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ドレスウォッチの現在地

2022-07-12 11:00

いつもエバンスブログをご覧頂きましてありがとうございます、銀座エバンスの福永です。

最近にわかに注目を集めるドレスウォッチですが、それは以前のようにフォーマルな印象を求め、あるいは煌びやかな雰囲気を纏うだけの存在では無くなりつつあることをご存知でしょうか。
腕時計が本来持つ普遍的なスタイル、そこに少しの遊び心や、ミリタリーな雰囲気を加えた、肩肘張らずに楽しむことが出来るカジュアルさを纏ったドレスウォッチ、今後の腕時計のトレンドを占う上でも注目してみたいと思います。

カジュアルなドレスウォッチ、それは様々なブランドが発表するモデルからも感じ取ることができ、最近話題となった代表的なところで言えばパテックフィリップのRef.5226Gがあげられます。
2022年の新作として発表されたこちらは、同社のドレスラインであるカラトラバでありながら、パイロットウォッチの意匠を多く取り入れた仕上がりとなっています。

Ref.5226G-001

2010年代以降、スポーティな時計が多くの支持を集め、また高級ブランドが手掛けるラグジュアリースポーツと呼ばれる、明らかに手間のかかった仕上げが施されたスポーツウォッチの再燃、また追随するブランドからも同様のテイストを持ったモデルが多く生み出され活況を呈しました。

スポーツウォッチへのカウンターカルチャー、などど言っては語弊がありますが、カジュアルを受け入れるドレスウォッチは、その守備範囲の広さからも徐々に時計市場における勢力を増してくるのではないでしょうか。

そこで今回は、個人的にも気になっているパテックフィリップのカラトラバRef.5053を例にとり、カジュアルなドレスウォッチについて、もう少し掘り下げてみたいと思います。

カラトラバRef.5053概要

Ref.5053G-001

パテックフィリップのRef.5053の生産期間は2001年から2005年と短く、素材のバリエーションはWGの他、YGとRGがラインナップされ、文字盤はいずれもアイボリーにブレゲ数字とブレゲ針の取り合わせとなっています。

生産期間の短さもですが、オフィサーケースを採用したデザインのラインナップは限られ、現在では目にする機会も少ないモデルと言えます。

オフィサーケースとは

オフィサーケースのデザインについて、その名称が表すように軍の将校や士官が身に着けた腕時計がモチーフとされています。

腕時計の黎明期、懐中時計から腕時計へと移り変わる中、腕時計初期のスタイルは懐中時計にワイヤー状のラグ、あるいはストレート形状のラグを備え、ベルトを取り付けるといった構造を持っていました。

また、風防保護の観点からハンターケースと呼ばれるヒンジ開閉する蓋が用いられた懐中時計に倣い、今日のオフィサーケースにおいては裏蓋に開閉機構を与え、ムーブメントが鑑賞できるように仕立てられるようになりました。

Ref.5053G-001

懐中時計から腕時計へ、時代の転機を象徴するオフィサーケースに見られるデザインは、エレガントだけではない軍需としての側面を強く持つものであったと言えます。

そして実用を伴う意匠の数々は、腕時計に強い個性を与えることに成功し、機能美と言えるそれらは研ぎ澄まされ、今日ではドレスウォッチの一角を構成しするに至りました。

パテックフィリップの現行モデルから、オフィサーケースのカラトラバ見つけることは出来ませんが、ネジ付きのストレートラグを備えたモデルをレディースモデルRef.7200Rに見ることが出来ます。

Ref.7200R-001
出典 https://www.patek.com

ドレスウォッチへの回帰

では、今なぜドレスウォッチが見直されているのか。

それは先にも触れましたが、スポーツモデルに対する反動の表れであると考えられますが、一方でコロナ禍における生活様式の変化も、大きな要因ではないでしょうか。

また、ハイエンドブランドにおいても、ドレスウォッチのカジュアル化は顕著であり、時計自体のデザインもさることながら、ベルト素材についても積極的にカーフが用いられたり、アリゲーターに関しても従来の加工とは異なる起毛仕上が用いられたりと、従来であればパネライなど明らかに軍需にルーツを持つようなブランドが好んで採用していた素材感を取り入れるようになってきました。

コロナ禍で人と接する機会が減少していた段階から、徐々に活動の領域が広がる今日において、装いにも変化も見られるようになりました。
それは以前ほどフォーマルではないが砕け過ぎない雰囲気、そこにピタリとはまるのがカジュアルなドレスウォッチ、それであると言えます。

Ref.LCF013.AC.G3N
出典 https://laurentferrier.ch

ドレスウォッチのこれから

腕時計のトレンドはファッションと呼応し、今後もスピードを持って変化していき、ドレスウォッチにおいても時代の空気を取り込みながら、人々のニーズに合わせた製品が生み出し続けられることが予想されます。

Ref.5053G-001

これまで、いくつかの視点でドレスウォッチの今を見てきましたが、その根底に流れるものは、腕時計の基本的なスタイルそのものであると言えます。

奇をてらうことなく、フォーマルにもカジュアルにも、そのイメージを切り替えることが出来るドレスウォッチは、長く使うには最も適した選択なのかもしれません。

記事中でご紹介したパテックフィリップ Ref5053Gは、こちらからお買い求めいただけます。

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