タグホイヤー カレラクロノグラフの評価は?キャリバー別に特徴を解説します
2020-07-11 11:00
スポーティな高級ブランドの代名詞ともいえるタグホイヤーですが、中でも高い人気を誇るシリーズがカレラであり、そのクロノグラフモデルと言えます。
一言でカレラクロノグラフといっても多くのバリエーションがあり、現在では搭載される機械(キャリバー)によって、シリーズ化されています。
今回は2000年以降のモデルを中心に、カレラクロノグラフをシリーズ毎にご紹介してまいります。
カレラの基本知識
腕時計の世界ではブランドの垣根を越えて、歴史に名を残す傑作が散見されます。
例えばロレックスであればエクスプローラー、オメガであればスピードマスター、パテックフィリップであればカラトラバ、カルティエであればサントスなど、そのような普遍的な魅力を持つモデルの一つがカレラと言えます。
カレラの初出は1963年、ジャック・ホイヤーの時代まで遡ります。
当時、スポーツ分野で躍進を続ける同社が、最も過酷な自動車公道レースである「カレラ・パンアメリカーナ」に着想を得て製品化させたモデルがカレラです。
公式サイトには下記のようにあります。
タグ・ホイヤー カレラ コレクションは、常にパフォーマンスを重視し、積極的に目標を実現する人のためのスポーツウォッチです。 危険なことで有名な「カレラ・パンアメリカーナ」自動車レースに敬意を表して制作されたこの時計は、プロフェッショナルドライバーのためにデザインされた最初のクロノグラフでした。
www.tagheuer.com
スポーツウォッチでありながらドレッシーな雰囲気を持ち合わせたカレラは、幅広い場面で活用できるオールマイティなモデルとして人気を博しています。
また、オリジナルモデルに見られた基本的な造形は、半世紀以上経った現在でも引き継がれ、カレラ伝統のスタイルを今に引き継いでいます。
また、カレラはコストパフォーマンス高い時計としても知られています。
メーカー自身、”手の届くラグジュアリー”を標榜するタグホイヤーは、その品質の高さに対して、値頃感を感じられる設定価格が魅力であると言えます。
これは2014年以降、モデルラインナップにおけるハイエンドカテゴリーを縮小し、売上のメインとなるモデルを、1500~4500スイスフラン(当時邦貨180,000円~540,000円)の価格帯に集中させる、というメーカーの方針が定められ、より顕著となりました。
カレラクロノグラフのバリエーション
それでは実際にカレラクロノグラフには、どの様な種類があるのでしょうか。
カレラを含め、タグホイヤー全般において搭載される機械(キャリバー)により、そのキャラクターを明確にし、デザインの方向性も定められいます。
次項からは、カレラクロノグラフをキャリバー毎にご紹介いたします。
※現行モデル、生産終了モデル共に掲載しています。価格は2020年7月時点の国内定価です。
キャリバー16:生産期間2004年~
キャリバー16は、2000年以降に発表されたカレラクロノグラフの中で、最も長く生産されているシリーズです。
初出は2004年、同年に発表されたCV2010は大きな反響を呼び、現在に続くカレラの人気を再燃させるに至りました。その後も、キャリバー16は数多くのバリエーションを生み出し、カレラクロノグラフにおけるエントリーモデルの役割を担い、初めて機械式時計を手にされる方から、往年のカレラファンまで幅広い層から支持を集めています。
また、デザインのバリエーションに関しては、タキメーターをベゼルに配したモデルが主流でしたが、後述するキャリバー1887の生産終了に伴い、クラシカルなデザインも多く追加されるようになりました。
キャリバー1887:生産期間2010年~2017年
キャリバー1887はタグホイヤー創立150周年にあたる、2010年に発表されたモデルです。
発表当時のキャリバー1887は、1963年に生み出された初代カレラを彷彿とさせる、クラシカルかつドレスウォッチよりのデザイン(左:CAR2014.FC6235)が採用されました。
2013年以降は、タキメータを搭載するスポーティなデザイン(CAR2111.BA0724)も追加されバリエーションを広げていきます。
自社開発となるキャリバー1887は、基本設計にセイコーインスツルの6S系を用いることで、従来のキャリバー16に対して様々な利点を生み出しました。
