TAG HEUER(タグホイヤー) モナコ、年代違いの3本を見てみました。 2022年2月7日
2022-02-07 11:00
今回のエバンスブログは「TAG HEUER(タグホイヤー) MONACO(モナコ)」。スクエアケースが特徴的なスポーツモデルです。1969年の誕生から、生産休止を挟みつつも、50年の歴史があるモナコ。今回は、1970年代、1990年代、2020年代、年代違いの3本のモナコをご紹介します。
今回の3本の概要
(今回の3本 ■1970年代のモナコ Ref.1533 ■1998年の復刻限定モナコ CS2110.FC8119 ■ブレス仕様の現行モナコ CBL2111.BA0644)
現在、銀座エバンスの店頭に3種類のモナコが並んでいます。左リューズの1本は「1970年代前半のセカンドモデル」。黒ダイアルの1本は「1998年の復刻限定モデル」。ブレスレットの1本は、ハイエンドなムーブメントを搭載した「現行モデル」の1本です。
MONACO(モナコ)の歴史を振り返る
(初代モデル(Ref.1133)の復刻「モナコ キャリバー11 (CAW211P.FC6356 2015年発表)」。左リューズ、ブルーダイアルにシルバーで四角い2つ目インダイアル、水平方向に伸びたインデックスなど初代モデルの特徴の多くを再現している)
一度見たら忘れられない角型ケースの「モナコ」ですが、長い歴史と名作ならではのストーリーがあります。ここではその歴史のポイントを振り返ってみます。
・1969年に誕生した「世界初(※1)」の自動巻きクロノグラフの一つ
・「角型の防水ケース」に「左リューズ」という個性的なフォルムで誕生(※2)
・1971年に俳優スティーブ マックイーンがレース映画「栄光のル・マン」で着用(※3)
・1970年代半ばに生産終了
・1998年に限定モデルとして復活、徐々に定番化
※1 1969年は「世界初」の自動巻きクロノグラフムーブメント搭載モデルが「複数」誕生した年。1月に「ゼニス」とモバードのグループが高振動の「エル・プリメロ」を新聞紙上で発表、3月にタグホイヤーやブライトリングなど4社のグループが「クロノマティック(cal.11)」ムーブメントを搭載した複数のモデルを、世界に向け大々的に発表。「セイコー」が垂直クラッチとコラムホイールを採用した自動巻クロノを5月に発表し6月に市販しており、各社それぞれに「世界初」を謳うこととなる。また、この年の年末には、セイコーからクォーツ式の腕時計が発売され、「クォーツショック」が始まることとなる。
※2 角形の防水ケースはケースメーカーの「ピケレ」社の提案によるもの。自動巻きクロノ発表時にホイヤーからは「カレラ」、「オータヴィア」も発表されており、角形のモナコは、異端の存在だった模様。
※3 マックイーン自身があえてホイヤーのモナコを選んだと言われている(オメガが候補に挙がっていた)。ちなみに、劇中で着用のレーシングスーツに「HEUER」ロゴが入っているのは、F1レーサー「ジョー シフェール」のスーツを模したため。シフェールはホイヤーのアンバサダーで「オータヴィア」を着用していたとか。
角形の防水ケースという強烈な個性をまとって登場した「モナコ」。名優スティーブ マックイーンに着用されたことで注目が上がるも、1970年代に一度は生産終了。独自の存在感を放ちつつも、ずっと人気だったとも言い切れない個性派な時計だったのです。
ここからは、今回の3本をそれぞれご紹介します。
(1) 1970年代前半品 ~セカンドモデル Ref.1533
(■1970年代のモナコ Ref.1533 ■裏側から。升のような形の2つのケースをかぶせ合わせたようなケース構造となっている)
ブルーの文字盤にレザーベルトのこちらは、1970年代前半に製造されたセカンドモデル(Ref.1533)。
初代モデル(Ref.1133)のムーブメント(Cal.11=クロノマティック)を改良したCal.15を搭載するため、インダイアルの配置が異なります。また、こちらは文字盤の配色もモナコによくある青&シルバーでなく、青&グレーとなっています。
ダイアルは10時位置にスモールセカンド、3時位置にクロノ30分計を備えます。「10時」位置の秒針が、この型番ならではの個性となっています。
(■1stモデルと同様の丸いプッシュボタン ■バックル式のベルト)
一方、自動巻きで巻く必要がなくなったことをアピールしたと言われる「左リューズ」や、防水性を保つために、サイドと一体化した2つのケースをかぶせ合わせたような「独特なケース構造」や丸いプッシュボタン、角型のプラスティック風防などは1stモデルと同様で、アヴァンギャルド(前衛的)な印象は引き継いでいます。
