウム文字盤は世界限定38本の定価1200万円です…!)

アンタークティックの発表で大成功を収めた同社は、生産がとても追い付かず2021年、スイスのラ・ショー・ド・フォンに今までの5倍の大きさの新しい工房を建てました。それでも、年間生産本数は最大5000本までという固い信念を持っており、品質を保つためと特別性を持たせるためと考えているそうです。これから少しずつ増えるバリエーションがとても楽しみですね。

アンタークティックとは

2020年、チャペック初のスポーツモデル、金属ブレスレットモデルとして発表されたアンタークティック。流れるように腕に沿う美しいブレスレットリンクデザインは、Czapekの「C」の形をしていて、珍しいデザインの文字盤だけでなく、ブレスレットをも一目見たら忘れられない印象的なモデルです。現代版らしく、ブレスレット裏にはクイックチェンジ・システムが備わっており、簡単に付属のラバーベルトに付け替えることができます。

アンタークティックは現在受注の約80%を占めており、ここ数年のラグスポブームにピッタリのモデルでチャペックの名を世界に広めたフラッグシップモデルです。

世界限定99本で発表された「Antarctique Terre Adelie アンタークティック テール・アデリー」がまさかの二週間ちょっとで完売という大成功を収めました。コロナという世界的大打撃のパンデミックの中、しかも再興とはいえ新参のウォッチブランドが。この驚きのニュースは時計愛好家たちの興味を大いに惹いたのです。

そして同年の冬、今回ご紹介する「パサージュ・ドゥ・ドレーク」というユニークなデザインの文字盤を採用した新しいアンタークティックを発表。不規則な3Dエングレービングのトラペゾイド(台形)パターンは、”Stairway to Eternity 永遠への階段”と名付けられ、角度によって模様なしの一色で濃く見えたり、キラキラ輝いたり、いろいろな表情を見せてくれます。

特筆すべきはアンタークティック専用に設計・デザインされたジャーマンシルバー(洋銀)ムーブメントです。先程お伝えした一目見たら忘れられないという特徴のひとつで、”SXH5”と名付けられています。一番目を惹くのは、各歯車を独立して支えているブリッジですね。これは懐中時計の古典的な手法で、ムーブメントを見ただけでチャペックだと分かるためとも考えられ、私自身こんなに大胆な意匠の凝らされたキャリバーを見たことがありません。(下写真)表面も裏面も、ブレスレットまでも見ていてこんなに飽きさせないモデルが他にあるでしょうか。知れば知るほどチャペック沼に嵌っていく、記事を書いていてそんな不思議な感覚を覚えました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。まだまだ語り尽くせないチャペックの魅力、みなさん感じていただけましたでしょうか。

この記事を読んで気になられた方は是非、一度実物を見にいらっしゃって下さい。写真だけでは分からないこの意匠を直接お伝えしたいです。みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。

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