こんにちは、銀座エバンスの稲田です。
今回は、前回記事「GMTマスター徹底比較!①」に引き続き、新型やコンビ、金無垢モデルを含めたGMTマスターⅡに特化したお話をさせて頂きます。
Ref.116710LNとは
1955年から50年後の2005年、GMTマスターは大きく生まれ変わりました。まず、上写真の金無垢であるRef.116718LNからはじまり、2006年にはコンビモデルのRef.116713LN、そしてその翌年の2007年。待望のステンレスモデル、Ref.116710LNが誕生。
”LN”とは、フランス語でL=Lunette(小さな月)・N=Noir(黒)で黒ベゼルの色を表しています。 これらはいずれもロレックス社初の“セラミックベゼル”(通称:セラクロムベゼル)が装着されていました。セラミックは、耐傷性に極めて優れており紫外線にも強いため、前作のアルミニウムベゼルと違い、傷が付いたり色褪せたりすることはありません。ベゼルに刻まれた数字には、セラミックと似た性質を持つプラチナがコーティングされています。
2013年には黒×青のバイカラー、Ref.116710BLNR・通称“バットマン”ベゼルも加わりました。この”セラミック”という同じ素材の二つの色が混ざらないようにするためにロレックス社は何年も試行錯誤を繰り返し、革新的な技法すなわち何段階にも及ぶ着色工程で製作したベゼルは、いつまでも鮮やかに愛用者の腕を彩ります。
また、2005年には同社初の“パラクロムヒゲゼンマイ”搭載モデルとしてRef.116718LNが大変注目を浴び、他モデルにも徐々に採用され始めました。今まで何度か私の記事でお伝えして来たこのヒゲゼンマイは、温度変化や磁気に強く、従来の約10倍もの耐衝撃性を持っており、色は美しい青色をしています。青色は耐久性を更に高めるための酸化皮膜です。
キャリバーはCal.3186、前作Cal.3185からの大きな変更点はヒゲゼンマイだけですが、特筆すべきはリューズとモデルロゴと針色についてです。リューズはツインロックからトリプ(ル)ロックに変更となり、これは防水を保つためのパッキンがリューズに三つ、チューブに二つになり、より防水性を高めたリューズへと進化しました。
”GMT-MASTERⅡ”のモデルロゴ色はロレックスのコーポレートカラーである緑を採用、これまで赤だったGMT針も同じ緑色の針に統一、より洗練された高級感のある仕上がりとなりました。
新しく生まれ変わったGMTマスターII。誕生から15年経った今もデザインを変えることなく人気上位モデルとして君臨し続けています。このモデルから、同社の凄さを改めて意識した人々も多く、Ref.116710LN及びRef.116710BLNR、同じくRef.が11から始まるコンビと金無垢GMTは現在、惜しくも生産終了してしまいましたが、特にRef.116710LN、ステンレスのGMTマスターⅡは、歴史に残る名作であると言えるでしょう。
Ref.126710BLROとは
2018年に発表されたこのモデルは、デザインや大きさを変えず、新しいキャリバーとブレスレットを装備して誕生しました。”BLRO”とは、フランス語でBL=Bleu(青)・RO=Rouge(赤)で赤×青ベゼルの色を表しています。
キャリバーはCal.3185からCal.3285へ、ブレスレットは、三列のオイスターから五列のジュビリーへと、更に高級感を纏っての登場でした。ベゼル素材は変わらずセラミックで、オールブラックは惜しくも生産終了してしまいましたが、前述のバイカラー黒×青“バットマン”の他、初代GMTマスターを彷彿とさせるロレックス愛好家待望の赤×青“ペプシ”も追加となり、私自身初めてモデルを手にした時、心躍ったのをよく覚えています。GMTマスターといえばやはりペプシですので、このカラーリングが一番しっくり来る方も多いのではないでしょうか。
また、オールホワイトゴールド製のGMT、Ref.126719BLROに初めて隕石(メテオライト)の文字盤が採用されました。ロレックス社にとって最もプレステージの高いモデルにのみこの稀少なメテオライトを採用するのですが、なぜ稀少なのかをお話しますと、数十億キロメートルという我々の想像もできないほど遠い彼方から地球に落ちてくる隕石は、鉄・ニッケルなどの主成分が少しずつ結晶化したものですが、切り開いてみるとその殆どが真っ黒な上、放射能を浴びているため加工が極めて困難であり、美しい断面が見られるのはごく稀なのです。
地球にゆっくりと落下する際に少しずつ冷やされて人工では作り出せない大変美しい模様になって、卓越した技術を持つロレックス社の技術者の手によってプレステージモデルの文字盤として加工されます。自然のものなのでどれひとつとして同じ模様がない特別なモデル、それがメテオライト文字盤です。