50年もの時を経て、ダイアルの周辺部などに経年変化が見られるものの、ケースの角は比較的残っています。大胆でモダンなデザインということもあり、古さをあまり感じさせない1本だったりします。
→TAG HEUER(タグホイヤー)「モナコ(ANTIQUE)」Ref.1553
(2ndモデル、約40×40mm、ステンレス、自動巻き、1970年代品、プラ風防)
(2) 1998年復刻限定 ~CS2110.FC8119
(■1998年の復刻モナコ CS2110。5000本限定モデル ■裏蓋は一般的なねじ込み式。限定番号も入っている)
ブラックダイアルのこちらは、1998年に発売された5,000本の復刻モデル。1970年代半ばからこのモデルが出るまで、モナコの歴史は途絶えており、復刻は大きな話題となったようです。
「HEUER」のみの旧型ロゴに、オリジナル同様のプラスチック風防といった部分は、オリジナルモデルの雰囲気を踏襲。
一方、文字盤がツートーンでなくブラック一色で、インダイアルの目盛が角型でなく円形、バーインデックスも放射状に配置され、比較的スタンダードなレイアウトとなっています。
インダイアルは、9時位置がクロノ30分積算計、3時位置はスモールセコンドとなります。
(■リューズは右サイドに配置、プッシュボタンは角型となっている ■ベルトはピンによる尾錠式)
リューズは右、裏蓋はステンレス製で一般的なねじ止め式。加工技術の向上等で特殊な構造でなくても、角型で防水性を保てるようになったためと思われます。プッシュボタンは角型で、ここもオリジナルや2ndモデルとは異なるところです。
久々の復刻ということで、初期モデルの忠実な復刻というよりは、アレンジを加え、落ち着いた印象に仕上げたこちら。クラシカルさを保ちつつも、シンプルにまとまっており、使い勝手の良さそうな印象もあります。
→TAG HEUER(タグホイヤー)「モナコ(USED)」Ref.CS2110.FC8119 (sold out)
(1998年復刻、約38×38mm、ステンレス、自動巻き、限定5000本、プラ風防)
(3) 現行のブレス仕様 ~CBL2111.BA0644
(■ブレス仕様の現行モナコ CBL2111 ■両開きのブレスレットにガラスの裏蓋)
ブレスレット仕様のこちらは、タグホイヤーの最上位ムーブメントである「ホイヤー02」を搭載した1本。こちらは2020年に発表されたブレスレット仕様です。
文字盤は、ブルー&シルバーでモナコらしい配色の文字盤。6時位置のスモールセコンドをブルーの面に配することで、モナコの個性の一つである「2つ目」に見えるよう工夫されています。
ブレスレットは1970年代に使われていたH型と呼ばれるブレスレットのフォルムを踏襲、約20年ぶりの復活だったそう。
(■大きく張り出した風防はサファイアガラス製 ■ホイヤー02ムーブメントのTAG HEUERロゴの上に赤いコラムホイールが見える)
風防はプラスティックでなくサファイアガラス。ドーム型の膨らみのある形状で雰囲気があり、傷がつきにくく実用性に優れます。
ムーブメントの自社製「ホイヤー02」は80時間のパワーリザーブを実現した最新の基幹ムーブメント。高級ムーブメントの証である「コラムホイール」と「垂直クラッチ」を採用します。シースルーバック化された裏蓋からは赤いコラムホイールを見ることができます。
角型のモナコの個性は残しつつ、ガラス風防、シースルーバック化などで今の時代を意識。レトロな趣きのある外観に現代的な機構をミックスしたハイブリッドな1本となっています。
→TAG HEUER(タグホイヤー)「モナコ(NEW)」Ref.CBL2111.BA0644 (sold out)
(2020年発表、約39×39mm、ステンレス、自動巻き、ガラス風防、シースルーバック)
時代を超えて個性的
今回は年代違いで、新品、ユーズド、アンティークのモナコ3種類のご紹介でした。
雰囲気のある70年代アンティーク。シンプルにまとまった1990年代の復刻。最新ムーブメントを搭載したフレッシュな現行ブレス仕様。年代によって変わっている部分もありますが、角型というモナコの基本形は変わらず引き継がれています。
いつの時代もアヴァンギャルドで個性的なモナコ。コンセプトが強い、筋の通った時計といった印象です。個人的には、モナコケースのスマートウォッチなんてのも見てみたい気がしています。