まず第一に機械自体が薄く、自動巻の巻き上げ効率も高く、クロノグラフにはコラムホイールが採用されています。そして、クロノグラフのクラッチには、キャリバー16と同じくスイングピニオンが採用されています。
創業者であるエドワード・ホイヤーが特許を取得した機構こそがスイングピニオンであり、創立150周年の節目に発表されるモデルとして、特許取得の年に因んだキャリバー名が名づけられました。
また、キャリバー1887もう一つの側面として、当時キャリバー16に採用されていたETAのエボーシュ、その供給問題を打開する一手として、置き換えを急ぎたかったのではないかと考えられます。
その為にも、自社キャリバーを開発するにあたり、セイコーインスツルの6S系の設計を用いるメリットは大きく、開発をゼロからスタートするよりも、期間として少なくとも2年もの時間が短縮出来たと言われています。
キャリバー1887について、現在では生産終了となり、創立150周年を記念したキャリバーとしては短命に終わりましたが、キャリバー16に採用されるエボーシュの供給元の確保がされた今、自社ムーブメントとしてのポジションは、後述するキャリバーホイヤー02へ引き継がれました。
キャリバー1887は、時代の架け橋の役割を担ったキャリバーであったとも言えます。
キャリバーホイヤー01:生産期間2015年~2019年
2015年に発表されたキャリバーホイヤー01は、タグホイヤーの先進的なイメージを一層強く打ち出し、ここ数年で最も注目を集めた人気のシリーズです。
搭載されるキャリバーホイヤー01に関しては、キャリバー1887をベースに作られ、構造的な変更は無いものの装飾性を付加し、スケルトン仕様の文字盤からもキャリバーが覗く両面スケルトン仕様とされています。
また、外装デザインも従来のカレラとは異なり、同グループ傘下のウブロが得意とするモジュール構造に倣っています。ケースを細かく分割する事で様々な素材の複合が可能となり、ファセットが強調された立体感な造形は新しいカレラの姿を、様々な素材の組み合わせが多彩なバリエーション展開を可能としました。
キャリバーホイヤー02:生産期間:2017年~
2017年に発表されたキャリバーホイヤー02は、キャリバーホイヤー01同様に、スケルトン仕様のダイヤルの他、一般的なダイヤルのラインナップも拡充され、キャリバー16の上位機種としての存在感を増してきています。
機械に関して、前作のキャリバーホイヤー01がキャリバー1887の改良型であったのに対して、キャリバーホイヤー02はその成り立ちが大きく異なります。
タグホイヤーの新たなフラグシップモデルとして、80時間ものロングパワーリザーブを備え、クロノグラフのクラッチには、作動が確実な垂直型が採用されるなど、中身も大きく進化しています。
キャリバーホイヤー02の開発に関しては、キャリバー1887発表の翌年、2011年にまで遡ります。2013年にはキャリバー1969の名称で登場しますが、その後、CH80に名称が変更され、間もなく開発の手は止まっていました。
それから数年、最も重要となる高い耐久性を求め、機械の厚みが見直され、巻き上げや針合わせ、カレンダー調整といった、リューズ操作における各種制御により精密さを求め、考えうる最上の設計に辿り着きました。
その後、キャリバーホイヤー02はトゥールビヨンを備えるキャリバーホイヤー02Tとして2016年に発表され、その翌年にキャリバーホイヤー02がリリースされました。
トゥールビヨンを搭載できる高いポテンシャルを持った機械をベースに、内容と価格のバランスを高い次元で融合させたキャリバーホイヤー02は、タグホイヤーの新時代を築くイメージリーダーとも言えます。
キャリバーホイヤー02T:生産期間:2016年~
先進的なケースデザインに、フライングトゥールビヨンとクロノグラフという2つの複雑機構を搭載し、100万円台からという驚異的な価格で世間を驚かせたモデルです。
トゥールビヨンに関して著名なブランドであれば、少なくとも500万円程の価格設定を行うところ、人気高級ブランドのタグホイヤーが投じたキャリバーホイヤー02Tは、時計業界において大きな話題をもたらすと共に、新しいポジションを作り上げた傑作とも言えます。
最後に
以上、タグホイヤー カレラクロノグラフをキャリバー毎にご紹介して参りました。それぞれに特徴がありますが、その根底には初代カレラの持つエレガントでスポーティな要素が散見され、時代を越えて支持される普遍性を感じて頂けるはずです。
今回の記事が、皆様の時計選びの一助になれば幸いです。