昨年、2019年にはRef.126710BLNR黒×青バットマンが発表され、三列の黒×青オイスターブレスが生産終了となってしまい、私を含めて落胆していたロレックス愛好家達がこのモデルを見て歓喜したのをよく覚えています。キャリバーはBLROと同じで、3200系と呼ばれる新キャリバーの最大の特徴はパワーリザーブが70時間まで延びた所です。ブレスレットは堅牢なイメージのオイスターから、華麗なジュビリーへと変更され、クラスプもしっかりとした作りとなりました。「最新が最高である」ロレックス社の言葉通りの素晴らしい出来の腕時計、それが最新GMTマスターIIなのです。
Ref.126711CHNRとは
2018年に登場した、エバーローズゴールドのコンビモデル(ロレゾール)です。
”CHNR”とは、フランス語でCH=Chocolat(チョコレート)・NR=Noir(黒)で茶×黒ベゼルの色を表しています。
エバーローズゴールドとは、ローズゴールドにプラチナを加えることで、酸化による変色がし辛い、2005年に開発されたロレックス独自の特別なゴールドのことです。通常のローズゴールドは素材に銅が含まれているため、空気に触れ続けていると酸化により褐色へと変化が起こり、ピンク色が薄れてイエローゴールドに近い色味になって来ます。(銅の含有量によって黒っぽくなって最後には緑青色になるものもあります)
エバーローズゴールドは赤みが強過ぎず、主張し過ぎない優しい色合いで、日本人の肌色に合うゴールドなので、女性にも人気が高い素材です。デイトジャストだけじゃなく、エバーローズゴールドはデイトナにも採用されており、男性がホワイトゴールドのRef.116509、女性がエバーローズゴールドのRef.116505をペアで選ばれる方もいらっしゃるほどです。今回はこのエバーローズゴールドに同社初の茶色と黒のバイカラーベゼル、通称”ルートビア”という愛称のGMTマスターⅡ、Ref.126711CHNRを発表しました。(”カフェオレ”と呼ぶ方もいます)
もちろん、デイトナだけでなくこのCHNRも女性に人気で愛用されている方もいらっしゃるんですよ。特筆すべきは金無垢のRef.126715CHNRもそうですが、ブレスレットが三列(オイスター)のみの作りであるという所です。惜しくも生産終了してしまったステンレスモデル、Ref.116710LNにしかオイスターブレスはなかったので、CHNRはこれからももっと人気が高まることと思います。
2000年代初頭にロレックス社は独自の鋳造所を作り、独自の製法でゴールドを鋳造できるようになったことで、これからもしかしたら新たな素材が発表されるかもしれませんね。楽しみがまた増えました。
Ref.116710LN・Ref.126710BLRO・Ref.126711CHNR
3モデルそれぞれのディテール
下写真左のRef.116710LNですが、前作 Ref.16710からの変更点は、大きく見やすくなったインデックスと太くなった針、ベゼルの数字も太く大きくなり、より視認性が高まりました。艶消しのラグ、真ん中のみ艶のあるデイトナと同じ仕様のオイスターブレスも特徴のひとつです。
ラグ幅は上から約5~3.5ミリ、ラグ長さ約15ミリ、ベゼル幅約5ミリ、ブレスレット幅約20~15ミリ、ケース厚み約12ミリ、クラスプ厚み約2~1ミリという結果でした。
真ん中のRef.126710BLROですが、Ref.116710LNよりほんの少しベゼルの数字が細くなり、文字盤上の”GMT-MASTER”ロゴもほんの少し小さく控えめになりました。その他の仕様は以下の通りすべて同じでした。
ラグ幅は上から約5~3.5ミリ、ラグ長さ約15ミリ、ベゼル幅約5ミリ、ブレスレット幅約20~15ミリ、ケース厚み約12ミリ、クラスプ厚み約2~1ミリという結果でした。
一番右のRef.126711CHNRですが、Ref.116710LNと同じデイトナブレス仕様で、本体のディテールはRef.126710BLROと同じ、幅や厚みは今回比べた三モデルすべて同じ仕様でした。
ラグ幅は上から約5~3.5ミリ、ラグ長さ約15ミリ、ベゼル幅約5ミリ、ブレスレット幅約20~15ミリ、ケース厚み約12ミリ、クラスプ厚み約2~1ミリという結果でした。
写真だけ見ても感じますが、ブレスレットの仕様が違うと全く別のモデルに見えますよね。デイトジャストのように将来、三列・五列ブレスどちらにも交換ができるようになるといいですね。ベゼルのカラーリングを増やしたり、文字盤もいろんな色に変えることができたり。いろいろな想像が楽しめるモデル、それがGMT-MASTERⅡだと私は思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。二回に渡ってお話してきたGMTマスターの魅力、みなさん感じていただけたでしょうか。
発売当初は奇抜と言われて人気の低かったGMTは、今では高級感を纏った上級モデルの仲間入りをしています。五桁のモデルは少しずつ価値が上がって来ており、Ref.12から始まるモデルは出たばかりですし、ロレックス社の最新技術で拘り抜いて製作した自信作なので、これからも変わらず作り続けることと思います。このモデルを礎にした派生モデルの誕生が楽しみですね。
現在、どのモデルもエバンスに在庫がございます。気になられている方は是非、実際お手に取ってみてください。
みなさまのご来店、心よりお待ち申し上げております。