今回のエバンスブログは、ROLEX(ロレックス) デイトナのユーズドウォッチから、ホワイトゴールド素材のRef.16519をご紹介します。1998年頃に製造された自動巻きのデイトナなのですが、なにげにレアなポイントが多めな1本なのです。
今回の時計の概要
(今回の時計、ホワイトゴールド素材の「ロレックス デイトナ Ref.16519」U番 1998年頃の製造品。白文字盤にアラビア数字インデックスの1本。 革ベルト仕様。バックルは片開きでダブルロック。)
こちらのデイトナ(Ref.16519)は、ホワイトゴールドケース、白ダイアルにアラビア数字、ブラウンのカーフ革ベルトという仕様。ゼニス社の「エル・プリメロ」をベースとしたムーブメントを搭載した、自動巻きデイトナとしては第一世代となるモデルです。
次からは、4つのレアポイントをご紹介していきます。
【レアポイント1】短い生産期間
今回の時計と同世代となる「5桁型番のデイトナ」一例 (1、ステンレス素材(Ref.16520) 2、イエローゴールド素材。こちらはインデックスがダイヤモンドのRef.16528G 3、ステンレスとイエローゴールドのコンビ。こちらはインデックスがダイヤモンドののRef.16523G 4、イエローゴールド素材×革ベルト仕様(Ref.16518))
「ポストヴィンテージ(セミヴィンテージ)」と呼ばれ、注目され始めている1980年代~2000年頃の腕時計。「現行新品にない仕様や雰囲気がある」、「ヴィンテージほど敷居が高くない」、「日常にも使えそう」といったことから人気が上がっています。
ロレックスでは「5桁型番」が、ポストヴィンテージ世代に該当します。5桁型番のデイトナは、1988年頃にステンレス(Ref.16520)、イエローゴールド(Ref.16528)、イエローゴールドコンビ(Ref.16523)の3種類で登場しました。
革ベルト仕様の誕生は、それから遅れ、イエローゴールド(Ref.16518)が1991年頃、ホワイトゴールド(Ref.16519)が1998年頃の登場となります。
(■5桁型番デイトナの生産年一覧。ステンレスやイエローゴールド素材が中心のラインナップだった。 ■今回のデイトナ(Ref.16519)のバックル金具部分。18Kゴールドを示す刻印「18K 750」も入っている)
5桁型番のデイトナが生産終了になるのは、後継の6桁型番(Ref.116520など)が誕生する2000年頃のこと。ホワイトゴールド&革ベルトのデイトナは「わずか2年ほどの生産」で、5桁型番のデイトナで一番短命だったことになります。
また、ホワイトゴールドの5桁デイトナに「ブレスレット」仕様は存在しません。ホワイトゴールド×ブレスレットのデイトナ(Ref.116509)が登場するのは、2004年頃のこと。1990年代のロレックスでは、ホワイトゴールドはメジャーな存在でなかったものと思われます。
【レアポイント2】エル・プリメロ
(■5桁型番のデイトナに搭載されたCal.4030。ゼニス社のエル・プリメロをアレンジしたもの ■2000年に発表された6桁型番(Ref.116520など)に搭載されたCal.4130。ロレックス初の自社製による自動巻きクロノグラフムーブメント。ローターに”DAYTONA”の文字も)
ロレックス初の自動巻きクロノグラフとして登場したのが5桁型番のデイトナ。それらに搭載されていたのが、ZENITH(ゼニス)の自動巻きクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ(EL PRIMERO)」をベースとしたムーブメントでした。
エル・プリメロは、36,000振動/時のハイビート仕様で、世界初の自動巻きクロノグラフの一つとして1969年に誕生。しかし、クォーツショックによる不況の影響で生産中止となり、図面や金型も破棄。1980年代に、技術者が隠し持っていた資料から奇跡の復活を遂げたという、伝説のムーブメントなのです。
今回の5桁デイトナでは、そのエル・プリメロをベースに、振動数を28,800振動/時に変更、日付機能を取り除き、新しい脱進機やテンプに積み替えるなど、ロレックス独自のアレンジを加えています。
後継となる6桁型番からは、ロレックスの完全自社製ムーブメントとなりました。そのため、5桁型番のデイトナは、ゼニスの名機「エル・プリメロ」を搭載したモデルとして、注目されているのです。
【レアポイント3】革ベルト
(■今回のRef.16519はカーフ素材の革ベルト。現行スポーツ系ロレックスに「革ベルト仕様」は存在しない ■現行デイトナで使われている人工ラバーの「オイスターフレックスブレスレット」。しなやかな装着感も特徴。写真はエバーローズゴールド素材(Ref.116515LN)。オイスターフレックスブレスは、ヨットマスター、スカイドゥエラーにも存在)
現行のゴールド系デイトナに「革ベルト」仕様は存在しません。柔軟なメタルブレードを人工ラバー(エラストマー)で覆った「オイスターフレックスブレスレット」仕様が、2017年にデイトナに加わり、生産終了となったのです。
また、オイスターフレックスブレスレットのデイトナでは、ベゼルがセラミックになったため、「ベルト&ゴールド製ベゼル」というのも、今はない組み合わせだったりします。
ちなみに、革ベルトモデル(オイスターフレックスモデルも)は、ゴールド素材だけの仕様となります。革ベルトは、ゴールドのブレスレットと比べ非常に軽いため、重くなりがちなゴールドモデルを、軽やかにシックに楽しんでいただける利点もあったりします。
【レアポイント4】アラビア数字
アラビア数字インデックスのデイトナ一例 (5、今回のデイトナ。ホワイトゴールド 5桁型番(Ref.16519) 6、イエローゴールド素材 5桁型番(Ref.16518) 7、ホワイトゴールド素材 6桁型番(Ref.116509) 8、エバーローズゴールド×オイスターフレックスブレスレット 6桁型番(Ref.116515LN)ベゼルはセラミック製)
今回のデイトナのインデックスは「アラビア数字」。ゴールドやコンビ素材のデイトナにラインナップしていました。6桁型番のデイトナにもアラビア数字のモデルが存在したのですが、2010年台後半にいずれも生産終了しています。ロレックス全体を見ても、現在はアラビア数字インデックスのモデルはほとんど存在しないようです。
アラビア数字は、どこかカジュアルで親しみやすい雰囲気があります。パテックフィリップの2022年新作で、現代的なアラビア数字のカラトラバなどが登場し、話題になったりしていますので、そのうち、ロレックスでも増えてくるかもしれないですね。
さりげなくレア、大人な1本。
(■今回の時計Ref.16519の夜光は「トリチウム」 ■腕回り16.5cmのスタッフが腕に乗せてみました。革ベルトのデイトナはスーツに似合いますね。)
「ROLEX デイトナ Ref.16519」いかがだったでしょうか? 短期生産、ホワイトゴールド、エル・プリメロ、革ベルト、アラビア数字と、さりげなくレアなポイントが多くある1本です。
「デイトナと言えばステンレス」というのが、現在の主流なのかもしれませんが、ギラギラしすぎない大人なゴールド系デイトナで、実は珍しいという、こんな1本もいいのではないでしょうか。
→「ROLEX(ロレックス) デイトナ ホワイトゴールド Ref.16519」
(USED、40mm径、ベルト約17.5~19cm、トリチウム夜光、U番(1998年頃製造品))